北海道新幹線の並行在来線に該当する函館線長万部~小樽間について、想定している本数で代替バスを運行することが、運転手不足により困難となっていることがわかりました。北海道新聞が報じました。
自治体で合意したが
北海道新幹線は新函館北斗~札幌間が建設中で、開業にあわせて並行在来線がJRから切り離されます。該当するのは函館~長万部~小樽間で、このうち長万部~小樽間140.2kmは、鉄道を廃止しバス転換することで、沿線自治体が合意しています。
合意では、バスの運転本数は「鉄道並み」が想定されていました。鉄道並みの運行本数で利便性を確保することを前提として、沿線自治体がバス転換に合意しています。
とはいえ、近年のバス運転手不足は深刻で、合計100km以上に及ぶ長大バス路線を、バス事業者が鉄道並みの運行本数で担えるのかは不透明でした。
「1便新設するのも難しい」
この問題について、北海道新聞2023年10月28日付けは「並行在来線JR函館線長万部―小樽間について、代替バスを運行予定の北海道中央バス(小樽)など3社が、道が示したダイヤ案に沿った本数の運行は困難と道に伝えたことが分かった」と報じました。
同紙によると、現時点で実際に運行を見込める本数は、北海道が想定ダイヤで示した81本を「大きく下回っている」とのこと。さらに、道南バスは北海道新聞の取材に対し、「運転手不足から現状の路線を維持するのが精いっぱいで、1便新設するのも難しい」と説明したそうです。
想定の範囲内だが
最近のバス運転手不足の深刻さを鑑みれば、記事内容は想定の範囲内の話といえます。
並行在来線の問題を話し合う北海道新幹線並行在来線対策協議会での議論でも、バスの運転手不足への懸念は示されていました。
にもかかわらず、「既存のバス事業者が運行する」という前提でバス転換を決めてしまい、結果として、「バス転換を決めたけれど、バス転換できない」状況に陥りかけています。
北海道新聞によると、道交通企画課は「3社によるバス運行以外の代替交通機関の確保策を含め対応を急ぐ構え」とのこと。マイルドな記述ですが、既存バス事業者による定期路線バスへの転換が不可能であることを、道が認めたことになります。
ブロック会議で説明か
北海道新幹線並行在来線対策協議会(後志ブロック会議)のスケジュールによると、2023年6月から7月にかけて、道がバス会社に運行協力を要請し、9月にかけて協議しています。
その結果を受けたブロック会議が10月から11月にかけて予定されていて、北海道新聞の今回の報道は、ブロック会議に向けて用意された資料などを基にしたものでしょう。
つまり、この問題は、近く開かれるブロック会議で説明されるとみられます。
鉄道維持も厳しく
路線バス以外の代替交通機関として挙げられるのは、乗合タクシーやデマンドバスなどでしょう。とはいえ、タクシー運転手の不足も深刻化しており、多くは期待できません。
一方で、いまさら鉄道維持に戻るのも容易な話ではありません。営業赤字が多く見込まれるうえに、函館線は設備の老朽化が進んでいて、更新に莫大な費用がかかるためです。
幸か不幸か、北海道新幹線延伸工事は遅れていて、開業は2030年代半ばごろにずれ込みそうです。そのころの人口動態や観光需要を見極めながら、代替交通について再検討することになるのでしょう。
函館~長万部間にも影響
長万部~小樽間のバス転換計画の不調は、まだ扱いが正式に決まっていない函館~長万部間にも影響を及ぼしそうです。この区間では、沿線自治体が旅客列車の維持を求めないことで合意していますが、貨物需要があるため、鉄道じたいは維持する方向になっています。
ただ、地元バス会社の函館バスも運転手不足が伝えられていて、代替バスを担うほどの余力があるのか不透明です。となると、旅客のみのバス転換も実現性が問われます。
現実問題として、バス代替をするのであれば、人材も含めて沿線自治体が確保しなければならない時代になりつつあるようです。(鎌倉淳)