鉄道ローカル線「再構築」の法制度が整う。地域公共交通再生法改正案が閣議決定

協議運賃制度も

「地域公共交通再生法」の改正案が閣議決定されました。鉄道ローカル線の「再構築」に向けた法制度が整います。

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3つの柱

政府は、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案」を2023年2月10日に閣議決定しました。

法律改正案の柱は3つ。鉄道ローカル線に「再構築協議会」制度を導入すること。鉄道とタクシーに協議運賃制度を創設すること。そして、バス会社などに「エリア一括協定運行事業」を認めることです。

芸備線

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再構築協議会

一つ目の「再構築協議会制度」の導入が、今回の地域公共交通再生法改正の最大の注目点です。

鉄道ローカル線について、自治体または鉄道事業者からの要請に基づいて、国土交通大臣が組織する「再構築協議会」を創設します。国は、協議会の開催、調査・実証事業などに対して支援します。

要するに、「ローカル線について協議をしたい」とJRが申し出れば、国が協議会を整えるという仕組みです。協議内容や、それに基づく実証実験なども法定化されましたので、自治体が言を左右にして逃れることはできなくなります。

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複数都道府県にまたがる路線が対象

対象となるローカル線については、「二以上の都道府県の区域にわたるもの又は一の都道府県の区域内にのみ存する路線で他の路線と接続して二以上の都道府県の区域にわたる鉄道網を形成するもの」とされました。

複数の都道府県にまたがる路線がまず対象になり、単一都道府県内に収まる路線でも、他線と接続して広域的に鉄道網を形成している場合は対象になることが示されました。

背景として、再構築協議会制度は、複数の広域自治体(都道府県)にまたがるが故に協議が進みにくい路線を対象にすることが想定されているからです。地域内に収まるような小規模な路線は、再構築協議会など設置せずに、地域公共交通の問題として議論することになります。

単一都道府県内の一部路線も

ただ、条文に「他の路線と接続して二以上の都道府県の区域にわたる鉄道網を形成するもの」という項目が付け加えられたことで、再構築協議会制度の対象になりうる線区はかなり広くととられたと受け止めることもできます。

端的にいえば、地方私鉄は対象になりませんが、JRローカル線の多くは対象になり得ます。中国地方を例に取ると、芸備線は広島・岡山両県にまたがるので問題なく対象になりますが、広島県内に収まる福塩線が対象になるのかは、条文からは読み取れません。

なお、北海道に関しては、「二以上の支庁の所管区域にわたるものは、(中略)二以上の都道府県の区域にわたる路線とみなす」とされました。

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何を話し合うのか

再構築協議会では、実証事業などを経て、鉄道を存続するか廃止するか決定します。存続の場合は、利用者増を目指すための「鉄道事業再構築実施計画」を策定します。施設の近代化などを盛り込みます。

再構築方針を立てて、自治体が地域公共交通計画に鉄道存続を位置づけると、鉄道事業の再生に向けて、社会資本整備総合交付金などによる補助金が出るという枠組みです。

再構築のための投資をしないのであれば、バス転換となります。その場合、JRが鉄道廃止後も、バス路線の運行に責任を持つという形になりそうです。

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協議運賃

「協議運賃」に関しては、地域関係者間の協議がととのったときに、国土交通大臣への届出による運賃設定を可能とするものです。すでにバスでは導入済みですが、鉄道やタクシーにも適用します。

協議運賃制度は、運賃値上げがこれまでより簡単になるため、JRのローカル線に広く設定される可能性があります。

エリア一括協定運行事業

「エリア一括協定運行事業」は、自治体と交通事業者が、一定の区域・期間について、運行回数や路線網など、交通サービス水準や、費用負担などについて協定を締結するものです。協定に基づいて、国は複数年にわたり補助金を交付します。

これまでの路線ごとの補助金交付方式を転換するもので、ローカル路線バスの運行系統が大きく変化する可能性があります。

このほか、「道路運送高度化事業」を拡充し、AIオンデマンド、キャッシュレス決済、EVバスなど、交通分野におけるDX、GX化を推進します。(鎌倉淳)

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