福岡市と西鉄が連節バスによる「都心循環BRT」を導入へ。専用レーンがないのに、なぜ「BRT」なの?

福岡市と西日本鉄道は、連節バスを使った高速輸送システム(BRT)を導入すると発表しました。商業地の天神地区とJR博多駅周辺、国際会議場などが集まる博多港周辺の3拠点を循環運転し、「都心循環BRT」と名付けています。2016年度にバス2台によるテスト運行を開始し、2020年度の本格運行を目指します。

「BRT」とは「Bus Rapid Transit」の略で、バス高速輸送システムと訳されます。しかし、現時点の福岡BRT計画では、高速輸送を実現する方法への言及がほとんどありません。いったい、どこが「高速」なのでしょうか。不思議に思って調べてみました。

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停留所数を絞って高速運行

福岡市などが発表したプレスリリースによりますと、福岡市における「都心循環BRT」は、「連節バスの導入、シンボリックなバス停整備、鉄道や路線バスとの乗継強化などにより、従来のバスよりも、速く、時間どおりに、たくさんの人を運ぶ、分かりやすく使いやすいシステム」と定義されています。

具体的には、スウェーデン製の連節バス15台を導入し、都心部を両回りの循環ルートで運行します。ルートは博多駅~祇園町~呉服町~国際会議場サンパレス前~マリンメッセ前~博多港国際ターミナル~市民会館前~天神~渡辺通一丁目~住吉~博多駅で、簡単にいうと、博多駅、天神、博多港の3極を循環します。一般バスよりも停留所数を絞っており、それにより高速運行を実現する、ということのようです。

ただ、道路渋滞が起こりやすい大都市中心部において、バス停を絞ったくらいで高速運行できるの?と誰しも思うところでしょう。また、プレスリリースには、「速く、時間通りに運行します」とありますが、「時間通り」を担保する施策への記述は見当たりません。

福岡都心循環BRTルート

BRTとは何か?

そもそも、BRTとは何でしょうか。一般的に、BRTシステムは、以下ようなの施策を組み合わせたものとされます。

・専用レーンの設置。
・乗降時間を減らすため、車外で運賃を徴収。
・バスの床高とバス停プラットホームの高さを一致させ、乗降をスムーズにする。
・交差点などでバス車両優先システムの導入。

定時性の確保にもっとも重要なのは「専用レーン」の設置ですが、プレスリリースには触れられていません。各社報道によると、BRT専用レーンを新たに設置する計画は、検討されているものの、現時点では具体化していないようです。

バス車両優先システムについては、福岡市ではすでに導入されているようです。また、今回の連節バスは低床面ですので、床高とバス停の高さは一致しないまでも、近づくとみられます。つまり、一般にBRTシステムといわれる施策の一部は導入されるわけです。

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福岡市長は「BRTシステムがいわゆる連節バス」

とはいえ、定員の多いバスで運賃を車内徴収したら乗降に時間がかかりますし、一般レーンを走ったら、渋滞を避けることはできません。ということで、やっぱり現時点ではただの「連節バス」導入にしか見えません。

福岡市長の記者発表の会見動画を見てみると、市長は冒頭で「福岡市の都心部においてBRTのシステムを導入していきたいと考えています。いわゆる連節バスです」と発言しています。この発言を聞く限り、福岡市では「連節バス」=「BRTシステム」という解釈をしているようです。

福岡連節バス

国土交通省の補助金対象に

ところで、国土交通省では、「社会資本整備総合交付金」という補助金で、BRTに対する補助を行っています。国土交通省の資料を見ますと、BRTシステムについて「連節ノンステップバス及びそれと一体的に整備する停留所施設、公共車両優先システム(PTPS)車載機、ICカードシステム、バスロケーションシステム等」と例示していて、それらの事業に対しては、国が3分の1を補助するとしています。

推測ですが、福岡市と西鉄は、この補助金の適用を受けるのでしょう。福岡市の都心循環BRTは、こうした広い意味での「BRTシステム」として、位置づけられているのかもしれません。

西鉄のLRT計画

福岡市の過去の交通政策の経緯はどうでしょうか。2013年にまとめられた『福岡市都市交通基本計画』改訂版をみると、「都心拠点間の公共交通軸の形成と回遊性の向上」が掲げられていて、天神、博多駅と博多港相互の連携強化が課題のひとつに挙げられています。

これが「都心循環BRT」の出発点とみられますが、『基本計画』にBRTの文字はどこにもありませんし、高速輸送に力点を置いた記述もみられません。ひょっとすると、「都心循環BRT」は、補助金に関連して比較的最近に浮上してきた計画なのかもしれません。

一方で、福岡市にはLRTの計画がありました。2008年の朝日新聞の記事によると、西鉄が同年にまとめた経営方針に、「LRT(新型路面電車)導入の検討」が盛り込まれていたとのことのです。市内を循環する路線を検討していたようで、今回のBRTは、それが姿を変えた形ともいえそうです。

BRT補助金とLRT計画が融合?

ということで、福岡市と西鉄が「連節バス」を「BRTシステム」と表現する理由は、補助金の名称にくわえ、もともとあったLRT計画と融合したからではないか、というのが、筆者の推測です。また、目新しい名称による告知効果も狙っているのでしょう。

でも、この推測は間違っているかもしれません。もし正解をご存じの方がいらしたら、教えてください。

個人的な感想を申し上げれば、たんなる連節バスであるならば「BRT」という名称は使わない方がいいのではないか、と思います。みなさんはいかがでしょうか。

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