「ローカル路線バス 対決旅 陣取り合戦」第4弾 茨城・取手~水戸を分析する。どこで勝負がついたのか

「バス旅の対決、ほんとイヤだ」

前ページから続きます]

河合チームの検討

では、次に河合チームのルートを検討してみましょう。

河合チームの最初のポイントは、つくばみらい市の陣(間宮林蔵記念館)を獲得した後の判断です。守谷の陣(ミルク工房)で、水海道駅(常総市)からつくば市へのバスがあるという情報を得たため、タクシーで水海道駅へ直行する決断をします。

しかし、常総市の陣(きぬの湯)は水海道駅からは離れていて、どちらかといえば守谷駅に近い位置でした。守谷から水海道へ向かう際に、早い段階で常総市域に立ち寄っていれば気づけたでしょうが、直行してしまったために、かえってロスが生じてしまったのです。

広告

気付かなかった営業所

ここで残念な点があるとすれば、タクシーで水海道に一直線に向かってしまったことよりも、その前段階の守谷市の陣(ミルク工房)での聞き込みでしょう。じつは、ミルク工房の70mほど先に、関東鉄道バスの守谷営業所があったのですが、一行はそれに気付きませんでした。

仮に、ここに立ち寄っていれば、急行ばんどう線というバス路線の存在を知ることができたに違いありません。このバスは、守谷駅から守谷営業所を経て、常総市を抜け、坂東市に至ります。そして、常総市域に入った途端に、陣のあるきぬの湯近くを通るのです。つまり、以下のような形で、常総市の陣を獲得することができました。

▽1日目
取手駅西口09:30→09:55稲豊橋→徒歩1.1km→間宮林蔵記念館(☆つくばみらい市)→徒歩1.1km→稲豊橋10:25→10:45守谷駅東口→徒歩1.5km→ミルク工房もりや(☆守谷市)→徒歩すぐ→守谷営業所11:13→11:26きぬの里中央→徒歩0.2km→天然温泉きぬの里(☆常総市)→徒歩0.2kmきぬの里中央12:07→12:28守谷駅西口/守谷駅東口12:45→13:05谷井田13:22→14:00谷田部車庫14:16→14:40つくばセンター→徒歩0.5km→中央公園(☆つくば市)→徒歩0.5km→つくばセンター15:22→15:52土浦駅西口16:00→16:50石岡駅

このように、タクシーを使わずに、常総市の陣を得た後、すぐに守谷駅に折り返し、谷井田(つくばみらい市)、谷田部を経ればつくばセンターまで乗り継ぐことができます。難易度は高いですが、守谷営業所でうまく情報収集できれば不可能ではないでしょう。

あるいは、守谷での時間を少し長くとったシンプルな乗り継ぎとして、以下のような形もあります。

▽1日目
取手駅西口09:30→09:55稲豊橋→徒歩1.1km→間宮林蔵記念館(☆つくばみらい市)→徒歩1.1km→稲豊橋10:25→10:45守谷駅東口→徒歩1.5km→ミルク工房もりや(☆守谷市)→徒歩すぐ→守谷営業所12:13→12:26きぬの里中央→徒歩0.2km→天然温泉きぬの里(☆常総市)→タクシー12.5km、4,520円→みどりの駅13:40→13:50谷田部車庫14:16→14:40つくばセンター→徒歩0.5km→中央公園(☆つくば市)→徒歩0.5km→つくばセンター15:22→15:52土浦駅西口16:00→16:50石岡駅

きぬの湯までバスで到達し、そこからタクシーでみどりの駅までタクシーで直行したと仮定しています。

じつは、みどりの駅まで行けば、バスの本数が増え、谷田部を経てつくばセンターへ行きやすくなるのです。このルートなら、実際ルートに比べてタクシー代のロスがありません。営業所に立ち寄れば、こうした情報が手に入ったかもしれないわけです。

一行にとって不運だったのは、守谷駅に向かう関東鉄道バスの運転手にミルク工房の位置を尋ねたものの、運転手が知らなかったことです。路線が違いますし、運転手が知らなくても仕方ないのですが、ここで「守谷営業所の前」との回答が得られていれば、展開は全く違った形になっていたかもしれません。

広告

太川チームと互角になれた

上述のように、守谷市からタクシー利用も含めてうまく乗り継げば、キーとなる土浦駅16時発の石岡行きに間に合います。このバスは、太川チームが実際に乗車した便です。つまり、河合チームが常総市の陣を手早く確保し、最速で東に向かえば、4陣を獲得した上で、土浦で太川チームに並んだわけです。この時点で、太川チームも4陣ですから、互角の状況で石岡市に到着し、ゲームの行方は混沌としていたことでしょう。

ただ、常総市からつくば市へバスで抜ける乗り継ぎは簡単ではありませんから、しっかりした情報が必要です。

その点、守谷市の陣(ミルク工房)は、守谷駅から遠くない位置で、バス営業所の目の前にありました。制作側がここを選んだのは、難易度の高い乗り継ぎを見越して、情報収集しやすい立地と考えたからかもしれません。残念なことに、河合チームはそれを活かせませんでした。

守谷市や常総市からつくば市へ抜けるのに、わかりやすいのは、一行のように水海道駅まで出て16時10分発のバスに乗る形です。しかし、この乗り継ぎだと後手を踏んでしまうことは、実際ルートの通りです。

水海道からタクシーに乗っていたら

河合チームのもう一つの可能性としては、実際ルートで水海道駅に12時すぎに到着した後、常総市の陣をあきらめ、タクシーでつくば方面へ直行してしまうことでしょう。水海道駅で聞き込んで、みどりの駅まで行けばバスが頻繁にあるという情報を得られれば、決断することは可能だったと思われます。

▽1日目
ミルク工房もりや(☆守谷市)→タクシー7.4km、3,170円→12:10水海道駅→タクシー7.0km、2,720円→みどりの駅12:40→12:57谷田部車庫13:06→13:30つくばセンター→徒歩0.5km→中央公園(☆つくば市)→徒歩0.5km→つくばセンター14:02→14:32土浦駅西口

この場合、つくばみらい市、守谷市、つくば市の3陣を得て土浦駅に太川チームより早着できます。ただし、土浦市の陣は太川チームに奪われ、石岡行きのバスは16時発で同じになります。

1陣差の劣勢で同じバスに乗るので不利は否めませんが、その後、石岡市か小美玉市のどちらかの陣は獲得できたでしょうから、2日目に逆転の目は残されたでしょう。

広告

太川チームが来なければ

実際ルートに戻りましょう。一行は1日目つくばセンターから土浦駅を経て石岡駅に到着し、時間切れとなりました。

2日目、河合チームは水戸駅に08時10分に到着し、大洗町を経て那珂湊に向かう計画を立てます。このとき、川﨑麻世は、ひたちなか市の陣が那珂湊にあると読んで的中させました。今回の川﨑は、全体的に陣の配置の予想が鋭く、チームを助けました。

ただ、大洗の陣は確保できたものの、ひたちなか市の陣は太川チームに奪われてしまいました。これは展開上やむを得なかったとはいえ、もったいないことでした。

仮に太川チームがひたちなか市に来ないで、前述したような水戸から城里町方面に向かっていたらどうなっていたでしょうか。この場合、ひたちなか市の陣は河合チームが得られますが、城里町、常陸大宮市が太川チームの手に落ちることを意味します。

▽2日目
石岡駅06:45→07:05堅倉07:08→08:10水戸駅北口08:52→09:25大洗神社前→徒歩すぐ→大洗磯前神社(☆大洗町)→徒歩すぐ→大洗神社前09:47→10:00本町南→徒歩0.3km→海鮮丸(☆ひたちなか市)→本町西11:06→11:56南町2丁目12:02→12:40奥ノ谷→徒歩0.3km→和食割烹大黒屋(☆茨城町)→徒歩0.3km→奥ノ谷13:15→13:41偕楽園入口→徒歩0.5km→偕楽園

この乗り継ぎでは、河合チームは7陣を確保して偕楽園に到着します。一方の太川チームは城里町、常陸大宮市を確保して計8陣としたうえで、13時30分頃には偕楽園にゴールできます。

時刻表上は太川チームのほうが早く着けますので、水戸の陣も太川チームの手に落ちます。すると、9対7で河合チームは敗退となります。

上記の仮定の場合、河合チームはタクシー代を残していますので、たとえば笠間市などの陣を取って同点に持ち込むことはできるかもしれません。ただ、仮定に仮定を重ねた話になるので、これ以上は検証は控えます。

広告

太川チームが鉾田市を取っていたら

前述した、太川チームが鉾田市の陣を待って取っていたらどうなっていたか、についても検討してみましょう。この場合、太川チームは2日目に鉾田市、茨城町の2陣を取って、水戸駅に13時頃に到着します。ゴールに先着して水戸市の陣も取ったとして、2日目に3陣、計9陣となります。

この場合、水戸より先の陣は、河合チームの取り放題です。逆転できたかを検証してみます。

▽2日目
石岡駅06:45→07:05堅倉07:08→08:10水戸駅北口08:52→09:25大洗神社前→徒歩すぐ→大洗磯前神社(☆大洗町)→徒歩すぐ→大洗神社前09:47→10:00本町南→徒歩0.3km→海鮮丸(☆ひたちなか市)→本町西11:06→11:53水戸駅北口12:08→13:12御前山→徒歩すぐ→道の駅かつら(☆城里町)→徒歩すぐ→那珂川大橋(☆常陸大宮市)→御前山14:41→15:25茨大前→タクシー4.3km→清水洞の上公園(☆那珂市)→タクシー7.6km→偕楽園

大洗磯前神社の後、ひたちなか市の海鮮丸で食事して、水戸市内に戻ると、御前山へ往復するバスには間に合います。その帰りのバスで、タクシーを捕まえやすそうな茨城大学近くで降りて、那珂市へ向かってしおりをめくり、清水洞の上公園を発見して到達。折り返して偕楽園までタクシーを飛ばせば、17時にゴールできるかもしれません。これで2日目5陣となり、計9陣で引き分けに持ち込めます。

が、これは陣の位置を知っているからできる乗り継ぎとも言えそうで、現実にこんな上手に乗り継げるのかといえば、難しいでしょう。ひたちなか市の陣を取れば、那珂市の陣か、城里町・常陸大宮市の両陣のどちらかを落としていた可能性が高そうです。

要するに、太川チームが鉾田市で手こずって水戸以北に進出してこなくても、河合チームの2日目は4陣が限度ではないか、ということです。つまり、合計8陣が最大限とみてよさそうで、最終的に太川チームの9陣に及ぶのは困難だったのではないでしょうか。

広告

龍ケ崎ルートが有利だった?

ここまで検証してみたところ、今回は、最初にジャンケンで勝って龍ケ崎市方面へ進んだ太川チームが有利だったように思えます。龍ケ崎市、稲敷市、美浦村あたりの陣を無理なく獲得しつつ、土浦以北で先手を取れるからです。

では、それを見越して、河合チームが徹底して先手を取ることにこだわって、土浦へ急いだらどうなっていたでしょうか。

▽1日目
取手駅西口09:30→09:55稲豊橋→徒歩1.1km→間宮林蔵記念館(☆つくばみらい市)→タクシー15km、5,510円→谷田部車庫10:50→11:35土浦駅西口→タクシー2.8km、1,460円→霞ヶ浦総合公園(☆土浦市)→タクシー2.8km、1,460円→土浦駅西口12:40→13:30石岡駅

このように、つくばみらい市と土浦市の陣を押さえた上で、石岡駅に13時すぎに到着できます。ただ、石岡市の陣は夜型の店舗のため、オープンは夕方。小美玉市の空港公園は時間は関係ありませんが、鉾田市のファーマーズマーケットなだろうは17時半までなので、間に合わない可能性が高いでしょう。

つまり、無理に土浦市で先手を取っても、石岡市以北の店舗の営業時間に苦しめられ、効率的に陣を取ることは難しかったのではないか、ということです。石岡市から北は、市町村域が大きく、効率的に回りにくいこともあり、アクロバティックに先を急いでもうまくいきません。

活路はあったが

結局のところ、今回のお題は、1日目の土浦までに、どれだけの陣を押さえながら先を急げるかがポイントになっていました。

その点、太川チームは龍ケ崎市近辺などで、無駄なく乗り継いで4陣を押さえた上で、江戸崎でのタクシー使用や、阿見スルーなど、思い切った決断が光り、早い時間に土浦に到達できました。龍ケ崎ルートが有利だったとはいえ、ルイルイの優れた乗り継ぎ技術があっての早着といえます。

河合チームも、常総市の陣(きぬの湯)をスムーズに取ることができれば、4陣を押さえた上で、太川チームとほぼ同じ時刻に土浦駅に到着することができたはずでした。しかし、守谷市の陣(ミルク工房)から水海道駅に直行してしまったためその可能性が潰えました。

それでも、常総市の陣を捨てて水海道駅からみどりの駅にタクシーで進んでいれば、まだ勝負はわからなかったのですが、きぬの湯に戻ってしまったことで、致命的な後手を踏んでしまったわけです。最終的には、水海道での後戻りが、勝敗を決したということです。

つまるところ、河合チームの敗因は常総市付近でのもたつきと言わざるを得ません。1日目の午後に勝負はついていたのです。

広告

活動時間制限はフェア

番組全体の仕上がりを振り返ってみると、両チームともメンバーのチームワークが良く、穏やかに見ていられる回でした。太川チームはAmiと田渕がよく気配りして盛り上げました。河合チームは、男ばかりなのに華やかで、ジャニーズタレントの存在感を再認識させてくれました。

初日に20時までの活動に制限したことは、新型コロナの影響による措置のようですが、行動時間をフェアにするという点でも機能したように感じられます。タレントやスタッフの労働環境の改善にもつながりますし、今後も継続していいのではないか、と思います。

一方、車内での聞き込み禁止というルールは、ロケ隊を起点としたクラスターの発生を避ける意味があったのでしょうが、番組を盛り上げるという点ではマイナスに働いたと思われます。今回は、全体的にわかりやすい位置に陣が配置されていましたが、こうした「聞き込み制限」を考慮したからかもしれません。

とまれ、今回は、ルイルイが熟練の乗り継ぎ技術を見せつけて、圧勝しました。通算成績は太川チームの3勝1敗と差が開いています。次回の河合チームには、ぜひ名参謀でも配していただいて、リベンジを期待したいところです。(鎌倉淳)

広告
1
2
前の記事西武園ゆうえんちリニューアルの全詳細。5/19オープン、としまえんの遊具も移設
次の記事西武鉄道が全線フリーきっぷを限定発売。訪日客向けパスを日本人にも解禁!