黒部峡谷鉄道の終点欅平より先、黒部ダム方面に抜ける「黒部ルート」の無料見学会が3年ぶりに開催されます。この無料見学はあと2年で打ち切りとなり、その後は「一般開放」という名の有料ツアーに移行します。
黒部ルートとは
黒部ルートは、欅平から黒部ダムまでをトロッコ電車などで結ぶ工事用輸送路です。「立山黒部アルペンルート」は東西に延びる道筋ですが、「黒部ルート」は宇奈月と黒部ダムを南北に結ぶ道筋です。
黒部峡谷鉄道の終着駅・欅平を起点として、黒部峡谷鉄道の工事用線(下部専用鉄道)、竪坑エレベーター、関西電力黒部専用鉄道(上部専用鉄道)、インクライン(ケーブルカー)、専用地下道バスを乗り継いで、黒部ダムまでつながっています。
あわせた全長は約18kmに及び、ほぼ全区間がトンネルです。黒部ダム建設時に整備され、現在も発電施設の保守作業などに使われています。関係者以外は原則として立ち入ることはできません。
3年ぶり無料見学会
黒部ルートを管理している関西電力では、「黒部ルート見学会」として、人数を限って一般人を受け入れてきました。その2022年度の応募要項が発表され、1日24人、計33回を実施することが明らかになりました。
見学会は1996年から毎年行われてきましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年度から2年間は中止していました。予定通り開催されれば3年ぶりとなります。
「一般開放・旅行商品化」
この見学会、実は2023年度で終了となります。というのも、2024年度から、黒部ルートは「一般開放・旅行商品化」されることが決まっているからです。
「一般開放」といっても「旅客化」とは異なります。黒部ルートのトンネル内を走るトロッコ列車が、鉄道事業として旅客運送をおこなうわけではありません。
黒部ルートのトンネルは狭すぎて、鉄道旅客事業として運営する基準を満たしておらず、現状の施設で旅客化はできないからです。
鉄道旅客事業を営むにはトンネルの拡幅が必要ですが、800億円の費用と16年の工期が必要と試算され、断念しています。
つまり「一般開放」されたところで鉄道事業ではないので、予約のない一般人が駅できっぷを買って乗車できるものにはなりません。観光客が途中駅で降りたり、登山客が途中駅から乗ったりもできません。
「一般開放」とは何か
では、黒部ルートの「一般開放」とは何かというと、交通費無料の見学会の体裁は維持したままで、ガイド料と保険料を徴収し、前後の黒部峡谷鉄道やアルペンルートのバスとセットにした「旅行商品」として販売する、ということです。それが「一般開放・旅行商品化」の意味です。
言葉を換えれば、現在の無料見学会が、旅行会社の主催の有料パッケージツアーになる、というだけの話です。旅行会社は、当然、他の交通機関や宿泊とセットで販売するでしょうから、参加のために旅行者が負担するコストは現状より高くなる可能性が高いです。
1日50人の「有料ツアー」
「旅行商品」が設定されるのは6~10月で、定員は8,000人。気象条件などが整った年に関しては最大10,000人としています。つまり、1日あたり50人~60人程度のツアーを、夏から秋にかけて年間150日くらい実施することになります。ツアーはJTBなどが取り扱う見通しです。
ということで、「一般開放」と聞いて欣喜雀躍した方もいるでしょうが、正直なところ、「有料ツアー化」と表現した方が的確、というのが現実です。
ツアーですので先着順で予約が可能となります。また、年間定員が過去の無料見学会の約2,000人から8,000人へ約4倍に増えますので、これまでよりは訪れやすくなりそうです。といっても、1日にバスが1~2台程度の人数に過ぎませんが。
狭き門に
関西電力が主催する無料見学会は、今年を含めてあと2年限りです。2022年度は密を避けるために定員を絞っており、年間792人にすぎません。コロナ前(2019年度)の2,280人に比べると3分の1程度の受入数にとどまります。
参加は抽選で決められます。例年の平均応募倍率は4倍程度ですが、2022年度は3年ぶり開催、定員は6割減、あと2年限りとあって、例年以上の狭き門になる可能性は高いでしょう。
押し迫るにつれ、倍率が高くなるのは世の常です。無料見学会のうちに参加したい方は、お早めにご応募を。(鎌倉淳)
無料見学会の案内はこちらから
→【公式】黒部ルート見学会のご案内(関西電力)