成田国際空港会社(NAA)は、空港の将来像を検討する「『新しい成田空港』構想」のとりまとめを公表しました。鉄道アクセスについては、現在の2駅を集約する方針を明らかにしています。
3つの旅客ターミナルを集約
成田空港会社は、2024年7月3日に『新しい成田空港』構想のとりまとめを明らかにしました。
構想の柱は、現在3つある旅客ターミナルを一つに集約する「ワンターミナル」への再構築です。
新ターミナルの候補地はターミナル2の南側です。ターミナル集約にあわせて、「成田空港駅」と「空港第二ビル駅」を統合し、新駅を設置します。新駅は新ターミナルに直結します。
段階的に集約
成田空港では、2029年3月末に第3滑走路(C滑走路)の新設を予定しています。新ターミナルは、第三滑走路供用開始後に整備を開始し、段階的に集約させていきます。
第1段階で、新ターミナルの半分と新駅の供用を開始します。鉄道路線は、空港第2ビル駅~成田空港駅から軌道を分岐させ、新駅に引き込みます。
現在の成田空港駅(成田第1ターミナル)は閉鎖します。新ターミナルとターミナル2、3を暫定的なコンコースで接続します。
第2段階では、増築によりすべての本館機能を集約します。
第3段階でターミナル移転を完了します。状況に応じて、第1旅客ターミナル跡地に新旅客ターミナルの本館一部とコンコースを増築します。
新駅はターミナル前面地下に
新しい成田空港駅は、新ターミナル前面地下に設けます。新ターミナルの出発階は3階、到着階は2階です。
出発時は駅ホームから出発ロビーへ直結する動線、到着ロビーからは商業施設を経由して駅ホームに至る動線が想定されています。
「駅容量」と「単線区間」をどうするか
とりまとめでは、成田空港の鉄道アクセスが抱える課題が列挙されています。大きく分けて、「成田空港駅の容量」「単線区間」「都心側ダイヤの容量」の3つです。
成田空港駅は、京成が2面3線、JRが1面2線。第2ターミナル駅は京成が1面2線、JRが1面1線です。京成はホーム容量不足のため、列車を縦列に停車させる運用をおこなっています。
また、単線区間は、JR、京成ともに約9kmあります。都心側の容量については、京成、JRともにダイヤが過密で、スカイライナーや成田エクスプレスの増発が困難になっています。
明確な方針を示さず
こうした鉄道アクセスの課題について、「とりまとめ」では、「鉄道は NAA 単独では解決できない分野である」とし、明確な方針を示しませんでした。
「新駅の整備、空港周辺の複線化、都心方面への利便性向上・輸送力増強等、鉄道アクセスの諸課題について、鉄道事業者等の関係者も入った検討の場で議論を深めることが必要である」という記述にとどめています。
駅容量や単線区間について、問題点の解消を求めたものの、成田空港会社が決められる話ではない、ということです。費用負担の問題が大きいからでしょう。
したがって、「とりまとめ」でも、成田空港拡張後の鉄道輸送体系について、具体像は示されませんでした。
高速バスは4割しか戻らず
とはいえ、成田空港の鉄道アクセスの混雑はすでに顕在化しています。とりまとめでは、高速バスの運行本数がコロナ禍前の4割程度にしか戻っていないことも指摘していて、それが鉄道混雑の原因になっていることを示唆しています。
バス運転士不足が深刻化するなか、空港アクセスで鉄道の重要性は高まっていますので、複線化を含む輸送力増強は不可欠といえます。
東成田駅はどうなるのか
成田空港エリアには、京成東成田駅があり、京成東成田線と芝山鉄道線が乗り入れていますが、「とりまとめ」では一切触れられていません。したがって、駅の統合対象に含まれるのか、存置するのか、示されていません。
何も書かれていないということは、東成田駅はそのままで、芝山鉄道も移設されない方針と考えてよさそうです。ただし、京成が移設・統合を希望すれば、検討されることになるのでしょう。(鎌倉淳)