JR利用者の回復傾向が鮮明に。でも学生が電車に戻らない?

首都圏は戻り鈍く

JR主要3社の2020年9月の利用状況が公表されました。新型コロナウイルス感染症の拡大が一段落したからか、徐々に利用者が回復してきています。ただ、定期利用者の割合から、学生が電車に戻ってこない様子もうかがえます。

広告

JR東日本は49%

JR東日本の2020年9月の利用状況は、対前年比で定期収入が53.1%、定期外収入が46.6%で、合計49.1%となりました。8月の36.4%に比べ12.7ポイント上昇し、対前年比でほぼ半分の収入まで回復しています。もっとも厳しい局面だった4月の24%に比べると、倍になっています。

定期外収入のうち、近距離は66.9%で、中長距離(新幹線など)が34.3%です。中長距離の戻りの悪さは残っています。

山手線

JR東海は4割

JR東海の9月の利用状況は、東海道新幹線の東京口が対前年比38%、大阪口が40%でした。8月の25%に比べ、13ポイント上昇しています。内訳は「のぞみ」39%、「ひかり」32%、「こだま」41%です。新型コロナ禍で、東海道新幹線は長距離を走る「のぞみ」の利用状況が悪かったのですが、9月は回復してきました。

9月は「GO TOキャンペーン」で東京が除外されていましたが、東海道新幹線の利用状況を見ると、東京口、大阪口の対前年比の差は2ポイントで、大きくは変わりませんでした。

JR東海の在来線特急は38%、名古屋近郊は72%です。近郊電車は7割程度にまで回復してきました。

JR東海は全体の利用状況の数字を出していませんが、東海道新幹線の収入の割合の高い会社なので、全体としても新幹線の数字をそのままみればよさそうです。すなわち、対前年比で4割程度の回復でしょう。

広告

10月は回復鮮明に

JR東海は10月1日~14日の速報値も公表していて、東海道新幹線は東京口で対前年比44%、大阪口で45%にまで回復しています。「GO TOキャンペーン」に東京が加わった効果でしょうか。

10月は在来線特急が48%、名古屋近郊が81%と、中京圏の利用者も回復傾向が鮮明になっています。「東京参加」が、東京圏以外にも心理的な効果を及ぼしているのかもしれません。

JR西日本は49%

JR西日本の9月の運輸取扱収入は、対前年比で49.6%となりました。8月の40.8%より8.8ポイント上昇しています。内訳は近距離64.8%、中長距離39.4%、定期が59.7%です。

利用状況は、山陽新幹線が対前年比39%、北陸新幹線が37%、在来線特急が36%、近畿圏の在来線が69%です。

山陽新幹線の内訳は、「のぞみ・みずほ」39%、「ひかり・さくら」37%、「こだま」44%でした。「こだま」が高く、「ひかり」が低いのは、東海道新幹線と同じです。

広告

学生が定期を買わない?

3社をまとめてみましょう。「収入」でデータを公表しているJR東日本とJR西日本を比べると、東が合計49.1%、西が合計49.6%で、いずれも前年度の半分まで回復しています。東海は4割程度の回復とみられます。

主に新幹線を示す「長距離」で比べると、東が34.3%(収入)、西が39.4%(収入)、東海が38%(利用状況)となり、いずれも4割弱の回復です。

主に大都市近郊区間を示す「近距離」で比べると、東が定期53.1%、定期外66.9%(収入)、西が定期59.7%、定期外64.8%(収入)、東海が72%(利用状況)となっています。定期が5~6割程度、定期外が6~7割程度に回復しています。全体でみると、近郊電車は6割程度の回復でしょうか。

興味深い点としては、定期客の対前年比が、8月より9月のほうが悪いことです。JR東日本は8月の78.1%が53.1%に、JR西日本は87.2%が59.7%に落ちています。学生が定期券を買わない夏休みは対前年比が高く、定期券を買う9月は低い、ということです。つまり、学生が定期券を買わなくなっている可能性があります。

首都圏で戻り鈍く

首都圏より関西圏、関西圏より中京圏のほうが、近郊区間の回復が速いことも見て取れます。理由として考えられるのは、大学の遠隔授業が定着し、学生が多い首都圏で影響が出やすいこと。もう一つは、列車混雑の激しいエリアほど、在宅勤務が定着しやすいことでしょう。要するに、首都圏は通勤・通学客とも戻りが鈍いようです。

とはいえ、JR東海の10月の速報値から推測すると、10月は9月より10ポイント程度、状況が改善している可能性がありそうです。となると、通勤電車に関しては、首都圏で7割程度、関西圏や中京圏では8割程度まで、乗客が回復していることになります。

大学も後期は通常講義を行うことが増えたのでしょうか。全体としては、鉄道の利用状況はコロナ前に戻らないにしても、近づきつつあるともいえます。最近、通勤電車の混雑が戻ってきているように感じるのは、気のせいではなさそうです。

広告