JR西日本が2020年春の運行を目指す「新たな長距離列車」のデザインが発表されました。コンセプトは「多様性」と「カジュアル」です。5つのタイプをすべてご紹介しましょう。
「多様性」「カジュアル」「くつろぎ」
「新たな長距離列車」は、JR西日本が導入する117系の改造車両6両編成です。2018年5月23日に、同社が初めて具体的なデザインを明らかにしました。
この車両のコンセプトは、「多様性」「カジュアル」「くつろぎ」をキーワードに、鉄道の旅の楽しさを知ってもらう、というもの。
コンセプトを基に、1両ごとに異なる座席配置とし、シンプルながら快適性が高い車内空間を目指しました。座席は沿線風景を見やすいよう配慮し、車窓を楽しみやすい作りになっています。
車内を自由に行き来して列車の旅を楽しめる仕掛けも工夫。ドア付近や運転台後方にフリースペースを設置し、4号車は全体をフリースペースとしています。
車両の座席、設備は?
6両編成のうち、普通車が2両、グリーン車が3両、フリースペースが1両となりました。各車両の座席、設備は次のとおりです。
1号車(グリーン車) 1列+1列シート
・向かい合う2つの座席を1名で利用することもできる。
・2つの背もたれを倒すことでベッドへの転換が可能。
2号車(普通車) フルフラットシート、2列+2列シート[女性専用席]
・フルフラットシートは5号車、2列+2列シートは3号車と同じ仕様。
・女性更衣室、女性専用トイレを配置。
3号車(普通車) コンパートメント、2列+2列シート
・グループで利用可能なコンパートメント。
・グリーン車並みの座席間隔で配置した2列+2列のリクライニング席。
4号車(フリースペース)
・テーブルや着席スペースを複数設置。
・グループで利用できるボックス席。
5号車(普通車) フルフラットシート
・2段式フルフラットシート。
・車椅子対応座席、多機能トイレを配置。
6号車(グリーン個室)
・個室を5室配置、うち1室は1名用個室。
5つの座席ラインナップ
整理すると以下のような5つの座席ラインナップになります。
・普通車(2×2シート)
・普通車個室(ファミリー・グループ用、フラット利用可)
・普通車フルフラットシート(2段式)
・グリーン車(1×1シート、フラット利用可)
・グリーン個室(1人用、2人用、フラット利用可)
※普通車の2×2とフルフラットは、女性専用車両あり。
普通車の2×2以外は、フラット利用可能な点が、大きな特徴といえます。この列車が昼行、夜行の両パターンの運用が想定されているからでしょう。
2号車と5号車のフルフラットシートは、サンライズエクスプレス「ノビノビ座席」と同等だそうです。普通車の2列シートも、足を伸ばせるように座席間隔が広いため、仮眠程度はできそうです。
運転区間と料金は?
新たな長距離列車の運転区間は、京阪神~山陰・山陽間です。具体的な発着地は公表されていませんが、JR西日本の「せとうちパレットプロジェクト」において、「京阪神と瀬戸内エリアを結ぶ」予定が公表されています。京阪神~広島などが想定されているとみられます。山陰方面は、電化区間の関係から松江・出雲市方面が目的地でしょう。
仮に京都~広島、京都~出雲市などが運転区間として想定されている場合、時間的には昼行で走行できますが、夜行列車としても運転可能です。さまざまな座席タイプを用意することで、多様な需要に対応しようという意識が垣間見えます。
料金は未発表ですが、「カジュアル」とあって低価格に抑えられる見通し。区間にもよるでしょうが、普通車で1万円台前半が想定されているようです。
「瑞風」のようなツアー扱いの団体臨時列車になるのか、駅の窓口で指定席券が販売される不定期列車になるのかは、はっきりとした情報はありません。ただ、JR西日本は、この列車について「気軽に」「自由に」利用できるとの表現を用いていますので、窓口発売の列車も運転されることを期待しましょう。(鎌倉淳)