2024年3月期のJR本州3社のインバウンド鉄道運輸収入が約1500億円に達することがわかりました。JR九州の鉄道運輸収入の総額に匹敵する規模です。
JR東日本、西日本は300億円以上
JR本州3社が2024年3月期決算を発表しました。各社とも増収増益の好決算で、コロナ禍からの復活を印象づけました。
そのなかで注目したいのは、各社のインバウンド鉄道運輸収入です。JR東日本は385億円、JR西日本は355億円と明らかにしました。
JR東海は810億円
JR東海は、2024年3月期のインバウンド鉄道運輸収入が約810億円に達したことを明らかにしています。
これにより、JR本州3社の2024年3月期のインバウンド運輸収入の総額は1550億円に達するになります。
JR九州の鉄道旅客運輸収入(2024年3月期予想)が1428億円ですので、本州3社のインバウンド運輸収入は、JR九州1社分の鉄道運輸収入の総額に匹敵する規模になります。
JR東海に大きな恩恵
インバウンド運輸収入の鉄道運輸収入全体に占める割合は、JR東日本が2.6%、JR西日本が4.2%、JR東海が6.0%です。
JR東海の割合が高いですが、東京~箱根~富士山~名古屋~京都~大阪などを巡る「ゴールデンルート」を沿線に持つからでしょう。
インバウンドは、JR東海にとりわけ大きな恩恵を届けていることがうかがえます。
1人あたり6,000円
いうまでもありませんが、1500億円というのは、相当に大きな数字です。
インバウンドにより、JR九州1社分規模の鉄道旅客運輸収入が生まれた計算です。インバウンドによる鉄道会社の恩恵は、それほどまでに大きいといえます。
2023年の訪日外国人観光客は約2500万人なので、1人あたり6,000円をJR本州3社に支払った計算になります。
訪日パスと個札の推計
ちなみに、インバウンド運輸収入の計算方法ですが、JR東日本では、訪日旅行者向けパスの自社収入と個札収入を足した数字と説明しています。
個札収入の推計は、これまで携帯電話の位置情報を用いた移動統計に基づいてきましたが、今後は、英字チケットの発券シェアによる推計に変更します。上述の385億円は新基準の数字です。
また、JR東日本では、訪日旅行者向けパスの比率はインバウンド収入全体の約3割に相当します。JR西日本の場合は全体の6~7割程度に達します。
JR九州は20億円程度
ちなみに、JR九州のインバウンド運輸収入は、第3四半期までの数字で約14億円です。通期は未発表ですが、約20億円程度になりそうです。
鉄道運輸収入全体に占める割合は1.4%程度と推定され、本州3社とは差があります。インバウンドの恩恵は、本州3社ほどには届いていないようです。
その理由を推測すると、訪日外国人の「ゴールデンルート」に接していないこと。また、九州エリアには羽田や成田、関空に匹敵する大空港がないため、訪日旅行者向けパスの販売数が少ないという側面もありそうです。(鎌倉淳)