あらかわ遊園はこう変わる! リニューアルの全詳細。施設は長期休業へ

イルミネーション充実、都電車両も活用へ

あらかわ遊園が、2018年12月からリニューアルの改修工事のため長期休園に入ります。リニューアルにより、どう変わるのでしょうか。

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東京23区唯一の公営遊園地

あらかわ遊園は東京都荒川区の区営遊園地で、東京23区では唯一の公営遊園地として知られています。敷地面積は約5万平米、未就学児向けのアトラクションが充実しています。

開園は1922年で、90年以上の歴史を誇ります。最近の入園者数は増加傾向で、2017年度は約41万7,000人が訪れました。一方で、1991年以来、設備の大規模改修は行われておらず、近年はアトラクションなどに老朽化が目立つようになってきました。

そこで、荒川区では2018年12月から施設を一時閉鎖して、大規模リニューアルに着手します。再オープンは2021年夏頃を見込んでおり、2年半という長期休業に入ります。これだけの期間、思い切って休めるというのは、さすが公営施設です。

あらかわ遊園

リニューアルの基本方針

では、リニューアルにより何が変わるのでしょうか。荒川区が公表している「荒川遊園改修基本計画案」と「あらかわ遊園A地区の改修計画案について」という資料から、まとめてみましょう。下記の記述は、この2資料に基づいたもので、変更などが行われる可能性があることをご理解ください。

荒川遊園改修基本計画案によりますと、リニューアルの基本方針として、まず「楽しさいっぱいの遊園地」を目指します。具体的には、「大型遊具の更新、新設、配置変更」「飲食、物販やイルミネーションなどソフトの充実」といった遊園地施設を充実させます。

次いで、「死角がなく見通しのよい空間整備」「日陰のある休息スペースの確保」「バリアフリーに配慮した動線」などを掲げ、安全・安心と休息の場を確保することを目指しています。

そして、既存建築施設の改修や増築をおこなうことで、授乳室など子育て支援施設を充実させ、多くの世代が癒やされる空間をつくるとしています。

簡単にいえば、古くなったアトラクションを刷新し、乳幼児連れから高齢者、障がい者まで、全ての人が楽しめる施設にする、ということです。公営遊園地らしい目標設定といえそうです。

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観覧車、メリーゴーランドを建て替え

具体的な改修内容に移りましょう。下図は、「荒川遊園A地区の改築設計案」の概略図です。大がかりなリニューアルが行われることがわかります。

全体図
画像:「荒川遊園A地区の改築設計案について」より

リニューアルの目玉は、やはり「のりもの広場」の大改修でしょう。

まず、あらかわ遊園のシンボルである観覧車を建て替えます。現在の観覧車は、円環の直径26m、高さ32mですが、これをLEDイルミネーション付き40m級のものに更新します。バリアフリーにも対応します。

メリーゴーランドも更新し、夜間演出が可能なものとなります。

豆汽車はルートを東に膨らませる形で拡張し、バリアフリー化。イルミネーションによる演出もおこないます。

あらかわ遊園豆汽車

コーヒーカップも更新し、ウォーターシューティングライドとなります。スカイサイクルは改修し、安全性を高めます。バッテリーカーと小型遊具は「ちびっこ広場」へ移設します。

「日本でいちばん遅いジェットコースター」として知られるファミリーコースターは、更新リストにはなく、そのまま残るようです。

「のりもの広場」の各大型遊具の前面には、ロングパイル人工芝による休憩広場を設けます。広場内には夏季の熱中症対策としてミストを仕込みますので、夏休みは凌ぎやすくなりそうです。

あらかわ遊園のりもの広場リニューアル
画像:「あらかわ遊園A地区の改修計画案について」より

「ちびっこ広場」は拡張

「ちびっこ広場」は南東部へ拡張して整備します。既存のちびっこ売店、魚釣り広場管理所、トイレを統廃合し、授乳室や飲食、物販などが充実した「ちびっこハウス」を新設します。

「ちびっこ広場」には、バッテリーカーとトランポリン状のエア遊具、小型レール遊具が設けられます。上部には広場全体を覆うような固定式屋外テントを設置。雨天でも楽しめるようにします。

あらかわ遊園改修案ちびっこ広場周辺
画像:「荒川遊園A地区の改修計画案について」より

「魚つり広場」は縮小

「ちびっこ広場」に隣接する「魚つり広場」には、上記の「ちびっこハウス」が新設されます。

釣り堀の中央デッキ部分に車いす用エリアを確保し、バリアフリーを促進。水深を浅くして、子どもたちが安全に楽しめるように改造します。

規模は縮小し、現在の水面面積825平米が、470平方米になります。

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「しばふ広場」に35mのロング滑り台

「しばふ広場」は、南側を現在のポニー乗馬場、釣り堀北側まで拡張。現在の1,300平米が1,675平米になります。全体をひな壇状に造成し、平らな広場を設け、休憩・食事場所として利用しやすくします。

また、無料の施設として、高低差を活かした35mのロング滑り台や児童用複合遊具などを設置します。

「どうぶつふれあい広場」を拡張

「どうぶつ広場」では、バードゲージを撤去し、「どうぶつふれあい広場」を拡張します。体験型施設を充実させるわけです。

あわせて、豆汽車から「どうぶつふれあい広場」を見やすします。

ポニー乗馬場はどうぶつ広場北東へ移設し、隣接して展望広場を設けます。

「アリスの広場」は、季節に応じたイルミネーションなどの演出をおこないます。

「キャンディハウス」を新築

センターハウス的な存在の「キャンディハウス」は新築し、授乳室の設置や、飲食・物販を充実させます。また、屋上も利用できるようにします。

下町都電ミニ資料館となっている「ふれあいハウス」も増改築をおこない、エレベーターを設置します。飲食、物販の充実も図ります。

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「一球さん号」にプラットフォーム

「ふれあいハウス」北側の「水あそび広場」では、ふれあいハウス側を階段状として安全に水にアクセスできるようにします。

あらかわ遊園改修案スワンの池周辺
画像:「荒川遊園A地区の改修計画案について」より

「水遊び広場」東側には、都電のレールをイメージさせるレールウェイ園路を設置。レールの間をゴムチップ舗装とした、歩きやすい歩行者空間をつくります。

このレールウェイ園路は、「スワンの池」前に停まっている「一球さん号」(2001年に廃車になった都電6000形)につながっていて、さらに園外の都電荒川遊園前停留所近くまで連続的に整備されます。

一球さん号

「一球さん号」横にはプラットフォームを設置して、停留所に設置しているようなあつらえにします。また、飲食・物販などの場として活用できるような形へ改修します。

「スワンの池」では、東側半分と北側一部で水上デッキとなるように張り出しのデッキを整備し、一球さん号と連携してオープンカフェ空間として利用できるようにします。

「スワンの池」には現在、スワンがいません。荒川区議会の議事録を読むと、ネーミング変更も検討されるようです。

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小学校跡地へ拡張

あらかわ遊園は、東側の旧小台橋小学校跡地への拡張も予定されています。拡張エリアへは、「どうぶつ広場」奥から荒川沿いに進みます。

荒川遊園拡張エリア
画像:「荒川遊園改修基本計画」より

荒川沿いには、改修にあわせてスーパー堤防が整備されますが、園内から堤防上へ、バリアフリーに対応したスロープを設置します。自然を楽しみながらウォーキングできそうです。

堤防沿いには、「ふれあいの森」と称する自然環境体験が可能な森を整備します。「ふれあいの森」では、アスレチック遊具などを整備。休息スペースや多目的に利用できるツリーハウスやログハウスの整備も検討します。

あらかわ遊園拡張エリア
画像:「荒川遊園改修基本計画」より

幼児が遊びやすい空間に

拡張区域には、多目的広場と幼児用広場が主に設けられます。多目的広場は自由度の高い使い方ができるよう整備され、柔らかい舗装材や芝生が敷設されます。乳幼児でも安全に走り回れるよう配慮されます。

幼児用広場には幼児用複合遊具を設置します。多目的広場に面して見通しを確保し、大人が子どもを見守れるような日陰のある休息スペースを設けます。

導入路も整備

都電荒川線の荒川遊園地前停留所から、あらかわ遊園にかけての導入路も整備されます。前述したレールウェイ園路を停留所付近から「一球さん号」へ向けて作り、線路の枕木をイメージした舗装パターンとします。

導入路には、一体性と統一性をもったデザイン性の高い灯具が導入され、イルミネーションの雰囲気を高めます。

「屋外プール」改修も

屋外プールの改修の可能性も検討。流れるプール化や島部分へのLEDを用いた火山型噴水の設置などを検討します。

授乳室や屋内遊戯施設も充実させ、夏季以外にはフリーマーケットの開催などの利用方法を検討します。

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夜間営業、入園料はどうなる?

全体をまとめてみると、かなり大規模なリニューアルで、2021年夏の再オープン時は、まさに面目を一新した「ニューあらかわ遊園」が誕生しそうです。

これまであらかわ遊園の課題とみられてきた、飲食・休憩施設の少なさを改善し、イルミネーションを充実させることで、夜間営業の拡大を目指していることがはっきりとわかります。

現在のあらかわ遊園は17時(日曜などは18時)までの営業ですが、リニューアル後は、試験的に行われたことがある20時までの延長を軸に検討されそうです。

料金については未定です。現在の入園料(おとな200円、小中学生100円)は安いので、リニューアルとともに値上げの可能性はありそうです。

ただ、メインターゲットが育児にお金のかかる30代ファミリーですし、公共施設ということもあり、大幅な値上げはないでしょう。

昭和的な雰囲気は

気になるのは、あらかわ遊園の特徴でもあった「昭和感」が失われてしまうのではないか、という点。基本計画では「昭和のイメージや現在のあらかわ遊園の面影を残し」と書かれているので、改修時にも考慮されるとみられます。

新しさのなかにも懐かしさが感じられる空間が生まれるのは楽しみです。一方で、現在のあらかわ遊園とは、もうすぐお別れです。

長期休園前の最終開園日は2018年11月30日。最近の週末は「お別れ来園」を楽しむファミリーで大混雑ですが、最後の見納めをしておくのもよさそうです。(鎌倉淳)

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