JR九州が、普通回数券の全面廃止に踏み切ります。同時に、ICカードSUGOCAで乗車した際にポイントがたまるサービスも終了。日常利用のきっぷの割引サービスを縮小します。
6月30日で廃止
JRの普通回数券は、10枚分の値段で11枚つづりになっている乗車券で、国鉄時代から続く割引きっぷです。旅客営業規則では「片道200キロメートル以内の区間の各駅相互間を乗車する場合は、当該区間に有効な11券片の普通回数乗車券を発売する」としており、200km以内なら区間を問わず購入できる、JRの基礎的な割引乗車券であることがわかります。
JR九州は、この普通回数券を2021年6月30日を以て発売終了すると発表しました(下関発着は9月30日限り)。
普通回数券については、JR西日本も、ICOCAエリアにおいて9月30日を以て一部を除き廃止します。しかし、普通回数券の全面廃止はJRでは九州が初めてです。
また、JR九州は、同時にICカード「SUGOCA」で鉄道を利用した場合にポイントが貯まるサービスも終了します。運賃の1%相当が貯まる「乗車ポイントサービス」と、特急料金の5%分が貯まる特急券乗車ポイントの両方を6月30日限りで打ち切ります。唐津線(西唐津・唐津間)・筑肥線と福岡市地下鉄線の相互間を利用した場合に10ポイントが貯まるサービスのみ継続します。
廃止の理由は、新型コロナウイルス感染症の影響による利用者の減少や、経営環境の変化によるものです。
ポイント還元なし
交通系ICカードの普及にともない、鉄道各社は近年、紙のきっぷの販売を縮小する施策を打ち出してきました。回数券の廃止は、そうした流れに沿ったものでもあり、すでに京阪電鉄では廃止されています。
ただ、これまでの他社の回数券廃止は、ICカード利用によるポイント還元などといった救済策を用意していました。ところが、JR九州の場合は、ポイントサービスも同時廃止してしまうという荒技を繰り出したのが特筆すべき点といえます。それだけ、最近の利用者減が深刻なのでしょう。
定価販売へ
JR九州では、特急券の回数券にあたる「2枚きっぷ」も、3月31日を以て多くの区間で廃止しています。特急に関しては、高速バスへの対抗や需要喚起の意味もあるからか、ネット販売の割引きっぷは残しています。それに対し、近郊電車はライバルも少なく、割引による需要喚起の意味も小さいからか、救済なき廃止に踏み切ったのでしょう。
JR九州は、これまでのところ、運賃値上げの意向を公表していません。まずは認可運賃の範囲内の定価販売で、収入増を図ろうということでしょうか。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、鉄道会社の経営を直撃しています。回数券縮小・廃止の動きは、他社にも広がる可能性が高そうです。(鎌倉淳)