東日本大震災で被災した鉄道の復旧が2020年春までに完了へ。常磐線の全線開通にメド。廃止区間は柳津~盛間の99キロ

2011年の東日本大震災で被災した東北の鉄道路線の復旧が、2020年春までに完了する見通しとなりました。最後まで復旧工事に着手できなかった常磐線富岡~浪江間で、着工の見通しが立ったためです。

現在不通の山田線は三陸鉄道に移管して2018年度にも復旧、気仙沼線、大船渡線はBRTでの復旧がほぼ決定しています。全ての鉄道路線が元通りになるわけではありませんが、震災後10年を待たずして、全線区で一応の決着が付くようです。

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常磐線が2020年春までに全線開通へ

各社報道によりますと、東日本大震災の影響で東京電力福島第1原子力発電所に近い区間が不通になったままのJR常磐線が、2020年春までに全線開通する見通しになりました。安倍晋三首相が2016年3月5日に、震災5年を前に福島県を訪れて表明するようです。

原発事故の影響以外にも、JR常磐線は、東日本大震災の津波で福島県内の各地で寸断されました。JR東日本は徐々に復旧を進めていて、原ノ町~浪江間は2017年3月まで、竜田~富岡間は2017年末までの開通をめざしています。

福島第1原発に近い富岡~浪江間の20.8kmは、放射線量が高いため、これまで復旧工事に手が付けられず、運行再開時期が決まっていませんでした。それでもJR東日本が同区間の除染を進めた結果、放射線量を下げるメドがつき、ようやく着工の見通しがたったようです。

被災鉄道の復旧まとめ

これで、東日本大震災で被災した全ての鉄道路線で、復旧またはBRT転換の見通しが立ちました。まとめてみましょう。

常磐線(いわき~亘理間)

・2011年10月に久ノ浜~広野間、12月に原ノ町~相馬間で運転を再開
・2013年3月、浜吉田~亘理間で運転を再開。
・2014年6月、広野~竜田間で運転を再開。
・2016年春、小高~原ノ町間で運転再開予定。
・2016年末までに、相馬~浜吉田間で、内陸側にルート移設のうえ運転再開の予定。
・2017年春までに、浪江~小高間で、運転再開をめざして復旧工事中。
・2017年内に、竜田~富岡間の運転再開を予定。
・2020年春までに、富岡~浪江間で運転再開をめざす。

仙石線(東塩釜~石巻間)

2012年3月までに東塩釜~高城町間、陸前小野~石巻間で運転を再開。
2015年5月の高城町~陸前小野間の運転再開により、全線で運転再開。同時に、「仙石東北ライン」の運転を開始 。

石巻線(前谷地~女川間)

・2013年3月までに、前谷地~浦宿間で運転再開。
・2015年3月の浦宿~女川間の運転再開により、全線で運転を再開

大船渡線(気仙沼~盛間)、気仙沼線(前谷地~気仙沼間)

・2011年4月、気仙沼線前谷地~柳津間で運転再開。
・2012年8月、気仙沼線柳津~気仙沼間が BRTで仮復旧。
・2013年3月、大船渡線気仙沼~盛間がBRTで仮復旧。
・2015年7月、JRがBRT を継続して運行(本格復旧)することを地元自治体に提案。
・2015年12月、沿線自治体から回答。大船渡線については合意。気仙沼線については気仙沼市と協議を継続中。

三陸鉄道南リアス線(盛~釜石間)

・2012年4月、盛~吉浜間で運転再開。
・2014年4月、吉浜~釜石間で運転再開し、全線で運転再開。

岩手開発鉄道

・2011年11月、全線で運転再開。

山田線(宮古~釜石間)

・三陸鉄道へ移管したうえで、2018年度内の運転再開をめざして復旧工事中。

三陸鉄道北リアス線(宮古~久慈間)

・2011年3月、陸中野田~久慈間、宮古~田老間、田老~小本間で相次いで運転再開。
・2012年4月、田野畑~陸中野田間で運転再開。
・2014年4月、小本~田野畑間で運転再開し、全線で運転再開。

八戸線(階上~久慈間)

・2011年8月までに、階上~種市間で運転を再開。
・2012年3月の種市~久慈間の運転再開により、全線での運転を再開

東日本大震災復旧
2016年3月現在の復旧状況です。

震災10年を待たずに決着

正確には、気仙沼線のBRT転換は最終決定はされていません。ただ、沿線他町が同意する中、気仙沼市が拒否することは難しく、事実上、気仙沼線のBRTによる本復旧も決定していると言っていいでしょう。

紆余曲折はありましたが、東日本大震災で柳津~気仙沼~盛間の鉄道99kmが路線廃止。それ以外は復旧という形になりそうです。

正直なところ、原発事故による被害が深刻な常磐線が、10年を経ずして復旧するというのは驚きです。復旧に向けて努力された関係者の方々には、深く敬意を示したいところです。(鎌倉淳)

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