JR九州が2022年4月1日に在来線特急料金を平均で約40%値上げします。夏休みなどのピーク時に加算する「繁忙期料金」も、事実上復活します。詳細を見てみましょう。
最大61%値上げ
JR九州は、在来線特急料金を2022年4月1日乗車分から値上げすることを発表しました。新型コロナウイルス感染症の拡大による経営状況の悪化を受けたもので、値上げにより収支改善を図ります。在来線特急の値上げは、消費税増税に伴うケースを除けば、JR九州発足後初めてです。
値上げ幅は、平均で約40%となり、大幅値上げといえます。これまで25km刻みで310円、630円、840円、950円だった自由席特急料金が、500円、750円、1,000円、1,200円と切りのいい数字になります。
25kmまでの場合、約61%というかなりの値上げ率になります。一方で、高速バスとの競合が激しい50~100km程度の区間の値上げ幅は抑えています。
営業キロ | 現行料金 | 新料金 | 値上げ率 |
---|---|---|---|
25kmまで | 310円 | 500円 | 61% |
50kmまで | 630円 | 750円 | 19% |
75kmまで | 840円 | 1,000円 | 19% |
100kmまで | 950円 | 1,200円 | 26% |
150kmまで | 1,250円 | 1,800円 | 44% |
200kmまで | 1,410円 | 2,200円 | 56% |
300kmまで | 1,520円 | 2,400円 | 58% |
301km以上 | 1,680円 | 2,600円 | 55% |
特定区間も値上げ
自由席の特定区間の料金については、現行310円と420円の区間を500円に、現行520円の区間を600円に値上げします。
区間 | 現行料金 | 新料金 |
---|---|---|
門司港・下曽根・小倉~博多間 | 520円 | 600円 |
宮崎~南郷 | 520円 | 600円 |
博多~直方 | 420円 | 500円 |
国分~鹿児島中央 | 310円 | 500円 |
霧島神宮~重富 | 310円 | 500円 |
吉松~隼人 | 310円 | 500円 |
霧島神宮・吉松~鹿児島中央 | 520円 | 600円 |
特急定期券の「エクセルパス」や「九州ネットきっぷ」「2枚きっぷ」などの割引きっぷは、現行価格を据え置きます。通勤客やヘビーユーザーに配慮した形です。
指定席料金に「繁忙期」
指定席料金は、上記価格に530円を加算した金額です。この加算金額はこれまで通りです。
JR九州では、「繁忙期」「閑散期」「通常期」の区分を廃止していましたが、値上げとあわせてピーク期間を「対象日」として、指定席特急料金に200円を加算します。事実上の「繁忙期指定席料金」の復活と言えます。
「対象日」は、3/21 ~4/5、4/28~5/6、7/21~8/31、12/25~1/10の年4回です。学休期とゴールデンウィークが対象になっています。
一方で、利用者の少ない閑散期の減額は実施しません。
主要区間の新料金
具体的な区間別の新料金については、以下の通りです。乗車券を含めた価格です。
定価で買うのが馬鹿らしい
特急料金が区間により約1.2倍~1.6倍の大幅値上げになったのに対し、ネットきっぷをはじめとする割引きっぷの価格が据え置かれたことから、ネットきっぷの割引率が相対的に高くなっています。
たとえば、博多~佐賀間のネットきっぷは約57%割引。博多~長崎間が約44%、博多~小倉間が約41%、博多~大分間が約51%割引です。
主要区間はネットきっぷが40~50%安くなっていて、定価できっぷを買うのが馬鹿らしくなる差額といえます。裏を返せば、JR九州としては、窓口できっぷを買う客を減らそうという意図もあるのでしょう。
ただ、ジパング倶楽部や株主優待割引といった、定価に対して割引率を設定している割引制度に関しては、ダイレクトに値上げとなります。また、ネットきっぷなどが設定されていない区間も値上げが直撃となります。
利用者としては、これまで以上に入念に下調べしてから、少しでも安くきっぷを購入したいところです。(鎌倉淳)