JR北海道は留萌本線留萌~増毛間の鉄道事業廃止について正式発表しました。同社ホームページ上で廃止方針を掲載したほか、8月10日に島田修社長と瀧本峰男・総合企画本部副本部長が増毛町を訪れ、非公開で同町の堀雅志町長と、留萌市の高橋定敏市長に伝えました。
輸送密度は39人
留萌本線は深川~増毛間を結ぶ66.8kmの路線です。うち留萌~増毛間は16.7kmで、1921(大正10)年11月5日に開業しました。現在、同区間の列車本数は13本(下り6本・上り7本)で、留萌駅を除く8駅すべて無人駅です。
開業94年の歴史を誇る同区間ですが、沿線の過疎化と自動車の普及によって利用者が落ち込んでいます。1978年に貨物輸送が廃止され、1980年には急行「ましけ」も廃止になりました。近年の利用者の落ち込みは特に深刻で、留萌~増毛間の2014年度の輸送密度は39人だったことが明かされました。2014年に廃止された江差線の木古内~江差間の輸送密度(2011年度)が41でしたので、それを下回っています。
防災工事費に数十億円必要
留萌~増毛間の収支状況に関しても公表されました。営業収入は2013年度で700万円、経費は25倍近く要していると推計しており、差し引きすると年間約1億6,000万円以上の赤字とのことです。
留萌~増毛間は災害も多く、とくに箸別~増毛間では斜面から線路に流入した雪や土砂などによって列車が乗り上げ、脱線する事故が2度(2005年3月・2012年3月)にわたり発生しています。この対策費もかさんでおり、同区間の損失を増やす要因となっていました。
JR北海道によると、こうした安全確保のための防災工事費を今後数十億円投入しなければ、永続的に安全運行をすることができないとしています。
2015年度内に廃線届
同区間では並行して道路があり、路線バスも運行されています。バスは1日22本と鉄道より本数が多く、留萌市内の市立病院や高校にも立ち寄っていて、鉄道よりも便利です。JR北海道では、こうしたことを総合的に検討して、鉄道を廃止するという結論に至りました。
鉄道会社が路線を廃止する場合、自治体などと協議した後、廃止1年前までに国土交通省に届け出る必要があります。島田社長は、増毛町を訪れた後の記者会見で、「2015年度内の廃線の届け出を希望している」と述べ、2016年度内の廃止を目指すことを明言しました。つまり、2017年3月31日までに、留萌線留萌~増毛間を廃止したい、ということを意味します。
他路線の廃止は?
説明を受けた増毛町の堀雅志町長は、「非公式の相談はあったが、とうとう来てしまった。非常に残念。今後のことは、町民の意見や要望を聞き、議会とも相談して対応する」などと述べたそうです。廃線への賛否は明言しませんでしたが、強く反対するというニュアンスでもなく、諦め感が漂います。
JR北海道は、留萌~増毛間以外にも廃線を検討しています。他路線の廃止ついては、「全くまだ具体的に決まったものは現時点ではない」(日経)というコメントだったそうです。