中堅航空会社のエア・ドゥ(AIRDO)と、ソラシドエアが、共同持ち株会社を設立して経営統合します。両社の羽田発着枠をあわせると、スカイマークを抜いて国内3位となります。
合併、増資、減資
エア・ドゥは北海道を拠点とする航空会社、ソラシドエアは九州を拠点とする航空会社です。両社は2022年10月をめどに共同で持ち株会社を設立することで基本合意したと発表しました。
エア・ドゥとソラシドエアは、それぞれ共同持ち株会社の子会社として傘下に入ります。両社の経営の独立性は維持し、それぞれのブランドも存続します。一方で、一部の業務を共通化し、コストを削減。燃料や部品の調達などを一元化する見通しです。
両社は、第三者割当増資を実施し、優先株を発行します。増資の引受先は、エア・ドゥが日本政策投資銀行と北洋銀行で、合計70億円、ソラシドエアが日本政策投資銀行と宮崎銀行、宮崎太陽銀行で、合計25億円です。一方で、それぞれ減資を行って資本金を1億円に減らし、中小企業となり税負担を軽減します。
合併、増資、減資という組み合わせで、新型コロナウイルス感染症による経営危機に対応するわけです。
「独立性維持」の理由
エア・ドゥとソラシドエアは、共同持ち株会社を設立したため、一般的には「経営統合」とみなされます。しかし、両社はプレスリリースなどで、それぞれの会社の経営の「独立性維持」を強調しました。
その背景にあるのが、両社の地域性です。両社とも地元資本の出資を受け、地域航空会社として支援を受けてきました。そのため、合併により地域性を失うと、地域の支援も失いかねません。
羽田発着枠の問題もあります。現在、羽田国内線発着枠をエアドゥが23枠、ソラシドエアが25枠を持っていて、合併により合計48枠となります。スカイマークの37枠を抜いて、国内航空会社第3位に浮上します。
しかし、航空会社が合併した場合、発着枠の一部は国に返還しなければならないという国交省の通達があり、両社が完全に合併した場合、発着枠を削減されるおそれがあります。このため、両社は完全な合併を避け、「独立性」を強調したとみられます。
過去には、JALとJASが合併した際、9便を国交省に返上しています。このときは、独占禁止法上の問題を指摘されてのことでした。
羽田発着12路線に
現状の羽田路線は、エア・ドゥは札幌、旭川、女満別、釧路、帯広、函館の6路線。ソラシドは宮崎、熊本、長崎、大分、鹿児島、那覇の6路線です。合併により、羽田発着が12路線となります。
ちなみに、スカイマークの羽田発着路線は札幌、神戸、福岡、長崎、鹿児島、那覇、下地島の7路線です。長崎へは神戸経由なので実質6路線と考えれば、エア・ドゥ=ソラシド連合は、羽田路線ではスカイマークをはるかに凌ぐネットワークとなります。
国内線全体では、スカイマーク23路線に対し、エア・ドゥ=ソラシドが計24路線で、差はほとんどありません。営業収入に関しては、2020年3月期でスカイマークが903億円に対し、エア・ドゥ=ソラシドの合計は873億円で、僅差ながらスカイマークが第3位にとどまります。
全体ではエア・ドゥ=ソラシド連合は、運航規模や営業収入でスカイマークと互角となり、羽田発着枠で大きくリードすることになるわけです。(鎌倉淳)