JR西日本が、芸備線の備中神代~備後庄原間について、「再構築協議会」の設置を国に要請しました。この区間は、将来的な廃止も含めた検討が始まることになります。
一方、備後庄原~三次間は対象区間に含まれず、当面の存続が確実になりました。
ローカル線の「あり方」を話し合う
「再構築協議会」は、ローカル線の存廃を含めた「あり方」につて、鉄道事業者と沿線自治体など関係者が話し合う場です。鉄道事業者または地方自治体の要請に基づいて国が設置するもので、2023年10月1日施行の改正地域公共交通活性化再生法に基づいて法定化されました。
初めての事例となったのが、岡山県と広島県を結ぶJR芸備線です。JR西日本は、芸備線の備中神代~備後庄原間68.5kmについて、同法に基づく再構築協議会の設置を国に要請しました。
再構築協議会の設置の可否は国土交通大臣が判断し、設置する場合、自治体は協議を拒否できません。今回の要請を国土交通大臣が却下する可能性は低く、備中神代~備後庄原間の「あり方」について、JRと自治体が協議に入るのが確実となりました。
輸送密度「20」の区間も
当該区間の2022年度の輸送密度は、備中神代~東城間が89、東城~備後落合間が20、備後落合~備後庄原間が75です。芸備線のなかでも特に輸送密度が低い区間で、ふた桁にとどまります。
再構築協議会の結論については見通せませんが、これだけ利用者が少ないと、現況のままというわけにはいきません。存続するなら高速化など相当な投資が必要で、地元自治体は一定の負担を求められます。
財政の苦しい自治体に、負担に応じられる余力があるのかと考えると、鉄道として存続しつづける展望は見出せません。
輸送密度「327」で存続
一方、同じ芸備線の備後庄原~三次間は、再構築協議会の対象に含まれませんでした。「あり方」を話し合うことはなく、当面の存続が確実になったといえます。
この区間の2022年度の輸送密度は327。対象区間に比べれば一桁多くなっています。
輸送密度だけが判断基準ではないにしろ、輸送密度300程度の区間が「対象外」となったことは、注目に値します。
越美北線、姫新線など
JR西日本では、輸送密度300台の区間として、越美北線・越前花堂~九頭竜湖間(318)、姫新線・上月~津山(386)、小野田線・小野田~居能など(371)があります。
芸備線の例にならうなら、これらの区間も、当面は「再構築」の対象にならない可能性が高まりました。
美祢線・厚狭~長門市間も371ですが、こちらは大雨による被害を受けて、不通の状況なので、復旧には多額の費用がかかります。そのため、運行中の路線と同列には語れませんが、すぐに切り捨てられる輸送密度でないことが明らかになったのは、救いでしょうか。
将来的には対象にも
とはいえ、今回、JRとしては、再構築協議会の最初の事例だけに、輸送密度が非常に低い区間に限って申請したと捉えることもできます。
今後、各地で協議が進むにつれて、輸送密度300前後の区間が対象にならないという保証はありません。
国土交通省は、再構築協議会の運用として、輸送密度1,000人未満の路線を優先する方針を掲げています。したがって、備後庄原~三次間などの区間も、いずれ協議対象になる可能性は十分にあるでしょう。(鎌倉淳)