上毛電鉄に新たな支援策。「群馬型上下分離」とは何か

車両更新も計画

上毛電鉄への新たな支援策が決まりました。国と沿線自治体が5年間で総額22億円の補助をします。支援の枠組みである「群馬型上下分離」について見てみましょう。

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国の補助から自治体支援へ

上毛電鉄は中央前橋~西桐生間25.4kmを結ぶローカル私鉄です。2020年度の輸送密度は1,467にとどまりますが、公共交通機関として一定の役割を果たしている数字です。

経営は古くから赤字基調で、1976年から国と県から「鉄道軌道欠損補助」を受けていました。国が鉄道会社への欠損補助を取りやめると、群馬県など沿線自治体が独自の補助の枠組みをつくり、1998年から公的支援を続けています。

上毛電鉄700系

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群馬型上下分離

群馬県などの支援は「群馬型上下分離」と呼ばれる形です。一般的な上下分離のように、鉄道施設の保有主体と運行主体を分けるのではなく、経営主体は上下一体のまま、「下」にあたる施設の経費を自治体が支援します。いわば、費用負担における上下分離です。

5年ごとに上毛電鉄が経営再建計画を策定し、自治体で構成する上毛線再生等検討協議会が「上毛線再生基本方針」を定めて支援します。

1998年度に初めて経営再建計画が策定されて以来、これまで25年にわたり5期の再生基本方針が定められ、計69億3500万円の支援が行われてきました。

車両更新に9億円

その6期目にあたる再生基本方針がこのほど策定され、今後5年間の上毛電鉄に対する公的支援が決まりました。2023〜27年度に、総額22億6356万円(国の負担分を含む)を補助します。過去5期の平均額(13.8億円)を大きく上回る金額です。

補助金額が大きくなったのは、9億円にのぼる車両更新費を計上したからです。2023年からの3年間、3億円ずつ計上し、東京メトロの中古車両を導入する見込みです。詳細は明らかではありませんが、丸ノ内線旧車両の02系か、日比谷線旧車両の03系が有力とみられています。

メトロ02系メトロ03系

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踏切保安装置も更新

また、踏切保安装置の更新に1億3500万円、レールの重軌条化に1億円、鉄柱のコンクリート柱化に7500万円が計上されています。これらをあわせた輸送対策事業費補助は12億1000万円に達します。

そのほか、線路や車両維持にかかる修繕費などを補助する鉄道基盤設備維持費補助に9億1400万円、固定資産税等相当額補助に1億3800万円が計上されています。

東武鉄道も支援

上毛電鉄の筆頭株主である東武鉄道にも支援を求めています。具体的には、東武鉄道から上毛電鉄に出向している社員の給与を、東武が負担します。また、設備投資額圧縮のための方策や、営業上の企画の検討などについて、東武が協力します。

総額の負担の内訳は国が4億300万円、県が9億5200万円、前橋市が5億4100万円、桐生市が2億6300万円、みどり市が1億200万円です。

群馬県は、同様の支援を上信電鉄やわたらせ渓谷鐵道に対してもおこなっています。自動車普及率が高く、公共交通の利用率が低い同県が、ローカル私鉄に対するこれだけの支援をおこなっていることには、大きな意味があるでしょう。(鎌倉淳)

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