北海道新幹線の建設費、1kmあたり100億円超へ。 事業費上振れで高額に

新規建設に影響も

北海道新幹線の札幌延伸工事の事業費が、大きく上振れそうです。1kmあたり100億円を超える見通しで、今後の新幹線建設計画にも影響を及ぼしそうです。

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北海道新幹線有識者会議

国土交通省は、2022年11月17日に「北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)の整備に関する有識者会議」の第3回会合を開催しました。

この会議は、北海道新幹線札幌延伸工事について、事業費の精査やコスト削減策について話し合うのが目的です。着工から10年が経過し、当初見積もりより資材価格が高騰しているほか、トンネル掘削後の残土処理や、東日本大震災後の新基準に適合するための耐震工事も必要となっていて、事業費の上振れが避けられない状況です。

会議は非公開でしたが、北海道新聞によると、国交省は事業費が当初試算の1兆6700億円から、現時点で6000億円以上も上振れする試算をまとめたとのことです。

ただ、会議後の記者説明で、国交省は試算額について「まだ固まったものではない」として、明らかにしませんでした。

H5系北海道新幹線

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総事業費2兆2700億円

公共工事で事業費が上振れることは珍しくありません。とくに、事業期間が10年を超えるような大工事では、予期せぬことが起きたり、資材の高騰が生じるのは避けられませんので、当初試算より総事業費が高くなること自体は、想定の範囲内の話といえます。

とはいえ、総事業費が当初試算より6000億円、約35%も上がるとなれば、予算の手当が容易でなく、大きな問題になります。

上振れにより、北海道新幹線札幌延伸の総事業費は2兆2700億円に達します。新函館北斗~札幌間の距離は約212kmですから、1kmあたり107億円という計算です。これまでの試算では1kmあたり約78億円でしたが、これを大きく上回ります。

ちなみに、2022年9月に開業した西九州新幹線の武雄温泉~長崎間の事業費は約6197億円で、1kmあたり94億円。北陸新幹線の金沢~敦賀間は、2020年の11月の事業見直しで総額1兆7000億円となり、1kmあたり148億円です。

北海道新幹線札幌延伸のキロあたり事業費は、西九州新幹線の武雄温泉~長崎間より高く、北陸新幹線の敦賀延伸よりは安いということになります。

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今後の上振れも

ただ、北海道新幹線は、開業まであと8年近くもあります。今後、さらなる事業費の上振れが生じる可能性は小さくありません。

この日の会合でも、この点を指摘されたようです。北海道新聞によれば、会議の席上で、国交省が事業費の上振れの要因として、トンネル工事の残土処理や、地質が弱い場所の補強などを挙げたところ、有識者から「それで全部か」との指摘があり、さらに検討することになったそうです。

北陸新幹線敦賀延伸の場合、総事業費は当初見積もりより約43%増となりました。北海道新幹線の工期が北陸新幹線より長いことを踏まえると、最終的に35%増で収まるかというと疑問で、さらなる上振れが生じても不思議ではありません。

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新路線に影響

それでも、北海道新幹線の札幌延伸が実現することに疑いはありません。問題となるのは、今後の新幹線整備計画でしょう。建設単価がこれだけ高くなると、新たな新幹線を建設する際の見積もりが厳しくなるのは避けられません。

たとえば、2014年に公表された「四国における鉄道の抜本的高速化に関する基礎調査」では、四国新幹線302kmの建設費を1兆5300億円と見積もり、費用便益比を1.03としました。このキロ当たり建設費は50億円にすぎません。

現実には、2倍以上の建設費がかかっているわけです。となると、四国新幹線の総事業費は3兆円を超える可能性があります。これだけの事業費がかかるのであれば、四国新幹線を今の構想通りに実現するのは難しく、練り直しが必要になりそうです。(鎌倉淳)

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