2024年3月ダイヤ改正「注目ポイント」ランキング【3】まさかの増発も

廃止直前なのに

2024年3月16日に実施される鉄道各社のダイヤ改正の概要が発表されました。注目ポイントをランキング形式でまとめています。

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2024年3月ダイヤ改正「注目ポイント」ランキング。鉄道各社を総まとめ

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2024年3月ダイヤ改正「注目ポイント」ランキング【2】

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21位 「東鹿越線」まさかの増発

根室線富良野駅

根室線富良野~新得間は2024年3月31日での廃止が決まっていて、このうち東鹿越~新得間は災害による不通が続いています。残る富良野~東鹿越間について、新ダイヤでは日中時間帯に1往復を増発します。

廃止まで半月のタイミングでの増発には意外感もありますが、さよなら乗車で急増するであろう旅客に対応する措置であることは想像が付きます。

また、廃止を前に、滝川~東鹿越間の直通列車はなくなり、全列車が富良野~東鹿越間の折り返し運転となります。

代行バスについては未発表で、決まり次第発表されます。

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22位 キハ40の運行区間縮小

キハ40藤代線

JR北海道の話題を続けると、H100形が石北線上川~網走間と釧網線に投入されます。これらの区間では、キハ40、キハ54が姿を消します。

これにより、キハ40形が定期運行する区間は、宗谷線名寄~稚内、留萌線、根室線滝川~富良野、花咲線、日高線、函館線函館~長万部を残すのみとなります。

現存する国鉄形の代表格ともいえる車両ですが、北海道の大地から引退する日も近そうです。

反面、新型車両のH100形が北海道各地に展開することで、地元の利用者には歓迎されるでしょう。

H100形の運用拡大
画像:JR北海道プレスリリース
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23位 「スーパーつがる」爆誕

E751つがる

奥羽本線では、特急「つがる」の一部列車で停車駅を見直し、秋田~弘前・青森の各都市を結ぶ所要時分を短縮して、速達性を向上します。速達性を向上した特急列車の愛称を、「ス-パ-つがる」とします。

「スーパーつがる」の停車駅は、東能代、鷹ノ巣、大館、大鰐温泉、弘前、新青森の各駅。現在の「つがる」の停車駅のうち、八郎潟、森岳、二ツ井、碇ヶ関、浪岡を通過します。

これにより、従来の「つがる」より、秋田~青森間で11~14分を短縮します。

近年の傾向として、列車本数の少ない地方の在来線特急は、所要時間短縮よりも停車駅増を優先していて、利用機会を増やすことに重きをおいています。そうしたなかで、速達形の特急を設定することは、珍しいといえるでしょう。

理由として、よほど途中停車駅の利用が少なかったのか、それとも駅の無人化や窓口営業時間の短縮が影響しているのかは、定かではありません。

また、いまさら「スーパー」の名がつく列車の登場もある意味斬新で、ランクインとしました。

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24位 D&S列車の所要時間増

海幸山幸

東北地方で所要時間を短縮した「スーパー」特急が誕生した一方、九州地方では、ローカル特急の所要時間を延長します。対象となるのは、D&S列車の「A列車で行こう」と「海幸山幸」です。

「A列車で行こう」は、下りの乗車時間を現行の約50分から約65分に延長。とくに網田駅での停車時分を延ばします。「海幸山幸」は、下りの乗車時間を現行の約90分から約105分に延長します。

いずれも、「乗って楽しむ列車」という性格上、乗車時間の長いことがサービス向上につながるという判断でしょう。停車時間の拡大は、「おもてなし」の時間を増やすことを意味します。

ローカル線の役割が、たんなる公共交通機関から、一種の観光施設(アトラクション)を兼ね備えるようになってきたことを象徴する事例といえるかもしれません。

「スーパーつがる」と好対照をなす事例としてランクインしました。

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25位 徳島駅で「タクトダイヤ」を導入

徳島駅

徳島駅では、高徳線・徳島線・牟岐線の到着・発車時間帯を統一し、線区相互間の乗り換えをしやすくします。これを「タクトダイヤ」といいます。複数の路線のダイヤをパターン化し、それらが相互に接続するダイヤです。

タクトダイヤでは、直通運転をしない駅間でも、短い時間で往来しやすくなります。運転本数の少ない地方路線で、利便性を高めるのに有効な手法です。日本のローカル線でタクトダイヤは一般的ではありませんので、JR四国の先進的な取り組みといえそうです。

徳島駅タクトダイヤ
画像:JR四国プレスリリース

あわせて、高徳線・徳島線・鳴門線~牟岐線の相互を直通する列車を11本から30本に増強します。

JR四国では、高徳線高松~引田間と、土讃線高知~伊野間でもパターンダイヤを導入します。徳島エリアで先行してきたパターンダイヤが、高松、高知エリアにも拡大することになります。タクトダイヤも広まっていくのでしょうか。

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26位 新駅が6つ開業

IRいしかわ鉄道では、新たに営業を開始する区間の加賀笠間駅~松任駅間に、新駅「西松任駅」が誕生します。また、名古屋鉄道では、河和線の高横須賀~南加木屋間に、「加木屋中ノ池駅」が開業します。

正式発表はありませんが、西鉄天神大牟田線雑餉隈~春日原間に開設される「桜並木駅」も、3月開業の可能性が高く、3月16日に揃えてくる可能性もあります。

そのほか、北陸新幹線の越前たけふ駅と、北大阪急行の箕面船場阪大前駅、箕面萱野駅も新駅です。2024年3月ダイヤ改正の新駅は、この6つとみられます。

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27位 中央西線、普通列車で130km/h運転へ

315系中央西線

中央西線では315系の導入を進めていて、名古屋~中津川間を運転するすべての快速・普通列車を315系に統一しました。これを受け、新ダイヤでは、同区間の最高速度を110km/hから130km/hに引き上げます。

朝夕時間帯において、名古屋~多治見間で平均1分、名古屋~中津川間で平均3分、所要時間を短縮します。

あわせて、列車種別も整理し、昼間時間帯の快速列車をすべて新守山・神領に停車させたうえで、名古屋~瑞浪・中津川間を運転する快速列車はすべて、「区間快速」として運転します。

昼間時間帯は、名古屋~高蔵寺間の普通列車を毎時2本削減。これにより、同区間では毎時6本の運行となります。減便は残念ですが、普通3本、区間快速3本と、運行系統がシンプルになります。

中央西線新ダイヤ2024
画像:JR東海プレスリリース

 
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28位 嵯峨野線で増発

嵯峨野線221系

嵯峨野線では昼間時間帯に、京都駅~嵯峨嵐山駅間の普通列車を6往復増発し、普通列車を毎時4本とします。約15分間隔での運転となります。また、6~8両編成で運転する列車の本数を増やします。

嵯峨野線は、現状で毎時3本の普通列車と1本の快速列車の運行ですが、観光客の急増による混雑が問題となっていました。今回のダイヤ改正は毎時1本の純増で、車両の編成も増えますので、混雑対策にJRが対処した格好です。

ただし、増発列車は嵯峨嵐山折り返しです。改正後のダイヤでは、亀岡方面行きは約30分、間隔が空く時間帯が生じます。

現状は普通列車が約20分間隔ですが、増発により嵯峨嵐山以遠の運転間隔がばらつくなら、沿線利用客にとっては必ずしも便利になるとはいえません。

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29位 813系ロングシート化

JR九州813系

2024年3月ダイヤ改正からただちに、というわけではありませんが、JR九州では、今後、計画的に813系車両のロングシート化を実施します。

813系では、一部の座席を撤去して座席数が極端に少なくなってしまった車両があります。短編成化によるコスト削減と輸送力維持を両立させるための苦肉の策でしたが、これがことのほか不評のため、ロングシートにするということでしょう。

それだけでなく、昔ながらのクロスシート車もロングシート化するようです。これにより、一部の座席を撤去した車両と比較して、座席数は1編成(3両)あたり48席増加します。クロスシート車両と比較して、定員数は1編成(3両)あたり90名増加します。

とはいえ、当然のことながら、座席を撤去していないクロスシート車両と比較すると、ロングシート化で座席数は減少する見込みです。

嵯峨野線増発と、813系ロングシート化は、新型コロナ禍をきっかけとした行き過ぎた合理化からの揺り戻しの事例に感じられ、並べてランクインとしました。

30位 福岡地区のラッシュ時輸送力強化

811系

福岡地区では、朝夕ラッシュ時で4本を増発し、2023年3月ダイヤ改正比で定員を朝109%、夕105%とします。

深夜時間帯では、鹿児島本線や福北ゆたか線の最終列車の編成両数を増やします。

福岡地区では、新型コロナ禍時に減便や減車をしすぎて、ラッシュ時の混雑が激しくなっていました。新ダイヤでの輸送力増強は、その対応とみられ、これも行き過ぎた合理化からの揺り戻しでしょう。

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まとめてみると

30位までランキングしてきましたが、2024年3月ダイヤ改正は、やはり北陸新幹線敦賀延伸開業が非常に大きなウェイトを占めています。北陸エリアはもとより、隣接する近畿地方のダイヤにも影響を及ぼしています。

北陸新幹線開業から1週間後には、北大阪急行の箕面萱野延伸開業も控えています。こちらも近畿の新線で、2024年3月は、北陸地方と近畿地方が沸き立ちそうです。

全国的な傾向としては、新型コロナウイルス感染症からの巻き戻し、インバウンドの回復、将来的な人口減への備え、といった社会状況を反映した改正が目に付きます。

嵯峨野線、福岡地区の輸送力増強や、東海道新幹線の早朝・深夜時間帯の増発は、コロナ禍からの巻き戻しの象徴的な例でしょう。空港特急の回復や特急「富士回遊」は、インバウンドの回復を反映しているように感じられます。

一方で、新型コロナ禍で削ってしまった設備や人員をすぐに戻すこともできず、将来的な人口減少の見通しもあいまって、苦しいダイヤを組まざるを得ない状況も見て取れます。上越新幹線で行われる終電繰り上げが、今後、他の新幹線に広がる可能性もあるでしょう。

通勤時の着席サービスも、人口減に備えた収支改善策ですが、こちらは一段落の様相が感じられます。東武「アーバンパークライナー」のように、利用状況によっては、今後、有料サービスの淘汰が始まる可能性もあるでしょう。(鎌倉淳)

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