熊本空港アクセス鉄道が実現に向け動き出しそうです。JR豊肥線三里木駅から分岐し熊本空港(阿蘇くまもと空港)に至るルートで検討を進めることを、熊本県知事が表明しました。
熊本県知事が実現に意欲
熊本県の蒲島郁夫知事は、2018年12月5日の熊本県議会本会議の一般質問で、熊本空港アクセス鉄道に関して答弁しました。
知事は鉄道延伸、モノレール新設、熊本市電延伸の3案のうち、鉄道延伸が「定時性、速達性、および大量輸送性に優れ、事業費を相対的に低く抑えることができ、あわせて採算が見込める」とし、「最も効果的かつより早期に実現できる可能性が高い」と述べました。熊本空港へのアクセス鉄道建設へ強い意欲を見せたといえます。
おおざっぱなルートはJR豊肥線三里木駅から分岐し、熊本県民総合運動公園を経由し、熊本空港に至るものです。運動公園付近に途中駅を新設します。
JR九州にも負担求める
事業の枠組みは上下分離方式を想定。熊本県を中心とした第三セクターを設立して鉄道施設を整備し、運行をJR九州に委託します。事業費は300億円~400億円を見込んでおり、国の補助金と県費でまかないますが、「既存路線の増収が見込まれる」としてJR九州にも一定の負担を求める方針です。
空港と熊本駅の間の所要時間は、バスで約60分かかります。鉄道建設が実現すれば、熊本空港と熊本駅が40分程度で結ばれ、20分程度の短縮効果があると見込まれています。
2004年に検討したが
熊本空港のアクセス鉄道については、2004年度に検討されたことがあります。総事業費を286億円と試算し、採算を取るには1日5,000人の利用が必要と見積もられました。
しかし、当時は1日2,500人程度の利用者が精一杯で、鉄道事業の採算性の確保は難しいとの判断に至りました。2007年度には、鉄道建設計画を凍結。肥後大津駅から熊本空港へシャトルバスを運行して連絡する施策に軸足を移しています。
モノレール、市電延伸案も
それから10年あまり。インバウンド需要の盛り上がりやLCCの隆盛を経て、熊本空港の利用者数は増加しています。2020年には空港民営化が予定されており、2022年度末には新ターミナルビルも完成します。
こうした状況の変化を受け、熊本県は2018年度にアクセス手段の改善案を再検討。鉄道延伸(事業費300億~400億円)、モノレール新設(2,000億~3,000億円)、熊本市電延伸(200億~300億円)の3案で事業費や所要時間、輸送量などを比較検討。今回、このうち鉄道延伸案に絞って、JR九州との協議を開始することを明らかにしたものです。
JR九州と協議を開始するという段階なので、実現可能性についてはなんともいえません。仮に実現するとしたら、日中に毎時2~3本運転されている熊本~肥後大津間の豊肥線列車を空港方面に振り分けることになりますが、肥後大津方面とのダイヤの調整も課題になりそうです。