特急「やくも」新型車両273系、わかっていること全詳細。2024年春デビュー!

381系は引退へ

伯備線特急「やくも」に、新型車両273系が登場します。これまでと同じ「振り子式」を継承しますが、「車上型の制御付自然振り子方式」を国内で初導入します。2024年春の運行開始予定です。

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381系を更新

「やくも」は、岡山~出雲市間を結ぶ特急列車です。1982年の伯備線電化とともに導入された381系車両をいまも使用していますが、近年は老朽化が目立っていて、新型車両への更新が検討されてきました。

これについて、JR西日本は2022年2月16日に、「やくも」の新型車両として273系特急形直流電車を導入すると発表しました。2024年春以降に営業運転を開始します。

やくも273系
画像:JR西日本プレスリリース

車上型とは

現行381系は「自然振り子式」という車両構造を採用しています。カーブを通過する際に遠心力を利用して車体を傾け、高速走行をする仕組みです。ただ、揺れが大きいため乗り物酔いを誘発しやすく、乗り心地には難がありました。

そこで、新たに導入する273系では、「車上型の制御付自然振り子方式」を採用します。

制御付自然振り子式とは、路線の曲線データを車上の指令制御装置にあらかじめ入力しておき、列車の走行地点に応じて車体を傾けるものです。

これまでの制御付自然振り子式車両は、列車の位置情報を得るためにATSの地上子を使用してきました。

これに対し、273系は、車上の曲線データと走行地点のデータを連続して照合し、適切なタイミングで車体を傾斜させる方式を採用しました。これが「車上型の制御付自然振り子方式」で、JR西日本と鉄道総合技術研究所、川崎車両が共同開発したものです。国内鉄道では、273系が初めて導入します。

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「空気ばね式」は採用せず

制御付自然振り子式は、自然振り子式に比べて乗り心地が向上しますが、コストが高いという問題点があります。「車上型」の詳細は明らかではありませんが、ATS地上子を使わないなどの方法でコスト削減を実現するとみられます。

ただ、より低コストの「空気ばね車体傾斜方式」は採用しませんでした。中央線特急で使用されているE353系など近年のJR特急車両で増えている方式ですが、伯備線の線形では対応できないと判断したようです。

最高速度はこれまでと同じ120km/hです。新型振り子により所要時間が短縮されるかは不明ですが、振り子式を継承したことで、少なくともこれまでと同程度の所要時間は維持できそうです。

44両を導入

そのほか273系の改善点としては、座り心地を改善した座席を採用し、381系で970mmだったシートピッチを1040mmに拡大します。全席にコンセントを装備し、車内Wi-Fiも完備。近年のバリアフリー基準にあわせ車椅子スペースも拡大し、多目的室や大型荷物スペースも設置します。

最近の標準装備となりつつある空気清浄機を搭載し、抗菌・抗ウイルス加工もおこないます。防犯カメラも設置して、車内セキュリティを向上します。

旅客から目に見えない部分としては、車体の衝突対策や機器の二重系化といった安全性向上も施します。エネルギー変換効率に優れたVVVF制御装置やLED照明などによる省エネ仕様も備えます。

車体は近畿車両が製造し、車両デザインは未定です。4両11編成の計44両を導入し、地上設備も含めた投資額は約160億円を見込みます。4両編成はいまの基本編成と変わりませんが、総車両数は現状の66両に比べ3分の2に減ることになります。

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381系リバイバル編成も

273系の導入により381系は引退します。381系はJR各社で定期運用されている最後の国鉄型特急電車ですので、381系の引退により、国鉄型特急電車が定期運用から姿を消すことになります。

引退を前に、「やくも」運転開始50周年を記念して、381系の1編成(6両)を国鉄カラーに変更してリバイバル編成とします。

やくもリバイバル編成
画像:JR西日本プレスリリース

381系リバイバル編成は、3月19日から8・9・24・25 号で毎日運転する予定。岡山発11時05分、19時05分、出雲市発07時22分、15時30分です。

最後の国鉄型特急電車が国鉄色に蘇り走るわけで、こちらも注目を集めそうです。(鎌倉淳)

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