北神急行電鉄が神戸市営地下鉄に編入されることになりました。三宮~谷上間の運賃は半額になり、神戸市北部から市中心部へのアクセスがしやすくなります。
六甲山を貫く私鉄
北神急行は、谷上~新神戸間約7.5kmを8分で結ぶ私鉄です。神戸市中心部と六甲山北側のニュータウンとを直結する新線として建設され、1988年に開業しました。
ほぼ全区間が六甲山を貫くトンネルのため、建設費がかさみ、運賃も高額に設定されています。現在の初乗り運賃は360円と高く、神戸市営地下鉄の初乗りが加算される谷上~三宮間では540円にも達します。このため、利用者数が伸び悩んでいました。
神戸市と兵庫県は、これまでも北神急行への財政支援などを通じて、運賃抑制を図ってきましたが、抜本的な解決策として、神戸市が北神急行の「神戸市営化」を提案。北神急行を神戸市が購入することで、市営地下鉄と一体運営して運賃を値下げし、利用者増を図ることとしたのです。
阪急電鉄と合意
北神急行電鉄の筆頭株主は阪急電鉄です。神戸市は2018年末より、阪急電鉄と協議を開始。このほど合意に達しました。神戸市の発表によりますと、簿価で約400億円の北神急行線の資産を、神戸市が198億円で譲り受けます。
一方、阪急阪神ホールディングスは、簿価との差額約190億円を減損損失として2019年3月期決算で計上します。
今後、谷上~新神戸間は、神戸市営地下鉄と一体化して運営されます。事実上、北神急行が市営地下鉄に編入されることになるわけです。市営化は遅くとも2020年10月までに実施され、運賃は約半額の280円になる見込みです。
神戸市バスより高額
神戸市は人口減少に直面していて、とくに神戸市北区の人口は2011年から8年連続で減少しています。北神急行の市営化により北区を「地下鉄沿線」とすることで、利便性を向上させ、人口減少を食い止めようとする狙いがあります。
現在の谷上~三宮間の運賃は540円ですが、三宮から西へJRで向かうと明石までが390円(21.9km)、市営地下鉄の終点・西神中央までが400円(21.9km)ですから、それと比較すれば、非常に高額なことがわかります。
また、神戸電鉄の谷上の隣駅の箕谷からは、三宮まで64系統の神戸市バスがあり、運賃は440円。それと比べても北神急行の運賃は高く、利用が伸び悩む原因となっていました。
定期券で値下げ効果大
定期券の比較ではさらに顕著で、現状の谷上~三宮間の通学定期(大学)は6か月7万3290円。通勤定期なら11万9080円に達します。
定期券の割引率が高いJRでは、三ノ宮~姫路間(57.3km)の通学定期が6か月7万4180円、通勤定期が6か月13万9970円です。つまり、現状では、姫路から三宮に通うのも、谷上から三ノ宮に通うのも、金額的には大差ありません。
2020年に、谷上~三宮間の運賃が280円になれば、市営地下鉄の運賃表では三宮~板宿間と同水準になります。同区間では定期券が通学(大学)6か月3万4670円、通勤5万6330円ですので(消費税増税除く)、家計への負担は非常に軽くなるでしょう。
64系統のバス定期は通勤定期6カ月8万3590円、通勤9万7520円ですので、それに比べても格安になります。
利用者増見込む
もともと、速さには定評のある路線です。高い運賃だけがネックでしたので、それが解消されれば、利用者が増えるのは間違いないでしょう。
谷上~新神戸間の1日利用者数は、現在、約2万5000人。神戸市では、運賃値下げにより、初年度で6,000人程度の利用者増を見込んでいますが、あながち皮算用ではなさそうです。(鎌倉淳)