神戸電鉄が2022年3月12日にダイヤ改定を実施します。注目を集めたのが粟生線の急行廃止。粟生線の現状はどうなっているのでしょうか。
急行を準急に格下げ
神戸電鉄は、2022年3月12日にダイヤ改定を実施します。アフターコロナ社会を見据え、運転本数・運転区間・列車種別を見直すというのが、会社側の説明です。
なかでも大きなトピックスは、粟生線の急行廃止でしょう。朝ラッシュ時に運転されている上りの粟生発2本と小野発1本の急行を、準急に種別変更します。現ダイヤで運転されている粟生線急行はこの3本のみなので、粟生線の急行は3月ダイヤ改正で姿を消すことになります。
利用者減少を反映
粟生線の急行停車駅は、新開地、湊川、鈴蘭台、鈴蘭台西口、西鈴蘭台、木幡以西の各駅です。準急に比べ、長田、藍那、木津を通過するだけなので、所要時間の違いは3~4分にすぎません。
発表によれば、急行格下げにともなう準急の減便は1本のみ。となると、利用者への影響はそれほど大きくないように感じられます。それでも、最近の利用者減少を反映した改定であることは確かでしょう。
神戸電鉄の3月ダイヤ改定では、三田線も含め平日ダイヤで合計32本を減便し、最終電車の時刻も20~30分繰り上げます。これらが「アフターコロナを見据えた」措置のようです。
目標の7割
神戸電鉄粟生線は2010年頃に廃止も視野に入れた協議が行われた経緯があり、地元自治体は2017年に「地域公共交通網形成計画」を策定、活性化に取り組んでいます。計画では、粟生線の利用者(実利用者数)の目標を年間850万人に据えています。
しかし、実際の利用者は新型コロナ前の2018年度で794万人。新型コロナの影響でさらに激減し、2020年度は595万人にとどまっています。
粟生線の利用者は1992年度の1846万人がピークだったので、直近はピーク時の3分の1程度にまで落ち込んだことになります。目標の850万人に対しても7割にすぎず、深刻な状況となっています。
急行通過駅の利用者は?
2020年度の粟生線の乗降人員を見てみると、以下のようになります。
駅名 | 年間 乗降人員 |
1日 あたり |
割合 |
---|---|---|---|
鈴蘭台西口 | 659,721 | 1,807 | 8.9% |
西鈴蘭台 | 1,698,616 | 4,654 | 22.9% |
藍那 | 36,031 | 99 | 0.5% |
木津 | 338,652 | 928 | 4.6% |
木幡 | 177,399 | 486 | 2.4% |
栄 | 357,366 | 979 | 4.8% |
押部谷 | 258,711 | 709 | 3.5% |
緑が丘 | 683,603 | 1,873 | 9.2% |
広野ゴルフ場前 | 172,006 | 471 | 2.3% |
志染 | 837,187 | 2,294 | 11.3% |
恵比須 | 259,632 | 711 | 3.5% |
三木上の丸 | 98,196 | 269 | 1.3% |
三木 | 378,174 | 1,036 | 5.1% |
大村 | 245,111 | 672 | 3.3% |
樫山 | 135,008 | 370 | 1.8% |
市場 | 43,154 | 118 | 0.6% |
小野 | 663,194 | 1,817 | 9.0% |
葉多 | 31,297 | 86 | 0.4% |
粟生 | 334,476 | 916 | 4.5% |
計 | 7,407,534 | 20,295 |
出典:神戸電鉄粟生線活性化協議会資料
鈴蘭台西口~志染間に限って1日あたりの乗降人員を見てみると、藍那がふた桁と非常に少なく、次いで広野ゴルフ場前、木幡が500人以下。急行通過駅の木津は928人で、志染、緑が岡、栄に次ぐ乗降人員です。
こうしたデータを見ると、現在の急行停車駅が適切かどうかも微妙です。優等列車の停車駅は乗降人員だけで決まらないものの、現状の急行停車駅が利用実態に即していない側面も見受けられ、今回の急行廃止はやむを得ないようにも思えます。
計画を1年延長
神戸電鉄粟生線の「地域公共交通網形成計画」の期限は2021年度とされてきました。その後、次期計画となる「地域公共交通計画」を策定する予定でしたが、新型コロナの影響で見通しが立たないため、現計画を1年延長することが決まっています。
2022年4月~6月にかけて現計画の評価を行った後、新計画の骨子を検討します。9月までに素案を作り、12月までに最終案をとりまとめる予定です。粟生線の利用者減少は深刻ですが、いまでも多くの利用者がいるのも確かで、より効果的な施策を期待したいところです。(鎌倉淳)