JR各社から2023-2024年末年始の新幹線利用状況が発表されました。新年早々の能登半島地震と羽田空港衝突事故の影響を受け、年始に利用者が急増しました。詳細をランキング形式で見ていきましょう。
年末年始の利用状況
JR各社は列車利用状況の統計を「年末年始」「ゴールデンウィーク」「お盆」の3期のみ発表します。このうち「2023-2024年末年始の利用状況」がこのほど発表されましたので、各社の情報をまとめて、「年末年始の新幹線利用者数」をランキングにしてみました。
2023年12月28日~2024年1月4日の8日間の統計です。
新幹線利用者数ランキング2024年新春版
順位 | 路線名 | 区間 | 利用者数(万人) | 対前年度比 | 対2018年度比 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 東海道新幹線 | 新横浜~静岡 | 227.6 | 107% | 103% |
2 | 山陽新幹線 | 新大阪~西明石 | 145.0 | 109% | 95% |
3 | 山陽新幹線 | 岡山~広島 | 106.4 | 108% | 94% |
4 | 東北新幹線 | 大宮~宇都宮 | 104.5 | 111% | 94% |
5 | 上越新幹線 | 大宮~高崎 | 99.4 | 104% | 89% |
6 | 東北新幹線 | 那須塩原~郡山 | 92.4 | 111% | 93% |
7 | 山陽新幹線 | 広島~新山口 | 74.7 | 107% | 94% |
8 | 山陽新幹線 | 新山口~小倉 | 66.6 | 107% | 94% |
9 | 山陽新幹線 | 小倉~博多 | 57.7 | 106% | 96% |
10 | 北陸新幹線 | 軽井沢~高崎 | 52.5 | 105% | 92% |
11 | 東北新幹線 | 古川~北上 | 43.9 | 110% | 92% |
12 | 九州新幹線 | 博多~熊本 | 27.5 | 113% | 99% |
13 | 上越新幹線 | 越後湯沢~長岡 | 24.2 | 100% | 85% |
14 | 北陸新幹線 | 上越妙高~糸魚川 | 24.1 | 101% | 88% |
15 | 東北新幹線 | 盛岡~八戸 | 20.7 | 111% | 96% |
16 | 九州新幹線 | 熊本~鹿児島中央 | 14.0 | 114% | 97% |
17 | 山形新幹線 | 福島~米沢 | 10.5 | 110% | 91% |
18 | 秋田新幹線 | 盛岡~田沢湖 | 7.2 | 110% | 93% |
19 | 西九州新幹線 | 武雄温泉~長崎 | 6.5 | 100% | 104% |
20 | 北海道新幹線 | 新青森~新函館北斗 | 5.2 | 117% | 99% |
21 | 山形新幹線 | 山形~新庄 | 3.0 | 113% | 89% |
上記のランキングは、JR各社から広報発表された内容をまとめたものです。JR各社によって、区間選定の基準などがばらばらであることをご承知おきください。
地震と事故が影響
2023-2024年末年始の新幹線利用動向に大きな影響を与えたのは、1月1日に発生した能登半島地震と、2日の羽田空港衝突事故でしょう。とくに、羽田事故は飛行機の大量欠航をもたらしたので、全国的に新幹線の利用者増につながりました。
その影響を最も大きく受けたのが東海道新幹線でしょう。飛行機の欠航を受け、西日本各地から鉄路に切り替えて帰京する旅客の受け皿となりました。結果として、年末年始の利用者数は対前年度比107%、対2018年度比103%となり、コロナ前の数字を超えました。
利用者が最も多かった日は、下りが12月29日、上りが1月3日でした。12月29日の利用者数は29万9000人で、2018年度の30万1000人とほぼ同じです。一方、1月3日の利用者数は31万人で、2018年度の28万2000人を10%も上回っています。
欠航した空路の旅行者を東海道新幹線が受け入れた結果、上りの利用者が大きく増えたことがうかがえます。
「のぞみ」全車指定席化の影響は?
東海道・山陽新幹線では、この年末年始から、「のぞみ」を初めて全車指定席としました。その影響も気になります。
結果を見てみると、東海道新幹線区間では、「のぞみ」が対前年比107%、対2018年度比103%で、全車指定席化で旅客の流出を招いた状況はなく、影響はみられませんでした。羽田事故による押し上げ効果を差し引いても前年度を上回っていた可能性が高く、全車指定席化は成功とみていいでしょう。
これに対し、「ひかり」は対前年度比116%、対2018年度比101%です。対前年度の伸びが大きいため、「のぞみ」指定席を取り損ねた層が、「ひかり」の自由席に流れた状況が察せられます。「こだま」は対前年度比105%、対2018年度比92%で、「のぞみ」全車指定席化の影響をほとんど受けていない様子です。
一方、山陽新幹線区間では、「のぞみ」が対前年度比106%に対し、「みずほ」101%、「さくら」120%、「ひかり」115%、こだま138%となっています。こちらも、「のぞみ」の自由席利用者層が、「さくら」「ひかり」に流れた可能性がありそうです。「みずほ」には、影響がほとんどありませんでした。
山陽新幹線区間では、「こだま」の利用者数が非常に増えています。その理由は「のぞみ」全車指定席化とは別のところにありそうですが、定かではありません。
東北・北海道新幹線も利用者増
東北新幹線は、盛岡以北で羽田事故の影響が顕著です。盛岡~八戸間の対2018年度比は、下りが93%に対し、上りは100%となっていて、年始に混雑する上りで利用者が急増しました。
北海道新幹線は上下別の数字を発表していませんが、全体として対2018年度で99%となっていて、こちらも上りの混雑が数字を押し上げたとみられます。対前年度では117%にも達しており、全新幹線で最高の伸び率となりました。
年始の「はやぶさ」はほぼ満席で、新千歳空港から空路を取りやめて陸路で帰ろうとしても、容易ではなかったようです。
北陸・上越新幹線は伸び悩む
北陸新幹線は、能登半島地震の影響を受け、利用者が伸び悩みました。高崎~軽井沢間で対2018年度比92%、上越妙高~糸魚川間で同88%にとどまっています。
上越新幹線も影響が大きく、大宮~高崎間で同89%、越後湯沢~長岡間で同85%となりました。いずれも、1月1日の地震発生直後から翌2日午後まで運休が生じた結果とみられます。
西九州新幹線は影響受けず?
山陽・九州方面でも、地震や羽田事故の影響があったようです。山陽新幹線広島~新山口間では、対2018年度比で下り90%に対し、上り97%。九州新幹線博多~熊本でも下り97%に対し、上り100%で、年始のほうが利用状況がよくなっています。
ただ、西九州新幹線は、対2018年度比で下り103%、上り104%にとどまります。2018年度は、西九州新幹線は未開業のため在来線との比較になりますが、開業後の対前年比をみると、上下とも99.7%で同じです。
空路の長崎~羽田線でも欠航は生じていますが、西九州新幹線の利用者を押し上げる結果にはならなかったようです。(鎌倉淳)