JR北海道に新たな観光列車が登場します。北海道と国の補助金で車両を購入し、JRに貸与するという支援で、宗谷線、石北線など8路線に投入されます。
鈴木知事が公表
新型観光列車の導入は、北海道の鈴木直道知事が、2021年1月23日に開かれた北海道の鉄道ネットワーク関係者会議で明らかにしたものです。JR北海道が単独で維持困難としている8線区の支援方法として、道などが出資する第三セクターの北海道高速鉄道開発が観光列車を購入し、JRに無償貸与するという方針を示しました。購入には道と国が同額の補助をする一方、沿線の基礎自治体には負担を求めません。
鈴木知事は、2020年12月12日に開かれた「鉄道ネットワークに関する関係者会議」において、「単なる赤字補填はできない。明確にそれはできないと考えている」と発言。赤字補填はしない方針を示したものの、違う形での支援には含みを残していました。その内容を23日の会議で示した形で、知事は「利用促進に資する取り組みへの支援」と強調しました。
支援の対象となる8線区は以下の通りです。
・宗谷線(名寄・稚内間)
・石北線(旭川・網走間)
・釧網線(釧路・網走間)
・花咲線(釧路・根室間)
・根室線(滝川・富良野間)
・富良野線(富良野・旭川間)
・室蘭線(苫小牧・岩見沢間)
・日高線(苫小牧・鵡川間)
JR北海道では、これらの区間のうち、宗谷線ではキハ48形改造車「びゅうコースター風っこ」をJR東日本から借り受けて、キハ40形「北海道の恵み」と連結して運行するなどの施策を採ってきました。こうした観光列車を、新たな車両で拡大することになります。
総額10数億円規模か
道と沿線自治体は、2019、2020年度に上記8区間に対し、利用促進費として各年2億円、計4億円を拠出していました。新しい支援は2021年度からの3年間に対するもので、各年度の金額を増額したうえで、複数の車両を購入します。
支援総額は明らかではありませんが、現状の年2億円から増額するとなると、3年間で10~20億円程度になるとみられます。
どんな車両になるか
気になるのは、どういう車両が投入されるかですが、いまのところ決定した内容はありません。各社報道によると、新造と改造の両面で検討しているようです。
最近のJR北海道の観光用車両としては、キハ261系5000番台の「はまなす編成」「ラベンダー編成」があります。特急用車両で、定期列車にも観光列車にも運用可能な仕様となっています。
支援対象の8線区は、いずれも利用者が少なく、必ずしも観光客が多い路線ばかりではありません。また、特急が走らない区間もあります。したがって、新たに投入される車両は、定期列車にも観光列車にも対応できる柔軟性の高い仕様で、普通列車として短編成で走れるものになる可能性が高そうです。
となると、新造の場合は、最新の電気式気動車H100形をベースにしたものが有力です。一方、改造の場合は、車齢的にキハ54形かキハ150形あたりが候補になりそうです。さすがに、今からキハ40形を改造することは、このプロジェクトではないでしょう。
車両の投入時期も未定です。「はまなす」編成は、2019年2月に製造を発表し、2020年10月に運用開始となりました。同じようなスケジュールなら、新観光列車は2022年秋から冬頃の登場と予想されます。ただ、「はまなす」は5両新造でしたが、今回は1~2両で運用できる車両でしょうし、改造の可能性もあります。となると、早ければ2021年度内に登場するかもしれません。
北海道のローカル線に、どんな観光用列車が誕生するのか楽しみです。