JR北海道が特急列車の利用状況を公開しました。それによりますと、北海道内の特急で最も利用者数が多いのが「スーパーカムイ」の札幌~岩見沢間。一方、利用者数が少ないのは「オホーツク」の北見~網走間でした。
各特急とも、高速道路開通と人口減少の影響を受け、苦戦している様子がうかがえます。
減便や運行区間短縮を模索
JR北海道は、2016年4月13日の島田修社長の定例記者会見にあわせ、北海道内の特急の利用状況を明らかにしました。特急型気動車キハ183系の老朽化を理由に、使用車両数が減る前提でダイヤを再構築する見通しを示した上で、特急の減便や運行区間短縮に理解を求めるためとみられます。
JR北海道が公表した特急の利用状況を、2015年度の利用者数の多い順にランキングにしてみましょう。項目は、左から、列車名、区間、輸送量(人/日)、効率、対1991年度比増減、その増減率です。「効率」は乗車率を示すとみられます。
対比年度が1991年度となっているのは、同年がバブルのピークで、輸送量が多かった年度だからでしょう。
JR北海道特急利用者数ランキング
1 スーパーカムイ 札幌~岩見沢 8,114(64%)▲2,017[80%]
2 スーパーカムイ 滝川~旭川 5,783(46%)▲1,556[79%]
3 北斗・S北斗 東室蘭~苫小牧 4,570(74%)▲746[86%]
4 北斗・S北斗 函館~大沼 3,727(60%)▲967[79%]
5 スーパーおおぞら 南千歳~トマム2,358(59%)▲1,041[69%]
6 スーパーおおぞら 新得~帯広 2,155(54%)▲871[64%]
7 スーパーおおぞら 帯広~釧路 1,538(38%)▲567[73%]
8 スーパーとかち 南千歳~トマム 1,203(46%)▲804[60%]
9 すずらん 東室蘭~苫小牧 1,135(41%)▲692[62%]
10 スーパーとかち 新得~帯広 956(37%)▲546[64%]
11 オホーツク 旭川~上川 778(45%)▲714[52%]
12 スーパー宗谷・サロベツ 旭川~名寄 661(55%)▲298[69%]
13 オホーツク 遠軽~北見 602(35%)▲619[49%]
14 スーパー宗谷・サロベツ 名寄~音威子府 466(39%)▲236[66%]
15 オホーツク 北見~網走 301(17%)▲316[49%]
高速道路延伸の影響大
輸送量は利用者数と言い換えてもいいでしょう。輸送量の順位付けは、多くの方の想像の範囲内で、意外性はありません。すなわち、「カムイ」「北斗」「おおぞら」の順です。
筆者の印象では「とかち」はもう少し利用者数が多いと思っていたのですが、この表を見ると苦戦しています。2011年に道路の難所・日勝峠にトンネルが開通し、道東自動車道で札幌圏と帯広圏が結ばれた影響が大きいとみられます。
対1991年度比では、「カムイ」「北斗」が2割程度の利用者減にとどまっていて、高速道延伸や人口減少を考えれば堅調といっていいでしょう。利用者減が目立つのは「オホーツク」で、24年前に比べて半減しています。こちらは旭川紋別道の整備による影響に加え、石北線で高速化が進んでいないことが要因と思われます。
JR北海道の特急全体では、24年間で3割程度の利用者減になっているようです。
輸送量4,000超は東室蘭~旭川間のみ
順位は想像の範囲内だったとしても、輸送量の少なさには改めて驚かされます。4,000人/日を越えているのが「北斗」「カムイ」の東室蘭~札幌~旭川間のみ。この区間でも「すずらん」は利用者数が少なく苦戦しています。
「オホーツク」「スーパー宗谷」「サロベツ」の利用者数はローカル線レベルで、旭川口でも数百人/日に過ぎません。北見以遠、名寄以遠は500人/キロを割っています。数字を見る限り、この3列車が減便されるのはやむをえません。「スーパーとかち」も減便されて不思議ではない数字です。
道東道は2016年3月に阿寒まで開通しており、釧路までの建設計画もあります。そのため、今後「スーパーおおぞら」も数字を落としそうです。
北海道新幹線は「2位」
同じ日に発表された北海道新幹線の開業後16日間の平均利用状況では、青函区間の乗車人員は約5,700人/日。JR北海道の特急では「カムイ」に次ぐ2位の利用者数にあたります。前年比では217%を記録。夜行列車を除いた計算では、前年比270%の大幅増です。
北海道新幹線は乗車率が20%台であることばかりが報じられていますが、青函区間の鉄道利用者数は前年比倍増以上という結果を残しているわけです。単価の高いグランクラスは37%の乗車率で、「はやぶさ」末端区間であることを考えると驚く高さです。
前年比倍増でも5,700人/日というのが、北海道新幹線の苦しさを示しています。とはいえ、札幌まで延伸すれば数字は改善するでしょう。減少傾向が続く道内在来線特急の厳しさを見ると、JR北海道としては、新幹線札幌開業に期待するほかなさそうです。(鎌倉淳)