星野リゾートが、大阪市浪速区のJR新今宮駅前にホテルを建設すると発表しました。新ホテルは「ビジネスホテルよりのやや上」という新ブランド。大阪でもディープなエリアといわれる新今宮で、星野リゾートという高級ブランドホテルが成功するのでしょうか。
星野リゾート2番目の規模
星野リゾートが新設するホテルはJR大阪環状線・新今宮駅前に立地します。客室数は608室で、同社の施設としては「星野リゾートトマム」に次ぐ2番目の規模です。
客室の広さは30平方メートルからとなり、ビジネスホテルよりは広めながら、高級ホテルには及ばない「準高級ホテル」。星野リゾートの直営で、「星のや」、「界」、「リゾナーレ」に次いで4つ目のブランドになる予定です。
敷地は面積約1万4000平方メートルで、子会社を通じて大阪市より取得しました。ホテルは20階建てとなり、レストランやカフェも併設されます。敷地内には「みやぐりん(仮称)」という緑地が配置され、駅ホームと同じ高さに広場が整備されます。新ホテルの登場で、新今宮駅前の雰囲気は大きく変わるでしょう。
アクセスは抜群
大阪の新今宮駅周辺は労働者の街の横顔があり、簡易宿泊所は多数あるものの、リゾートホテルとは無縁の土地でした。そこへ星野リゾートが乗り込んでくることは、大きなチャレンジにみえます。しかも600室という客室数には驚かされます。
観光的には、新今宮周辺は大阪独特の文化が残り、街歩きをするとなかなか興味深いエリアです。通天閣やジャンジャン横丁といった観光地にも近いうえ、関西空港からは南海電車1本でアクセス可能というメリットがあります。
JRを使えば大阪駅や奈良方面へも乗り換えなしで訪れることができますし、動物園前駅から地下鉄御堂筋線や堺筋線を使えば、心斎橋も日本橋もすぐです。外国人観光客の視点で見ると、新今宮は便利な場所でしょう。
旅行者の街に
実際、新今宮周辺の簡易宿泊所には、いまや外国人バックパッカーが多数訪れ、旅行者の街の横顔を持つようになりました。星野リゾートの進出が、こうした変化の延長線上にあるとすれば、成功する可能性は高そうです。
治安が悪いという人もいますが、実際に訪れてみると、どうということはありません。旅行者が普通に旅行するぶんには何の問題もない場所で、世界を旅しているツーリストからみれば、十分に平和な街でしょう。
課題があるとすれば、日本人旅行者の集客かもしれません。日本人からすれば、大阪で便利な場所といえば、梅田か難波エリアという先入観があります。新大阪駅からやや離れた新今宮エリアは、新幹線沿線からのアクセス面で有利とはいえません。
大阪ならではの体験を
日本経済新聞4月25日付によりますと、星野代表は、新今宮周辺について、「(ビジネス街の)梅田に泊まるより、大阪にいるんだと自覚できるディープな空間。どこの店に行っても大阪弁で話しかけてくる人情味にあふれた人が多く、大阪ならではの体験ができる」と語ったそうです。
実際、新今宮から天王寺にかけてのエリアは、大阪でもっとも面白い場所のひとつでしょう。星野リゾートの進出で、このエリアが観光拠点として、もっと注目され発展することを願いたいところです。(鎌倉淳)