北陸鉄道石川線のLRT、BRT化は実現するか。金沢市が検討へ

中長期的な課題に

金沢市で新しい交通システムを導入する議論が進んでいます。LRTやBRTの導入を中長期的な課題と位置づけ、北陸鉄道石川線とあわせて議論していく方向です。

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中間とりまとめ公表

石川県金沢市が設置した「新しい交通システム導入検討委員会」は、2021年8月6日に「公共交通の持続可能性確保に関する有識者意見」の中間とりまとめを公表しました。「短期的・早期に検討すべき施策について」という副題が付けられており、金沢市内の公共交通の短期的な施策についてまとめています。

提案された施策はいくつかありますが、大きなトピックとしては、バスレーンを日中時間帯まで拡大することでしょうか。タクシーベイやトラックの荷さばきに影響が出ることから、タクシーの配車システムの整備や、裏通りでの荷さばきスペースの確保も、あわせて検討課題とされました。

金沢バスレーン
画像:「公共交通の持続可能性確保に関する有識者意見」の中間とりまとめ

連節バス投入

もう一つの注目点は、連節バスの投入でしょう。構想されているBRTとは別で、当面の運転手不足対策として、運転手1人あたりの輸送力向上を目的とするものです。利用者数や運行本数が多い路線において連節バスの走行実験をおこない、順次導入を検討します。

また、利用者の運賃支払いの利便性向上として、キャッシュレス化も推進します。鉄道とバスの乗り継ぎ割引や、パークアンドライドによる運賃割引の検討も提言。あわせて、パークアンドライドの拡充も盛り込まれました。

これらの施策は、おおむね2027年度頃までの期間設定となっています。そのため早ければ数年後に、バスレーン拡充や連節バスの試験運行が始まるかもしれません。

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LRT、BRTは先送り

注目されていたLRT、BRT導入については、「中長期的な施策」として、結論は先送りされました。

LRT、BRTについては、「金沢市LRT/BRT計画の詳細。北陸鉄道の維持策も議論へ」という記事で詳細を記しています。簡単にいえば、金沢市内の南北軸(金沢港~有松)間にLRTまたはBRTを導入するという計画です。どの機種を選定するかが、「新しい交通システム導入検討委員会」の大きな議題とされてきました。

ただ、5月の会合で「新しい交通システムと北陸鉄道石川線の需要拡大策は、中長期的な施策として一体的に検討する」という方向性が示されました。一方で、「短期的な視点で金沢市の公共交通の持続可能性を確保するための取組を早急に検討する」という方針も示されました。

要は、公共交通について当面の課題と中長期的な課題を切り分け、LRT、BRTの検討については中長期的な課題とされたのです。これにより、LRT、BRTの機種選定は、今回の中間とりまとめから除外されることになりました。

石川線について検討

背景として新型コロナウイルス感染症などによる社会情勢の変化があります。北陸鉄道の収支が悪化し、同社が上下分離などの救済策を求めていることから、北陸鉄道の路線を含めて公共交通を議論する必要が出てきました。

このため、短期的な施策として数年で実現できるものとは分離して、LRT、BRTについては中長期的な課題として検討することになったわけです。

北陸鉄道の2路線のうち、委員会で検討対象になっているのは石川線(野町~鶴来)です。構想されているLRT、BRTとは、野町駅で接続する予定でした。これをLRT・BRT計画にどう取り込むかが課題となります。

ただ、石川線は金沢市外も走りますので、その将来像を議論するのであれば、周辺自治体との協議も必要です。今回のとりまとめでは、「関係市町で、石川線の需要拡大策を検討」したうえで、計画を策定するとしています。

第2回 金沢市新しい交通システム 導入検討委員会 資料
画像:第2回金沢市新しい交通システム導入検討委員会 資料
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車両基地を活用

注目点として、第2回会合の資料を読むと、「北陸鉄道石川線の車両基地の活用」と記されています。

当初の議論では、金沢市内にLRTを作る場合、金沢駅以北に車庫を設ける必要があるため、金沢駅以南の中心市街地だけでの部分開業ができないという課題がありました。

しかし、石川線の車両基地を活用できれば、LRTの野町~金沢駅間での部分開業も可能で、この課題を解決できそうです。

LRT、BRTどちらの場合でも、石川線の車庫を活用することで、車庫設置費用の削減も図れるでしょう。となると、石川線を含めて議論するならば、LRT、BRTを金沢市内だけで完結するのは望ましくなく、石川線へ乗り入れさせるほうが合理的です。「先送り」の背景には、こうした判断もありそうです。

北陸鉄道石川線

転機になるか

委員会の資料によると、北陸鉄道石川線を上下分離して、LRT、BRT化する場合には、石川線のホーム低床化・改良、行き違い施設の設置、車両基地の設置・拡充、北陸本線との関係性の検討などが必要です。これらを含めた技術的な検討をする場合、相当な時間を要します。

金沢市内のLRT、BRT導入に関しても、交通への影響、道路構造の変更、除雪対応、導入車両の環境、景観への対応、路線再編、乗換拠点やパーク・アンド・ライドの整備、概算事業費、費用対効果など、さまざまな観点で検討する必要があります。

委員会では、今後の会合で、こうした要素を比較衡量して、LRT、BRTの総合評価をする方針です。

浅野川線については触れられておらず、この委員会の議論では対象外のようです。

議論の先行きは見通せませんが、石川線をLRTまたはBRT計画に含めるのであれば、金沢市周辺の公共交通の、一つの大きな転機になる可能性はありそうです。(鎌倉淳)

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