常磐線全線復旧で「ひたち」が首位に。JR特急利用者数ランキング・2020年ゴールデンウィーク版

成田エクスプレスは平均6.8人

JR各社が2020年ゴールデンウィークの特急列車の利用状況を発表しました。新型コロナウイルス感染症の影響で、各列車とも未曾有の大激減です。そのなかで、常磐線特急「ひたち、ときわ」が首位に立ちました。

JR在来線特急の利用者数の詳細をランキング形式で見ていきましょう。一部快速列車も掲載しました。

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JR在来線特急利用者数ランキング2020年大型連休版

1 ひたち、ときわ(我孫子~土浦)2.82万人(7%)
2 マリンライナー*(児島~宇多津)2.75万人(12%)
3 あずさ、かいじ、富士回遊(八王子~相模湖)2.6万人(6%)
4 ひたち、ときわ(土浦~水戸)2.27万人(6%)
5 かもめ、みどり等(鳥栖~肥前山口)1.5万人(5%)
6 サンダーバード(京都~敦賀)1.3万人(4%)
7 カムイ、ライラック、オホーツク、宗谷(札幌~岩見沢)1.15万人(11%)
8 ソニック等(小倉~行橋)1.1万人(5%)
9 ひたち、ときわ(水戸~高萩)1.0万人(6%)

10 あずさ(甲府~上諏訪)0.9万人(4%)
11 わかしお(東京~蘇我?)0.88万人(13%)
12 しおかぜ、いしづち(多度津~伊予三島)0.78万人(8%)
13 北斗、すずらん(東室蘭~苫小牧)0.64万人(6%)
14 しらさぎ(米原~敦賀)0.6万人(5%)
15 ひたち、ときわ(高萩~いわき)0.57万人(8%)
16 しおさい(東京~千葉?)0.57万人(14%)
17 宇和海(松山~宇和島)0.56万人(15%)
18 しおかぜ(児島~宇多津)0.55万人(6%)
19 しおかぜ等(岡山~児島)0.52万人(5%)
19 うずしお(高松~徳島)0.52万人(17%)

21 しなの(名古屋~多治見)0.5万人(5%)
21 しなの(松本~長野)0.5万人(8%)
21 くろしお(和歌山~簑島)**0.5万人(5%)
21 きのさき、まいづる等(二条~亀岡)**0.5万人(7%)
25 南風、しまんと(多度津~阿波池田)0.42万人(8%)
25 南風(岡山~児島)0.42万人(8%)
27 南風(児島~宇多津)0.41万人(8%)
28 やくも(岡山~新見)0.4万人(6%)
28 こうのとり(大阪~三田)**0.4万人(10%)
30 おおぞら、とかち(南千歳~トマム)0.36万人(9%)

31 成田エクスプレス(東京~千葉)0.33万人(1%)
32 いなほ(新潟~村上)0.3万人(5%)
32 踊り子、サフィール踊り子(横浜~熱海)0.3万人(2%)
34 しらさぎ(名古屋~大垣)0.2万人(5%)
35 しまんと、あしずり(高知~窪川)0.17万人(10%)
36 ひたち(いわき~原ノ町)0.16万人(–)
37 さざなみ(東京~蘇我?)0.15万人(8%)
38 ひたち(原ノ町~仙台)0.14万人(–)
39 スーパーはくと(智頭~鳥取)0.11万人(3%)
40 しらゆき(直江津~長岡)0.1万人(8%)
40 ふじかわ(富士~富士宮)0.1万人(7%)
40 ひだ(美濃太田~下呂)0.1万人(2%)
40 南紀(松阪~紀伊長島)0.1万人(7%)
40 サンライズ出雲、瀬戸(静岡~浜松)0.1万人(12%)

45 つがる(弘前~青森)0.08万人(4%)
46 スーパーいなば(智頭~鳥取)**0.06万人(5%)
47 草津(高崎~渋川)0.05万人(2%)
47 日光、きぬがわ等(大宮~栗橋)0.05万人(2%)
47 うずしお(児島~宇多津)0.05万人(12%)
47 はまかぜ(姫路~寺前)**0.05万人(5%)
47 スーパーいなば(上郡~岡山)0.05万人(5%)

52 いなほ(酒田~秋田)0.04万人(4%)
52 スーパーおき(新山口~益田)**0.04万人(5%)
52 サンライズ出雲(岡山~新見)0.04万人(13%)
55 ふじさん(御殿場~山北)0.0万人(2%)
55 伊那路(豊川~本長篠)0.0万人(8%)

*マリンライナーは快速列車
**は当サイト推定の数字

上記のランキングは、JR各社から広報発表された数字をまとめたものです。JR各社によって、区間選定の基準などがばらばらであることをご承知おきください。計測区間が不明の列車の区間については、「?」を付けています。カッコ内は前年同日比です。

また、今回はJR西日本が一部列車でデータを公表しなかったり、前年比(%)のみの発表で実数を明らかにしませんでした。前年比のみ発表の列車は実数を当サイトで推定し、数字は**で示しています。

今年は全体に利用者が非常に少ないため、ランキング下位では、百人単位の四捨五入が順位に影響している場合が多くなっています。四捨五入の単位が発表元の各社・支社により異なることもあり、1万人以下のランキングの細かい順位の違いにあまり意味がない点、ご留意ください。

「ふじさん」「伊那路」は「0」となっていますが、JR東海は1,000人単位でしか発表しないためです。ゴールデンウィーク期間中の利用が500人未満だったことを示しています。

ひたちE657系

全線復旧の常磐線特急が首位

さて、JR各社の利用状況の調査期間は、2020年4月24日~5月6日の13日間です。前年が10連休の超大型連休だったので反動減は予想されていましたが、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言により、各列車とも反動を遙かに超えた大激減に見舞われました。

そのなかで首位に立ったのは、常磐線特急でした。常磐線は2020年3月に東日本大震災以来9年ぶりに全線復旧し、「ひたち」の仙台直通も再開されました。これによる「復旧特需」が後押しとなったのでしょうか。

復旧区間の「いわき~原ノ町」「原ノ町~仙台間」は、連休中の利用者がそれぞれ1,600人と1,400人でした。1日あたり110~120人程度にとどまりましたが、緊急事態宣言という環境と、1日3往復という運行本数を考えれば、まずまずといったところでしょうか。

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「マリンライナー」が2位浮上

ここ2年、ゴールデンウィーク利用者数で首位だった中央東線特急は、2020年は3位に後退しました。2019年は3月ダイヤ改正で「あずさ」「かいじ」をE353系に統一、「富士回遊」も投入した効果で強さを見せましたが、2020年は前年比6%に落ち込みました。観光客の割合の高い路線だけに、新型コロナの影響が大きかったようです。

その中央東線特急を凌いで今年2位に入ったのは、なんと瀬戸大橋線の快速「マリンライナー」。前年比12%と、外出自粛の嵐のなかで踏ん張りました。もちろん「マリンライナー」は快速列車なので、特急と全く同列には扱えません。全国的な傾向として、コロナ禍では近郊列車の落ち込みが特急列車より低い傾向があり、それを示した形です。

ただ、四国方面は、このゴールデンウィークの落ち込み方が比較的マシでした。「うずしお」17%、「宇和海」15%のほか、「しおかぜ、いしづち」「南風、しまんと」といった基幹列車も、四国島内で前年比8%程度を確保しています。マリンライナーの健闘も、こうした地域性を反映している部分もあるでしょう。

房総特急が健闘

そのほかの特急列車で前年比が高かったのは、総武線「しおさい」の14%と、外房線「わかしお」の13%でしょうか。房総特急は観光客が利用するイメージがあり、緊急事態宣言下での健闘は意外にも受け取れますが、実際は通勤客や用務客の割合が高いのでしょう。函館線「カムイ」「ライラック」なども11%と踏ん張りました。

唯一の寝台特急「サンライズ出雲・瀬戸」も12~13%と健闘しました。「ノビノビ座席」以外は個室の列車なので、感染リスクが低いと利用者が判断したのでしょうか。

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伊豆特急に「サフィール効果」なし

房総方面以外の首都圏の観光特急は不振で、「サフィール踊り子」がデビューし、E257系も投入された伊豆特急は前年比2%。「草津」「日光」「きぬがわ」といった北関東の温泉地へ向かう特急も2%と落ち込みました。これらの特急は実務需要が少ないとみられ、落ち込みが激しかったのでしょう。

壊滅的だったのが「成田エクスプレス」で、前年比1%の3,300人の利用にとどまりました。成田エクスプレスは5月1日から減便をしていて、13日間の総運転本数は480本。計算すると1本あたり平均約6.8人の利用者だったことになり、衝撃的な少なさです。

関空特急「はるか」も同レベルの落ち込みとみられますが、JR西日本は「はるか」の利用者数や前年比を、今年のゴールデンウィークでは公表しませんでした。

「サンダーバード」も振るわず

西日本では、北陸線特急「サンダーバード」も前年比4%と振るいませんでした。北陸新幹線も振るわなかったのですが、石川県が特定警戒地域に指定されるなど、北陸方面で新型コロナウイルスの感染者が多かったことが影響したようです。

「こうのとり」は前年比10%とマシでした。城崎へ向かう「温泉特急」にしては堅調な数字ですが、大阪近郊の「快速がわり」としても使われる列車だからかもしれません。

全体にまとめてみると、どの列車も壊滅的な数字であることは言うまでもありません。用務客の多い大都市近郊の列車は、比較的落ち込みが緩やかに感じられますが、それでも利用者数は非常に少ないです。

トップの常磐線特急の連休中1本あたりの乗車人員を計算してみると、約30人にすぎません。前年比が比較的マシだった「わかしお」でも約28人。「カムイ、ライラック」などで約16人です。数字の悪かった観光特急として「日光・きぬがわ」を例に挙げると、1本あたり約9人ですので、どこの列車も大差なく悲惨な利用者数だったといえます。

なんであれ、連休中にほとんど無人の特急が日本中を走り回っていたのは想像に難くありません。JR各社にとって、非常に厳しいゴールデンウィークとなりました。(鎌倉淳)

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