山形新幹線「板谷峠トンネル」は実現するか。1500億円で時短10分

奥羽新幹線の突破口に

山形新幹線の「板谷峠トンネル」構想で、JR東日本が費用と時間短縮の試算をまとめました。総工費は1,500億円で、10分の短縮が可能とのこと。費用対効果が高いとはいえませんが、実現への道のりは見えるでしょうか。

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山形新幹線最大の難所

板谷峠は、山形新幹線(奥羽本線)の福島~米沢間にある分水嶺です。山形新幹線の最大の難所で、豪雨や大雨に見舞われた際に運行障害が起こりやすい場所として知られています。実際、年間約200回の遅延・運休が生じているそうです。

このため、JR東日本では、同区間での防災施策として、奥羽本線の庭坂~米沢間にトンネルを掘る構想を立て、地質調査や測量を行っていました。

その調査結果がこのほど明らかになり、新たに板谷峠にトンネルを建設する場合、事業費は1,500億円と試算されました。これはミニ新幹線(在来線)規格のトンネルで、フル規格新幹線対応の大口径トンネルにした場合は、さらに120億円がかかるということです。

工期はおよそ15年で、仮にトンネル化が実現した場合、山形新幹線の運行安定性が向上するほか、東京~山形間がおよそ10分強短縮できます。

山形新幹線

奥羽新幹線構想と関わる

「板谷峠トンネル」は、現時点では調査段階で、事業化は決まっていません。山形県は山形新幹線のフル規格化として奥羽新幹線構想を推進しており、板谷峠トンネルは、その関わりでも検討されているようです。

建設する場合、JR東日本の費用負担は一部にとどまり、大半を地元自治体や国が担うことになるでしょう。しかし、国や地元が費用負担をするには、費用対効果が高いことを証明しなければならず、そのハードルは高そうです。

福島~米沢間は、現在、山形新幹線で30分以上かかっています。これが10分短縮できるなら、所要時間を3割程度削減できるので時短効果は高いといえます。

ただ、東京~山形という距離で考えると、約2時間40分の所要時間が10分程度短縮されるだけなので、たいして変わらないともいえます。

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フル規格化の突破口に

私見ですが、もし板谷峠トンネルを作るならば、奥羽新幹線計画の事業化のメドが立っていない段階でも、山形県はフル規格サイズにこだわるでしょう。

というのも、最初にフル規格のトンネルを作ってしまえば、それをテコにフル規格新幹線を建設しやすくなるためです。最近の整備新幹線の多くが「スーパー特急方式」から格上げする形でフル規格化を成し遂げてきましたが、それと似た形です。

歴史を振り返れば、整備新幹線建設に、小さな既成事実を積み重ねていく手法は有効です。そう考えると、ハードルは高いものの、板谷峠トンネルは奥羽新幹線建設の突破口になる可能性があります。となると、山形県は、なんとしても実現を目指すことでしょう。

実現した場合、福島~米沢間の在来線の存廃が検討されると思われます。そうした犠牲を払っても、巨費を投じて奥羽山脈にトンネルを掘る価値があるのか、しっかり検討して欲しいところです。

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