JR北海道が新型の通勤形電車737系を導入します。室蘭線室蘭~苫小牧間で運行します。
2023年春から運用開始
JR北海道は、737系通勤形交流電車を製造すると発表しました。室蘭線室蘭~苫小牧間に投入する予定です。
13編成(26両)を製造予定で、2023年春から運用を開始します。更新対象はキハ143形です。
737系の外観は、淡いピンク色の「さくら色」を塗装に採用。前面部は黒色をベースにし、コーポートカラーのライトグリーンと、警戒色の黄色を添えたデザインとなっています。
オールロングシート
737系は2ドア車、片側に約20人が座れる長いロングシートを備えます。車両中央部にはフリースペースを備え、2号車にはバリアフリートイレも配置します。
2両編成で運用し、同社の通勤形電車として初めてワンマン運転に対応します。
2両合計の座席定員は93人、総定員は269人です。セミクロスシートのキハ143形は座席定員96人、総定員244人なので、737系はロングシートながら、ほぼ同水準の座席定員を備え、総定員は1割ほど増えています。
内装は乗降ドアを淡いピンク色とし、座席はドットを散りばめた暖色系のデザインに。これは、北海道内に咲く色とりどりの花をイメージしたそうです。
最大6両で運行可能
車両はアルミ合金製。1M1Tの2両編成が基本ですが、最大6両で運行可能です。最高運転速度は120km/hです。
主変換装置にハイブリッドSiCモジュール、照明にLEDを採用し、従来の車両と比較して消費電力を低減しました。
電化設備は維持
以上が737系の概要です。
注目点はいくつかありますが、まずは、室蘭~苫小牧間に新型電車を投入すること自体がニュースでしょう。現在、この区間の普通列車はおもにキハ143系とH100形で運用されていて、電化区間ながら電車を使用しているのは特急「すずらん」のみです。
電化設備を十分に活用していないことから、将来的には室蘭~苫小牧間の電化設備が撤去されるのではないか、という見方もあったほどです。
しかし、今回の新型電車投入により、その懸念は払拭されたと言っていいでしょう。
H100形は他路線に?
13編成26両という導入数も注目です。2022年4月時点でJR北海道に残るキハ143形は10両なので、キハ143系の置き換えだけでは過剰です。現在、同区間で運用されているH100形も置き換えて、H100形は別の区間で活用されるのでしょうか。
旅行者の注目点は、オールロングシートという車内設備でしょう。旅行者はクロスシートを好む人が多いので、ロングシートのみという仕様に残念がる声もあるようです。
ただ、地方の列車では、ボックスシートに4人座っていることはあまりありません。誰かが座っているボックスシートに後から座るのが憚られる雰囲気があるからでしょう。ボックスシート部分は、せっかくの席が十分に活用されていないという状況があるわけです。
ロングシートにはそういう雰囲気がないので、実質的な着席チャンスは広がるかもしれません。
車両中央のフリースペースは、大型荷物を持っている旅行者には便利そうです。その点で、外国人旅行者も意識した構造といえそうです。(鎌倉淳)