北陸新幹線の新大阪延伸ルートがなかなか決まりません。決定したとして、いつ開業できるかも不透明な状況になっており、「敦賀終点」が、事実上、定着する可能性もありそうです。
年内決定難しく
北陸新幹線の敦賀~新大阪までの延伸について、与党のプロジェクトチームは、福井県小浜市を通って京都駅に南下する「小浜・京都ルート」で建設する方針を決めていて、2025年度の着工を目指しています。
小浜・京都ルートの工期は25年~28年。物価上昇を見込んだ建設費は約5兆円です。ルートの概略は固まっていますが、京都市内のルートは決定しておらず、京都駅の位置を含む3つのルート案から、一つを選定する方針です。
与党プロジェクトチームの委員会は、2024年12月18日に会合を開きましたが、結論を得ることができず、近く改めて議論することになりました。しかし、目標としてきた年内の決定は難しい情勢です。
沿線自治体から強い懸念
結論を出せなかった背景として、12月13日におこなわれた沿線自治体へのヒアリング調査があります。とくに、当事者である京都府市から、工事に対する強い懸念が示され、委員会としても、慎重な判断を迫られました。
京都府市から示された主な懸念をまとめると、以下になります。
・京都丹波国定公園への影響
・建設発生土の処分(要対策土が30%)
・地下水への影響
・京都駅工事期間中の交通渋滞
・文化、歴史的建造物への影響
・車両基地の治水
・財政負担
内容的には、すでに指摘されてきたことであり、目新しいものはありません。それだけに解決が難しい問題を含んでいるといえます。
市民の反発も
北陸新幹線の延伸区間はほとんどがトンネルで、掘削して出てくる土の3割が要対策土ということであれば、その土をどこで処分するかは、それだけで重い課題です。
また、歴史的建造物の地下にトンネルを掘るのであれば、宗教界から反対運動が出てきてもおかしくはありません。さらに、京都市内の地下水の問題が、酒造組合から提起されているのは、よく知られている話でしょう。
京都駅に地下駅を作るのであれば、駅周辺の道路の一部を掘削する大規模な工事が、長期にわたって続きます。京都駅の工期は、短くても20年。そうでなくても混んでいる京都駅周辺で、20年も工事がおこなわれるとなれば、市民の反発も強いでしょう。
財政負担に関しては、金額によっては、「なぜ京都府民が負担するのか」という大きな反対論が沸き上がりかねません。
いずれも、きちんと対処すれば解決が可能な話にもみえますが、対応を誤ると、泥沼化しそうな問題が含まれています。
敦賀終点が定着?
与党は早期着工にこだわっていますが、当面実現できたとしても、すぐに本格着工するのは予算的に難しく、形式的なものにとどまるでしょう。
そして着工に至ったとしても、地元で反対論が高まれば、事業の遂行は困難です。府市のどちらかで反対を掲げる首長が当選すれば、行き詰まりかねません。
北陸新幹線の新大阪延伸については、米原ルートにも課題が多く、誰もが納得する名案は見当たりません。
延伸の必要性が高いのはいうまでもありませんが、状況によっては、未成線のまま、敦賀終点が定着する可能性も出ているのではないでしょうか。(鎌倉淳)