JR各社が2021年お盆の特急列車の利用状況を発表しました。新型コロナウイルス感染症の影響で、各列車とも利用者数が伸び悩むなか、東海道線特急の利用者が前年比で大きく増加しています。
JR在来線特急の利用者数の詳細をランキング形式で見ていきましょう。一部快速列車も掲載しました。
2021年お盆の利用状況
JR各社は列車利用状況の統計を「年末年始」「ゴールデンウィーク」「お盆」の3期のみ発表します。当サイトでは、JR各社が発表した「お盆の利用状況」の情報をまとめて、「お盆の在来線特急利用者数」をランキングにまとめてみました。
2021年8月6日~17日の12日間の統計です。新型コロナウイルス感染症の影響をみるため、対前年比と対前々年比を掲載しました。
在来線特急利用者数ランキング2021年お盆版
順位 | 列車名 | 計測区間 | 利用者数 (万人) |
対前年比 | 対前々年比 |
---|---|---|---|---|---|
1 | あずさ、かいじ、富士回遊 | 八王子~相模原 | 13.2 | 113% | 32% |
2 | ひたち、ときわ | 我孫子~土浦 | 11.0 | 121% | 30% |
3 | ひたち、ときわ | 土浦~水戸 | 9.6 | 125% | 28% |
4 | マリンライナー | 児島~宇多津 | 8.6 | 110% | 43% |
5 | かもめ、みどり等 | 鳥栖~肥前山口 | 7.1 | 89% | 24% |
6 | サンダーバード | 京都~敦賀 | 7.0 | 99% | 25% |
7 | ソニック | 小倉~行橋 | 6.7 | 111% | 35% |
8 | 踊り子・サフィール踊り子、湘南 | 横浜~熱海 | 5.7 | 139% | 57% |
9 | あずさ | 甲府~上諏訪 | 5.6 | 99% | 27% |
10 | ひたち | 原ノ町~仙台 | 5.5 | 103% | – |
11 | カムイ、ライラック、オホーツク、宗谷 | 札幌~岩見沢 | 4.5 | 89% | 42% |
12 | ひたち | 水戸~高萩 | 4.5 | 126% | 31% |
13 | はまかぜ | 姫路~寺前 | 3.5 | 88% | 37% |
14 | しおかぜ、いしづち | 多度津~伊予三島 | 3.2 | 119% | 36% |
15 | 北斗、すずらん | 東室蘭~苫小牧 | 3.1 | 93% | 38% |
16 | しらさぎ | 米原~敦賀 | 3.1 | 141% | 30% |
17 | くろしお | 和歌山~箕島 | 2.9 | 91% | 36% |
18 | わかしお | 東京~蘇我 | 2.7 | 92% | 40% |
19 | ひたち | 高萩~いわき | 2.6 | 122% | 37% |
20 | しなの | 名古屋~多治見 | 2.6 | 108% | 24% |
21 | しおかぜ | 児島~宇多津 | 2.6 | 127% | 29% |
22 | きのさき、まいづる等 | 二条~亀岡 | 2.0 | 81% | 28% |
23 | おおぞら、とかち | 南千歳~トマム | 1.9 | 94% | 51% |
24 | しなの | 松本~長野 | 1.8 | 99% | 31% |
25 | しおさい | 東京~千葉 | 1.6 | 95% | 39% |
26 | 南風 | 児島~宇多津 | 1.6 | 109% | 33% |
27 | 南風、しまんと | 多度津~阿波池田 | 1.5 | 95% | 32% |
28 | 宇和海 | 松山~宇和島 | 1.4 | 86% | 42% |
29 | いなほ | 新潟~村上 | 1.4 | 146% | 26% |
30 | こうのとり | 大阪~三田 | 1.3 | 73% | 34% |
31 | うずしお | 高松~徳島 | 1.3 | 107% | 46% |
32 | やくも | 岡山~新見 | 1.2 | 87% | 19% |
33 | ひだ | 美濃太田~下呂 | 1.0 | 131% | 20% |
34 | しらさぎ | 名古屋~大垣 | 0.9 | 128% | 27% |
35 | スーパーはくと | 姫路~上郡 | 0.7 | 100% | 21% |
36 | ひたち | いわき~原ノ町 | 0.6 | 105% | – |
37 | 成田エクスプレス | 千葉~成田空港 | 0.6 | 128% | 3% |
38 | スーパーはくと | 智頭~鳥取 | 0.6 | 101% | 19% |
39 | しまんと、あしずり | 高知~窪川 | 0.6 | 83% | 42% |
40 | ふじかわ | 富士~富士宮 | 0.5 | 108% | 39% |
41 | しらゆき | 直江津~新潟 | 0.5 | 114% | 40% |
42 | さざなみ | 東京~蘇我 | 0.4 | 69% | 33% |
43 | サンライズ出雲・瀬戸 | 静岡~浜松 | 0.4 | 80% | 67% |
44 | 南紀 | 松阪~紀伊長島 | 0.4 | 148% | 30% |
45 | つがる | 弘前~青森 | 0.3 | 122% | 32% |
46 | リゾートしらかみ | 秋田~青森 | 0.3 | 119% | 42% |
47 | ふじさん | 御殿場~山北 | 0.3 | 78% | 28% |
48 | スーパーいなば | 上郡~岡山 | 0.3 | 102% | 25% |
49 | いなほ | 酒田~秋田 | 0.2 | 130% | 34% |
50 | はるか | 日根野~関西空港 | 0.2 | 39% | 2% |
51 | スーパーいなば | 智頭~鳥取 | 0.2 | 103% | 25% |
52 | 伊那路 | 豊川~本長篠 | 0.1 | – | 26% |
53 | サンライズ出雲・瀬戸 | 岡山~新見 | 0.1 | 75% | 56% |
54 | スーパーおき | 新山口~益田 | 0.1 | 64% | 19% |
55 | うずしお | 児島~宇多津 | 0.1 | 113% | 32% |
56 | はまかぜ | 岩美~鳥取 | 0.004 | 107% | 75% |
上記のランキングは、JR各社から広報発表された数字をまとめたものです。JR各社によって、区間選定の基準などがばらばらであることをご承知おきください。
ランキング下位では、百人単位の四捨五入が順位に影響している場合も多くなっています。四捨五入の単位が発表元の各社・支社により異なることもあり、1万人以下のランキングの細かい順位の違いにあまり意味がない点も、ご留意ください。
なお、「伊那路」の前年比がありませんが、2020年は7月豪雨で運転を取りやめていたためです。また、「ひたち」のいわき以北は、2020年3月まで長期運休をしていたため、前々年比がありません。
「あずさ、かいじ、富士回遊」が盤石
2021年のお盆は、中日の15日が日曜日になったことで、日並びとしては長い連休を取りにくい人もいたようです。そのうえ、新型コロナウイルス感染症が急拡大していることもあり、帰省客が少なかったようで、各列車とも利用者数は伸び悩みました。
そのなかでトップに立ったのは、中央東線特急「あずさ、かいじ、富士回遊」です。例年、夏に利用者の多い列車で、今年も変わりませんでした。次いで常磐線特急「ひたち、ときわ」が2位に付けましたが、この順位も例年どおりです。
3位も「ひたち、ときわ」で、つづく4位に瀬戸大橋線の快速「マリンライナー」が食い込みました。
例年なら長崎・佐世保線特急「かもめ、みどり等」が「マリンライナー」より上位に来るのですが、今年はお盆時期に豪雨が西九州を襲った影響で、長崎・佐世保線特急は不振。「マリンライナー」の後塵を拝しています。
東日本は堅調
8位には東海道線特急「踊り子、湘南」が入りました。対前年比139%と大幅な上昇です。東海道線特急は、「踊り子、サフィール踊り子」の伊豆特急のほかに、2021年3月ダイヤ改正から通勤特急の「湘南」が加わった効果で、利用者数を伸ばしています。
そのほか、対前年比が高かったのは、羽越線特急「いなほ」の146%、北陸線特急「しらさぎ」の141%、紀勢線特急「南紀」の146%、高山線特急「ひだ」の131%あたりでしょうか。
全体に、東日本から東海エリアにかけては比較的堅調な利用状況だったと言えます。
西日本は不振
一方で、天候が悪かった西日本は不振で、前年割れの列車も多くなりました。豪雨に見舞われた長崎・佐世保線特急「かもめ、みどり」が対前年比89%でしたが、中国地方の特急も伸び悩み、播但線特急「はまかぜ」が88%、伯備線特急「やくも」が87%、「スーパーおき」は64%にとどまりました。
近畿圏の特急も、山陰線特急「きのさき、まいづる」が81%、福知山線特急「こうのとり」73%、紀勢線特急「くろしお」91%と、前年割れの列車が多くみられました。
新型コロナ流行後、全車個室のメリットを活かして堅調だった寝台特急「サンライズ出雲・瀬戸」も対前年比80%にとどまり、西日本への旅行の動きが鈍かったことを示しています。それでも、対前々年比でいえば、67%とダントツの数字で、個室列車には根強い人気があるようです。
総じて2021年のお盆は、新型コロナの感染状況のほか、天候による地域差も大きく、それが利用状況の差に反映されたといえそうです。
空港特急の苦境続く
大苦戦が続く空港特急は、「成田エクスプレス」が対前年比128%と伸びましたが、対前々年比では3%にとどまります。「はるか」は、対前年比39%、対前々年比で2%となっています。
どちらの列車も壊滅的な状況が続いていて、「オリ・パラ」効果もみられません。両列車とも、国際線の空港利用客が本格的に回復しないと、不振を抜け出すのは難しそうです。(鎌倉淳)