横浜市が計画する新交通システム「上瀬谷ライン」に黄信号が灯りそうです。相鉄が、米軍施設跡地で検討していた大型テーマパーク開発計画を断念したためです。
上瀬谷通信施設跡地
「上瀬谷ライン」(仮称)は、横浜市が旧米軍上瀬谷通信施設跡地へのアクセスのために計画している中量軌道輸送システムです。施設跡地では2027年に国際園芸博覧会(花博)の開催が予定されていて、相鉄などによる大型テーマパークの誘致も構想されていました。上瀬谷ラインは、これらの利用客を運ぶ中軸的な輸送機関として計画されていて、すでに環境アセスメントの手続きに入っています。
これまでに明らかになった計画によりますと、上瀬谷ラインは新交通システム(AGT)を採用し、総延長は2.6km。全線複線で、相鉄に接続する瀬谷駅(仮称)と、上瀬谷小学校東側交差点付近に上瀬谷駅(仮称)を設けます。
瀬谷駅は地下式で2面1線、上瀬谷駅は地表式で2面3線を計画。駅のホーム長は約72mもあり、約8.5mの車両が8両編成停車できます。日本の新交通システムは4~6両程度が一般的で、8両編成が走れば、新交通システムとして日本最長となります。
前提が覆り
新交通システムは、大型集客施設が沿線にできることを前提として計画されています。構想されていた大型テーマパークは、年間1500万人規模の来場者を目論んでいて、新交通システムはその輸送に対応できる容量を備えているわけです。
実際、横浜市は2020年3月にまとめた土地利用基本計画で、「テーマパークを核とした複合的な集客施設」による拠点形成を明記。「旧上瀬谷通信施設における大規模な土地利用転換に伴い、発生が想定される交通需要に対応」するために、新交通システムを導入すると記しています。
ところが、その前提が覆るようです。各社報道によりますと、相鉄は検討していた大型テーマパークの開発を断念。跡地の開発事業は、パートナーの大手不動産会社が引き継ぐ方向ですが、当初構想されていた、ディズニーランドやユニバーサルスタジオに匹敵するような大型テーマパークは実現できない様子です。
運行事業者も未定
花博の開催は決まっているものの、期間限定のイベントです。その後の跡地の利用方法が固まらないと、新交通システムの収支を予測することはできません。となると事業計画を立てることは困難で、新交通システムの整備は行き詰まります。
実際、朝日新聞2021年4月21日付によりますと、4月時点で運行事業者すら未決定で、軌道法に基づく国交省への特許申請も行われていないそうです。
6年後に迫った花博までの開業はもとより、新交通システムの建設自体に黄信号が灯ったといわざるをえません。(鎌倉淳)