肥薩線はよみがえるか。復旧費235億円、「持続性」も議論に

議論は前向き

2020年7月の豪雨で被災した肥薩線の復旧費用が概算で235億円にのぼることが明らかになりました。ローカル線の復旧費用としては巨額ですが、肥薩線はよみがえるのでしょうか。

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橋梁をかさ上げ

JR九州の肥薩線は、2020年7月豪雨で大きな被害を受け、八代~吉松間86.8kmが不通となっています。JR九州はその復旧費用を初めて見積もり、概算で235億円と発表しました。

肥薩線は、球磨川にかかる2つの橋梁を流出するなど450か所を被災しました。JR九州は復旧に際し、2021年12月に変更された球磨川の「河川整備基本方針」に基づく災害時の最高水位を前提として、橋梁をかさ上げする方針を示しました。

具体的には、球磨川第一橋梁は1.1mかさ上げし、接続するトンネルを改修します。この費用が64億円です。第二球磨川橋梁は2.5mかさ上げし、川幅を広げる河川改修に対応するため、橋梁を100m延長します。この費用が61億円です。

その他の線路や駅舎の修復に110億円が必要で、合計で235億円にのぼると見積もりました。

肥薩線橋梁かさ上げイメージ
肥薩線橋梁かさ上げイメージ。画像:JR九州

JR九州の負担をいかに軽くするか

肥薩線の被害は甚大で、「新線を作り直すのに匹敵する費用がかかる」とも表現されていました。そのため、復旧費用が235億円と聞いても驚きは小さく、想定の範囲内の金額といえるでしょう。

たた、絶対額として235億円は大きく、JR九州が単独で負担できる金額とは言いがたいのも確かです。

不通区間の2019年度の輸送密度は、八代~人吉間が414、人吉~吉松間が106にとどまり、営業赤字は合計で約9億円にのぼります。利用者が少ない赤字区間のために、企業が復旧に巨費を投じる理由もないため、JR九州の負担をいかに軽くして復旧するかが、今後の議論になります。

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河川対策工事と一体で

被災した鉄道の復旧への助成制度としては改正鉄道軌道整備法がありますが、国と地方自治体の補助率は4分の1ずつで、復旧費用の半分をJRが負担しなければなりません。これを丸ごと適用すると、JR九州が100億円以上を負担することになり、赤字ローカル線に投じる金額として現実的ではありません。

3月22日に開かれた「肥薩線復旧検討会議」の初会合では、国交省側が、流失した2本の鉄橋を河川対策工事と一体で再建することでJR九州の負担を軽減する案を提示しました。

仮に両橋梁の復旧を公共事業として扱い、復旧費125億円を公費負担とすれば、JR九州は鉄道施設復旧費用である110億円の半額を負担すればよく、55億円となります。しかし、これでもJRの負担額としては重く、さらなる負担削減策が検討されそうです。

肥薩線

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「どういう方向性か悩む」

記者会見したJR九州の青柳俊彦社長は、「これほど多くの金額を見ると、どういう方向性に持って行くべきか悩む。国や熊本県の力を借りながら検討を進めていきたい」と述べ、鉄道を維持する場合は国や県の協力が不可欠との認識を示しました。

さらに、「ちゃんと維持できるような線区にならないといけない。赤字はJRだけがなんとかすればいいということでは立ちゆかなくなっている」とも付け加え、復旧費用だけでなく、運行再開後の支援も求める姿勢を示しました。

いまのところ、肥薩線復旧会議においてバス転換の議論はなく、鉄道での復旧が前提になっているようです。JR九州は「持続可能な運行に向けた整理」も要望しており、運行費用の負担についても議論される見通しです。

しかし、運行費用の支援、すなわち赤字補填については国の助成制度が存在しないため、その枠組みを固めるのは難しい議論になりそうです。年間9億円もの赤字を毎年自治体が補填するとなると、地元に相当の覚悟が必要です。

全ての話がまとまったとしても、橋梁を作り直すとなれば相応の年月がかかり、肥薩線全線がよみがえるのは、早くても2020年代後半になるでしょう。それでも前向きな議論になっていることは何よりです。(鎌倉淳)

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