熊本空港へのアクセス鉄道の実現が遠のいています。熊本県が設置する検討委員会で、JR九州が消極的な姿勢を示しました。
2019年に基本合意
熊本空港アクセス鉄道は、JR豊肥線三里木駅~熊本空港(阿蘇くまもと空港)を結ぶ鉄道新線計画です。蒲島郁夫・熊本県知事が2018年12月の県議会本会議で鉄道建設を進めることを表明し、2019年2月にJR九州と基本合意。2019年度には、詳細な調査が行われました。
ただ、この調査結果では、採算性も費用対効果も、国交省が定める補助基準を満たせないことがわかり、蒲島知事は「いったんたちどまる」と表明。事業化の判断を先送りし、有識者による「空港アクセス検討委員会」を設置していました。
BRTも候補に加え
検討委員会は2020年12月にスタートし、2021年3月18日に第2回の会合が開催されました。今回の会合では、これまでの「鉄道」「モノレール」「市電」のほかに、「BRT」を加え、空港アクセス改善のための選択肢を増やして提示。そのうえで、新型コロナウイルスによる交通・観光への影響や、鉄道整備による県内への波及効果を議論しました。
まず、熊本空港の利用者について、九州内居住者の場合、自家用車によるアクセスが76.5%に達し、多くの人がマイカーで空港を利用している実態が報告されました。九州外居住者でも、自家用車が24.2%、レンタカーが30.7%など、クルマによるアクセスが多数であることも示されました。
鉄道が開通すれば、クルマからの利用者転移の余地が大きいともいえますが、同じ公共交通機関のバスからの転移は少ないことを示したともいえます。
新型コロナの影響は
新型コロナウイルス感染省の影響については、2020年度(4月~1月)の熊本空港の旅客数が、前年度比25.1%に落ち込んでいることが明かされました。
旅客数が落ち込んでいるのは鉄道も同じで、出席したJR九州の赤木由美熊本支社長は、鉄道の利用状況が半減していると明かしました。そのうえで、「大きなインフラは大きなリスクがあるというのを今痛感している。需要想定を検証して、インフラの投資は行っていくべきではないか」と指摘。新型コロナによる需要の再検証のうえ判断すべきであるという、やや消極的な姿勢を示しました。
鉄道整備の効果については、数値化できる便益や経済波及効果のほか、新たな観光回遊ルートの形成・観光誘客の推進や、企業立地の価値向上、空港周辺地域の活性化ができるなどという資料も示されました。
別の委員からは、「作らなかった場合のリスクもある」という指摘もあり、長期的な目で考えてみることが重要との意見も出されています。
次回の第3回会合は6月に予定されていて、新型コロナの影響を踏まえた需要予測の調査結果や、経済波及効果の検討結果が公表される予定です。ただ、現状の調査内容や議論を見ると、少なくとも新型コロナが収束し後にも需要が大きく伸びるという確証が得られない限り、実現への道は遠いという印象です。(鎌倉淳)