芸備線新見~備後落合間、利用者ゼロの列車も。再構築協議会資料を読み解く

利用者ゼロの駅も

芸備線再構築協議会第1回会合の資料が公表されました。新見~備後落合間では、夜間で利用者ゼロの列車があることが明らかになりました。

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初の再構築協議会

JR芸備線は備中神代~広島間を結ぶローカル線です。その将来について話し合う再構築協議会の初会合が、2024年3月26日に開かれました。再構築協議会の開催は全国で初めてです。

再構築協議の対象は、利用者数がとくに少ない「特定区間」とされる備中神代~備後庄原間です。ただ、自治体側の希望もあり、備後庄原~広島間を含めて全線を議論することになりました。

3月26日の初会合では、JR西日本が資料を開示して、芸備線の状況を説明。同社広島支社長が「利用状況、利用促進などの取り組みとその結果を踏まえた議論」を求めました。

芸備線キハ120

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1列車に3~4人

開示された資料は多数ありますが、目を引くのは列車別の利用状況です。新見~備後庄原間で2018年4月に実施した乗り込み調査による、利用者数の実数が明らかにされました。

最少となったのは、備後落合を20時台に出発する上り列車で、備後落合~東城間は平日・休日とも0人。東城~新見間は平日1人、休日0人でした。全体として東城~備後落合間は終日利用者が少なく、おおむね3~4人の利用にとどまっています。最大でも休日の10人でした。

芸備線の列車別利用者数
画像:芸備線再構築協議会第1回会合資料

 
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駅別乗車人員

備中神代~備後庄原間の駅別乗車人員(2019年度)も開示されました。比較的多いのは、備後庄原の127人、備後西城の36人、野馳の26人です。

一方、道後山や備後八幡は0人。木次線と接続する「ターミナル」の備後落合も14人にとどまります。

全体的には1日数人の利用者数にとどまる駅が多くなっています。

芸備線駅別乗車人員
画像:芸備線再構築協議会第1回会合資料

 
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駅間輸送人員

協議対象となっている備中神代~備後庄原間の輸送密度(平均通過人員)は2019年度で48人。隣接する備後庄原~三次間は381人です。

公表された資料で詳しくみてみると、備中神代~三次間では、野馳、備後西城、備後庄原、塩町、八次で段差があります。

芸備線駅間輸送人員
画像:芸備線再構築協議会第1回会合資料

 

三次側から見ていくと、八次の段差は、三次~八次間に三次高校があるためでしょう。塩町方面からの通学者は八次駅を使い、三次方面からの通学者は三次駅を使うので、八次~三次間の利用者が少ないと思われます。

塩町の段差が大きいですが、福塩線との分岐駅であることのほか、三次青陵高校が駅近くにあることも理由でしょう。三次市内からの通学定期利用者がどっと降りている様子がうかがえます。

備後庄原で次に大きな段差があり、備後西城~野馳間は利用者がほとんどなく、野馳で小さな段差があり回復しています。

全体的に通学定期利用者が多いですが、利用者がほどんどない備後西城~野馳間では、定期利用者もほぼいないようです。

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備後庄原~広島

再構築協議対象区間外の、備後庄原~広島間の利用状況も開示されました。

輸送密度を広島を起点としてみてみると、二駅先の戸板までが1日1万人を超えています。8,000人を超えているのは安芸矢口までです。下深川までは輸送密度4,000人を維持していて、広島~下深川の平均で8,529人となっています。

芸備線駅間輸送人員
画像:芸備線再構築協議会第1回会合資料

 

広島から離れるにつれて輸送密度は低下していきますが、やや大きな段差となっているのは志和口です。その一つ先の井原市までが広島市内。広島市外の輸送密度は低調ですが、三次近辺で少し回復します。

西三次~三次間が544人、三次~八次間は390人。三次駅を境に利用状況が変わり、定期外利用者の割合が小さくなります。三次駅以東は、ほぼ通学専用路線といっていい状況です。

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通学客すら存在しない区間

芸備線全体の利用状況をみると、広島~下深川間を除き輸送密度4,000人以下で、国鉄時代なら廃止基準にあてはまります。鉄道の特性である大量輸送の効果を発揮できるのも、広島~下深川間のみか、広く解釈しても志和口まででしょう。

ただし、広島県北の拠点都市である三次までの区間は、都市間利用の需要があります。定期外利用者が比較的多いのは、それを示しています。今後、運転手不足を背景に高速バスの運行が減れば、鉄道利用者が増える可能性もあります。

一方、三次~備後西城間に関しては、通学輸送が主体のため、今後の少子化を考えれば、厳しさは増す一方でしょう。備後西条~野馳間に関しては、通学客すらほとんど存在しないため、誰のために列車を動かしているのかが見えません。

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青春18きっぷ利用者は?

気をつけなければならないのは、列車別の利用状況調査が4月中旬におこなわれている点です。新年度が始まってゴールデンウィークまでの間は、旅行者が少ないオフシーズンです。青春18きっぷの利用期間でもありません。

JRとしては、住民の利用状況を正確にはかるため、あえてオフシーズンに調査したと察せられます。ただ、芸備線は日常の利用者数が余りに少ないので、青春18きっぷ利用者の路線の収益に貢献する比重は、相対的に高いでしょう。それがどの程度なのかも気になります。

青春18きっぷは、期間限定とはいえ、年間126日使えます。1年の3分の1程度です。その期間に限れば、備後落合界隈も意外と混んでいたりします。

絶対数としては僅かな利用者数でしょうが、そうした「鉄道観光客」をどう見ているのか。JR西日本の資料からはうかがえません。(鎌倉淳)

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