JR北海道が2015年度(2016年3月期)の全路線の輸送密度と営業損益、営業係数を公表しました。JR北海道がこれらの数字を公表するのは、前年度に続き2度目のことです。前年同様、鉄道路線は札幌圏を含め全路線が赤字でした。
JR北海道全28区間・輸送密度ランキング
これは、2016年11月4日の記者会見で明らかにされたものです。JR北海道の全13路線を28区間に分けたもので、その輸送密度、営業損益、営業係数の2015年度分です。
まずは、その数字を輸送密度順にランキングしてみましょう。
数字は左から輸送密度(人キロ)/営業損失(百万円)/営業係数(円)です。黒字路線が一つもないので、営業損益は「営業損失」としてマイナス表記を省略しました。また、営業損失と営業係数は管理費を含めた数字です。( )内は前年度です。
▽輸送密度200未満
留萌線・留萌~増毛 67/177/2538(39/227/4554)
札沼線・医療大学~新十津川 79/351/2213(81/332/2162)
石勝線・新夕張~夕張 118/150/1188(117/182/1421)
根室線・富良野~新得 152/979/1854(155/892/1591)
留萌線・深川~留萌 183/683/1342(177/647/1508)
日高線・苫小牧~様似 185/1667/2125(298/1544/1179)
▽輸送密度201- 500
宗谷線・名寄~稚内 403/2541/618(405/2544/622)
根室線・釧路~根室 449/1076/517(436/1000/505)
根室線・滝川~富良野 488/1183/1010(460/1028/953)
室蘭線・沼ノ端~岩見沢 500/1117/965(516/1130/1011)
▽輸送密度501-1,000
釧網線・東釧路~網走 513/1617/561(466/1652/594)
函館線・長万部~小樽 690/2168/573(675/2067/570)
▽輸送密度1,001-2,000
石北線・上川~網走 1061/2835/332(1051/2907/327)
富良野線・富良野~旭川 1477/956/363(1406/898/366)
石北線・新旭川~上川 1481/733/296(1489/673/273)
宗谷線・旭川~名寄 1571/2109/384(1512/1919/365)
▽輸送密度2,001-5,000
根室線・帯広~釧路 2266/3288/250(2259/3234/246)
海峡線・木古内~中小国 3706/1123/134(3851/863/126)
函館線・函館~長万部 3799/4969/206(3765/4281/194)
江差線・五稜郭~木古内 4133/3726/311(4377/1864/248)
石勝/根室線・南千歳~帯広 4213/7961/127(4270/1929/130)
▽輸送密度5,001-10,000
室蘭線・長万部~東室蘭 5106/444/115(5022/997/135)
室蘭線・室蘭~苫小牧 7270/1882/156(7736/1656/153*)
函館線・岩見沢~旭川 9538/2865/147(9320/2517/143)
▽輸送密度10,001-20,000
札沼線・桑園~医療大学 17359/2175/105**(16873/2662/107**)
▽輸送密度20,001以上
函館線・札幌~岩見沢 43994/2175/105**(43025/2662/107**)
千歳線・白石~苫小牧 44812/2175/105**(43433/2662/107**)
函館線・小樽~札幌 44981/2175/105**(44099/2662/107**)
全線平均 5094/41305/155(4791/40037/154)
*室蘭線室蘭~苫小牧は、前年度は東室蘭~苫小牧の数字。
**札沼線、函館線、千歳線の営業損失と営業係数はひとまとめにした数字。
医療大学=北海道医療大学、千歳線は室蘭線を一部含みます。
※江差線五稜郭~木古内間は、2016年3月に道南いさりび鉄道に移管しました。
続いて、営業係数だけをランキングにしてみましょう。
JR北海道全28区間・営業係数ランキング
留萌線・留萌~増毛 2538(4554)
札沼線・医療大学~新十津川 2213(2162)
日高線・苫小牧~様似 2125(1179)
根室線・富良野~新得 1854(1591)
留萌線・深川~留萌 1342(1508)
石勝線・新夕張~夕張 1188(1421)
根室線・滝川~富良野 1010(953)
室蘭線・沼ノ端~岩見沢 965(1011)
宗谷線・名寄~稚内 618(622)
函館線・長万部~小樽 573(570)
釧網線・東釧路~網走 561(594)
根室線・釧路~根室 517(505)
宗谷線・旭川~名寄 384(365)
富良野線・富良野~旭川 363(366)
石北線・上川~網走 332(327)
江差線・五稜郭~木古内 311(4248)
石北線・新旭川~上川 296(273)
根室線・帯広~釧路 250(246)
函館線・函館~長万部 206(194)
室蘭線・室蘭~苫小牧 156(153*)
函館線・岩見沢~旭川 147(143)
海峡線・木古内~中小国 134(126)
石勝/根室線・南千歳~帯広 127(130)
室蘭線・長万部~東室蘭 115(135)
札幌圏 105(107)
全線平均 155(154)
*室蘭線室蘭~苫小牧は、前年度は東室蘭~苫小牧の数字。
輸送密度は改善
前年度に比べ、全体的には輸送密度が改善し、営業係数は同水準です。JR北海道では、以下の要因を挙げています。
・札幌圏は安全対策の修繕費が増加したが、新千歳空港の利用増などにより増収となり、営業係数は2ポイント改善、105円となった。
・函館線函館~長万部は、新幹線開業を見越した札幌~函館間のアクセス強化のため線路関係の修繕費を増やしたこともあり、営業係数が12ポイント悪化し206円となった。
・2015年8月に、使用停止していた183系の使用を再開したことにより、関連線区の収入が増加した(函館線函館~長万部、室蘭線長万部~苫小牧、宗谷線旭川~稚内)。
・上記線区のうち、 函館~長万部と旭川~名寄では、 修繕費が増加したことから、営業係数は悪化した。
・江差線五稜郭~木古内は、道南いさりび鉄道への移管に伴い、鉄道施設等の修繕を集中的に実施したことにより、営業係数が悪化した。
・日高線苫小牧~様似は、鵡川~様似間でバス代行輸送を行っており、バス代行経費(4.6億円)などにより、営業係数が悪化した。
そのほか、留萌線の輸送密度や収支、営業係数が改善しているのも目立ちます。いうまでもなく、廃線前の賑わいが理由でしょう。
2016年のJR北海道は、大雨で大きな被害を受けました。そのため、2016年度のデータは、これよりかなり数字が悪くなると予想されます。
室蘭支線を本線に統合して表記
分類で代わったのは、室蘭線です。前年のデータでは「室蘭~東室蘭」と「東室蘭~苫小牧」が個別に公表されていましたが、今回のデータでは「室蘭~苫小牧」と一括して表記されています。
これはわりと重要なポイントかもしれません。「室蘭~東室蘭」(室蘭支線)だけを分けて扱わず、本線と一体化して扱う姿勢を見せたといえるからです。今後、鉄道の維持に関する協議においても、室蘭支線だけを取り出して協議対象にすることはない、と考えてよいのかもしれません。(鎌倉淳)