大雨による被災で全線運休となり、BRTでの復旧が決まったJR美祢線について、専用道の新設は費用に対して時間短縮効果が低いという試算が公表されました。「BRT専用道は無駄」という内容ですが、渋滞の少ないローカル線代替区間では、至極当然の結論といえます。
2023年に被災
JR美祢線は山口県の厚狭~長門市間46.0kmを結ぶローカル線です。2023年6月の豪雨被害で約80箇所が被災し、現在も復旧していません。
鉄道による復旧費は58億円と見積もられ、JR西日本はバス高速輸送システム(BRT)による復旧を提案。これを沿線自治体が受け入れ、美祢線沿線地域公共交通協議会を設置し、具体的な運行方法などを議論しています。
その第2回会合が2026年2月17日に開催され、BRTの速達性や定時性、利便性の向上策について検討結果が報告されました。

3箇所の専用道案
速達性・定時性の向上策として検討されたのは、BRT専用道の設置です。
候補となる専用道区間は、南大嶺駅~美祢駅、貞任第5踏切~厚保駅、厚狭駅~下河端第2踏切の3箇所です。
試算によれば、南大嶺駅~美祢駅間の専用道区間2.5kmを整備すると、駅付近の市街地や交差点を避けるルートを構築できますが、時間短縮効果は約1分です。対する費用は約28億円かかります。

時間短縮効果は限られて
貞任第5踏切~厚保駅間4.2kmは、並行する道路がないため、専用道整備により鉄道と同一ルート(厚狭~湯ノ峠~厚保)で運行可能となります。ただ、路線全体で見れば時間短縮効果はほとんどありません。対する費用は約45億円かかります。

厚狭駅~下河端第2踏切間1.2kmは、整備すれば厚狭駅構内への乗り入れが可能になります。時間短縮効果は1分程度です。これに対し、費用は約21億円です。

いずれの区間も、専用道の整備に数十億円の費用がかかるわりに、時間短縮効果は非常に限られたものになる、ということです。
優先信号なら6000万円
PTPS(Public Transportation Priority Systems)と呼ばれる、公共車両優先システムを導入した場合の効果と費用も調査されました。PTPSでは、バスを優先する信号制御などをおこないます。
沿線道路の5つの交差点でバス優先信号を導入した場合、赤信号の待ち時間を交差点によっては最大1.5分程度短縮できます。対する費用は5箇所で約6000万円です。

快速便は列車と遜色なく
このほか、実証運行によって設定した快速便の効果についても報告されました。快速便は、厚狭、美祢、於福、長門湯本温泉、長門市のみに停車する便で、美祢線各駅に立ち寄る通常便より16分程度早く運行できます。
総所要時間は列車と3分程度しか変わりません。そのため、快速便の設定により、鉄道に近い速達性を実現できるとしました。

「必要性について慎重に検討」
こうしたことから、検討では、速達性・定時性の向上策として、快速便の設定やPTPSの設置が効果的という結論を示しました。
いっぽう、専用道については、費用対効果が低いとし、「必要性について慎重に検討」すべきという結論となりました。
また、運行本数については、快速便の設定を前提に、JR美祢線の1.5倍程度とすることで地域住民のニーズに対応できるとしています。
当たり前の結果
美祢線で示された検討結果を有り体にいえば、「ローカル線の代替バスに専用道は無駄」ということです。
ローカル線が走るエリアでは、一般道でも信号が少なく、安定した速度で走行でき、深刻な道路渋滞も頻発しません。一方、細い単線を専用道にしても高い速度は出せませんし、一般道との出入口や交差部では信号待ちもあります。
こうした理由で、専用道を整備しても、速達性や定時性で大きな違いは生じません。深く検討するまでもなく、当たり前のことです。
並行する道路がない区間では整備する価値があるものの、そうした区間でも、迂回できる一般道ルートがあれば、それを使うのが合理的ということです。
ローカル線には意味がない
さらにいえば、一般道を経由すれば、柔軟なルート設定が可能で、集落の中心部に停留所を配置できます。したがって、線路跡を利用する専用道よりも、利便性は高くなるでしょう。
BRT専用道や専用レーンは、渋滞が頻発する都市部で整備するならば、定時性や速達性の確保において意味があるでしょう。しかし、地方部を走るローカル線の代替区間では意味がないということです。
たんなる「バス転換」に
結局のところ、美祢線BRTは、一般道を走行する形で、鉄道よりもやや長い所要時間で運行することになりそうです。となると、バス高速輸送を意味する「BRT」への転換というよりも、たんなる「バス転換」と表現したほうが適切かもしれません。
ただ、優先信号やバスロケーションシステムなど、先進的な仕組みは取り入れられるでしょう。シンボリックな専用車体で運行し、鉄道時刻表にも掲載され、JR線と運賃通算もできるのであれば、一般路線バスに比べれば別格の扱いとなります。JRにおける「BRT」とは、こうした別格性を示す用語となりそうです。
「専用道なきBRT転換」の先進例となることを期待したいところです。(鎌倉淳)























