京浜急行電鉄が空港線の運賃を大幅値下げします。天空橋~羽田空港国内線ターミナル間と、他の区間をまたがって乗車する場合に設定していた加算運賃を、120円引き下げると発表。2019年10月1日に実施します。羽田空港への鉄道運賃はどう変わるのでしょうか。
加算運賃170円→50円
京急空港線は1998年11月に羽田空港駅(現羽田空港国内線ターミナル駅)まで延伸しました。空港線の延伸工事や輸送力増強工事に要した設備投資額等を回収するため、天空橋~羽田空港国内線ターミナル間と他の区間をまたがって利用する場合、開業当初から、基本運賃に加算運賃170円を上乗せしてきました。
京急によると、空港線の利用者数は好調に推移し、2017年度末現在で投資額の75%以上を回収しています。そのため、このほど、加算額を引き下げることを発表したものです。
加算運賃は、2019年10月1日より50円となります。したがって、運賃値下げ額は、原則として一律120円です。ただし、特定運賃制度が廃止になる京急蒲田~羽田空港国内線ターミナル間に関しては、差し引き90~100円の値下げとなります。
新しい運賃は?
京急線主要駅から羽田空港国内線ターミナル駅までのIC運賃は、以下のようになります。(左:現行運賃→右:新運賃)
・泉岳寺 448円→328円
・品川 407円→287円
・京急蒲田 335円→245円
・京急川崎 407円→287円
・横浜 478円→358円
・上大岡 530円→410円
・金沢文庫 653円→533円
・横須賀中央 808円→688円
消費増税にあわせて運賃改定
運賃値下げが実施される予定の2019年10月1日は、消費税増税が予定されています。そのため、実際には上記運賃に対し、消費税分として2%の値上げが行われます。
増税が行われた場合、実際の新運賃はこれより少し高くなります。
京急としては、消費税値上げによる運賃改定のタイミングに、加算運賃の廃止による運賃値下げをかぶせてきたわけです。
都内主要駅からの運賃は?
次に、都内主要駅から羽田空港国内線ターミナル駅までの新運賃を見てみましょう。都営浅草線直通もしくは、JR山手線乗換の運賃です。
・都営新橋 562円→442円
・都営日本橋 604円→484円
・JR浜松町 561円→441円
・JR東京 572円→452円
・JR渋谷 572円→452円
・JR新宿 601円→481円
・JR池袋 666円→546円
このように、山手線の南側エリアなら、400円台で羽田空港に到達できることになります。
興味深いのが、浜松町発着の運賃です。JR・京急の乗り継ぎで441円になりますが、東京モノレールの浜松町~羽田空港第1ビル間は483円。つまり、京急は、浜松町発着でも東京モノレールに対し運賃面で有利になるわけです。
JR羽田空港アクセス線との比較
京急が本当に意識しているのは東京モノレールではなく、JR東日本が着工を決めた羽田空港アクセス線でしょう。早ければ2029年度にも東山手ルートが開業しそうです。
JR羽田空港アクセス線の運賃はもちろん未発表ですが、田町~羽田空港間を12.4kmと仮定して計算すると、浜松町~羽田空港間は13.9km。現在の運賃表にあてはめると、わずか216円です。
京急は加算運賃が50円残っていますので、その分の値下げを行った場合、浜松町~羽田空港間は391円になります。JR東日本が170円程度の加算運賃を設定して、ほぼ同水準です。JRの加算運賃が少なければ、京急は東京、新橋方面で運賃面で劣位になります。
JR羽田空港アクセス線は、将来的には西山手ルートも建設予定で、渋谷、新宿からも乗り換えなしで羽田空港に行けるようになります。これが実現した場合、京急は都心のJR各駅から、運賃面でも利便性でも不利になりそうです。
今回の値下げで、京急はしばらくの間、羽田空港アクセスで優位に立てそうです。しかし、将来的には苦戦するかもしれません。(鎌倉淳)