日本でもっとも交通が不便な有人島といえば、小笠原諸島でしょう。飛行機の便はなく、船で行くにも東京の竹芝桟橋から船で25時間半もかかります。最短の旅行でも丸6日必要で、ハワイよりも「行くのが大変」な島です。ここでは、世界遺産・小笠原諸島を最短の6日間で上手に観光する方法をまとめてみましょう。
旅行は6日単位
まず、小笠原諸島へのアクセス方法をおさらいしてみましょう。玄関口となる父島へは、小笠原海運のフェリー「おがさわら丸」以外に選択肢はありません。小笠原諸島には空港がないため、飛行機で行くことはできません。
運航は6日に1便が原則。東京を10時に出て、父島に翌11時30分着。父島に3泊停泊します。3日後の14時に父島を出て、東京に翌15時30分着です。たとえば日曜日10時に東京を出たら、戻ってくるのは金曜日の15時30分となります。
そのため、旅行は6日単位が原則。ただ、ゴールデンウィークなどの繁忙期には3日に1便運航したり、運航日を休日にあわせてずらすことがあり、その場合は7日間や9日間といった旅もできます。
往復4万5,000円~
おがさわら丸の運賃は安くありません。もっとも安い2等で片道22,520円(2016年3月、以下同)。往復で45,040円にもなります。2等は雑魚寝なので、専用のベッドで寝たい人には特2等がおすすめですが、片道33,770円、往復で67,540円にもなります。もうこれだけでハワイのツアーに行けてしまいますね。
格安チケットとかはないのかしらん、と思ってしまいますが、ありません。往復割引すらありません。かつては共勝丸という貨客船で安く行くことができたようですが、今は旅客輸送をしていませんので、旅行をするにはおがさわら丸以外の交通機関はありません。
小笠原諸島に安く行く方法は?
では、小笠原諸島に安く行く方法はないのでしょうか。唯一の割引チケットといえるのが、小笠原海運による「おがまるパック」です。船と宿とクーポンがパックになったもので、別々に予約するよりちょっぴり安くなります。それでも、安くても6日間6万円程度~で、なかなかのお値段です。
旅行会社でもパッケージツアーは扱っていますが、格安ツアーは見当たりません。ただ、さまざまなバリエーションのツアーがありますので、おがまるパックよりいいホテルに泊まりたい、とか、アクティビティもセットで申し込みたい、という方は、旅行会社に相談するといいでしょう。
おすすめの宿は?
その小笠原の宿泊施設ですが、民宿やペンション、ゲストハウスが基本です。ホテルもありますが、ホテルらしいホテルは「ホテルホライズン」くらいです。宿は比較的豊富ですが、ピーク時には不足しますので、先に宿を取ってから船を予約しましょう。
おすすめの宿はいくつかありますが、港から近い「ハートロックビレッジ」か、「パパスアイランドリゾート」が比較的新しい宿泊施設です。アクセスを重視するなら、父島中心部の大村地区の宿が便利ですが、やや古い施設も多いです。せっかく小笠原に来たのですから、少し不便な場所に泊まるのもアリだと思います。
父島の宿は、宿泊予約サイトでは扱っていない場合もあります。小笠原村観光協会のホームページには宿泊施設リストがありますので、電話予約してみるのもいいでしょう。
山と海のアクティビティを
さて、小笠原の旅を決めるのは、現地滞在のアクティビティです。大きく分けて、山を歩くトレッキングツアーと、海を回るボートツアーに分かれます。ボートツアーではホエールウォッチングやドルフィンスイムが楽しめます。
小笠原では、ガイドなしに山に入ることはできませんし、もちろん船がなければ海に出られません。そのため、こうした現地ツアーに参加しないと、小笠原に来た意味が半減します。父島の町中をぶらぶらしているだけでいいよ、言う人もいるかもしれませんが、それはさすがにもったいないです。
で、このツアーは、繁忙期にはめちゃめちゃ混雑します。船と宿は押さえたけれど現地ツアーが満員で予約が取れない、ということもあるくらいです。そのため、繁忙期に小笠原へ行く人は、アクティビティを楽しめる現地ツアーを早めに予約しておきましょう。
現地ツアーの選び方
現地ツアーの選び方ですが、海のツアーはまずは「南島」に行けるものを狙います。「ドルフィンスイム&ホエールウォッチング&南島」が鉄板のツアーです。ただ、南島は入島制限が厳しいうえに、天候によって上陸できないことも多いので、「行ければラッキー」くらいに考えておいたほうがいいでしょう。
ドルフィンスイムはシュノーケリングの技術が必要です。難しくはありませんが、やったことがない人は、おがさわら丸到着日にでも、シュノーケリング体験ツアーをしておくといいでしょう。
山のツアーはトレッキングツアーとナイトツアーがあります。トレッキングツアーは父島の南端の絶景を目指す「ハートロックコース」がおすすめです。旧日本軍が作った車道跡を主に歩きますが、往復約10km、約6時間の行路ですので、健脚向けです。
夜も動ける元気な人は、ぜひナイトツアーを。天然記念物のオガサワラオオコウモリや夜行性の生き物を探しに行くツアーです。満天の星空を眺められるのも魅力です。
6日間のモデルコースは?
おおざっぱにいうと、6日間旅行でのモデルコースはこんな感じになります。
1日目 東京発
2日目 午後父島着。シュノーケリング体験、ナイトツアー
3日目 海のツアー
4日目 山のツアー
5日目 午前中フリー。午後父島発
6日目 東京着
この日程ですと、ツアー参加ばかりになるので、5日目のフリー時間は、バイクかレンタカーを借りて、父島を運転してみるのもいいでしょう。自由時間を増やしたい方は、たとえば山のツアーをやめるとか、シュノーケリング体験をパスするとかでいいと思います。
父島島内には村営バスもあり、1日乗車券もありますので、ぶらり「ローカル路線バスの旅」をしてみるのも楽しそうです。
母島にも行ってみよう!
母島への日帰りもおすすめです。母島は小笠原諸島最南端の有人島。父島とは違った、のどかな雰囲気があります。人口450人の超過疎地なのに、妙に活気がある不思議な島です。住人が若い人ばかりだから、という理由かも知れません。
母島への航路の時刻は日によって異なりますが、たいていの場合、父島滞在中1日は日帰りできる日があります。午前7時30分に父島を出て、9時40分母島着。14時に母島を出て、16時10分父島着というダイヤで、母島には4時間あまりの滞在です。2時間半の島内観光ツアーがありますので、母島観光協会に事前に申し込んでおきましょう。
ツアーが嫌いな方は、レンタカーかレンタルバイクを申し込みましょう。台数はかなり限られますので、こちらも必ず事前に申し込んでおきます。
「ツアー」と「予約」が必要な島
ということで、小笠原諸島を旅する場合、「ツアー」や「予約」がいろんな場面で必要です。とにかく、何らかのツアーに参加しないと楽しみにくい島ですし、公共交通機関が発達しておらず、宿も足りないので、自由にぶらぶら旅をするには不便です。レンタカー、レンタルバイクの数も限られます。
繁忙期でなければ予約なしでもかまわないと思いますが、標準的な6日間という日程で旅をする場合、ある程度予定を行く前に決めて、予約を済ませておくことをおすすめします。
あとは天候次第。そこは運なので、てるてる坊主を作ってお祈りしましょう。(鎌倉淳)