常磐線泉駅と小名浜駅を結ぶ貨物鉄道である福島臨海鉄道が、旅客化に向け動き出します。いわき市の有識者会議で取り上げられ、同社関係者が検討を明らかにしました。小名浜港に計画中のサッカー新スタジアムの輸送手段として、実現する可能性がありそうです。
1972年に旅客廃止
福島臨海鉄道は、福島県いわき市の常磐線泉駅と小名浜駅結ぶ、4.8kmの貨物鉄道です。1907年に小名浜馬車軌道として開業し、1941年に常磐線と直通できる1067ミリ軌間の路線となりました。1972年に旅客輸送を廃止し、貨物専業となっています。
ただ、近年では、1997年、2004年、2005年などのイベント時に、臨時列車による旅客運行をした実績があります。

新スタジアムを整備
福島臨海鉄道の終点付近の小名浜港では、近年、再開発が進められていて、サッカーチームいわきFCの新スタジアムの整備も予定されています。
小名浜港周辺では、休日に周辺の施設利用者が集中するため、スタジアムを建設した場合、深刻な交通渋滞が懸念されています。また、駐車場の用地も十分ではありません。
そのため、いわき市では、福島臨海鉄道の旅客化を検討してきました。

試合開催日の運行を想定
2025年11月10日に開かれた「小名浜港周辺エリアにおける防災・交通対策協議会」の第2回会合では、福島臨海鉄道の取締役総務部長が出席。会議終了後、報道陣の取材に応じ、旅客輸送の再開について「前向きに考えていかなければならない」と述べました。
福島民友2025年11月11日付によりますと、「駐車場不足が見込まれる試合開催日の運行を想定」しているものの、「試合開催日以外の運行も選択肢の一つとして検討している」とのことです。
市議会でも議論に
福島臨海鉄道の旅客化については、いわき市の市議会でも取り上げられています。
2025年6月9日の市議会では、内田広之市長が「福島臨海鉄道や関係機関とも意見交換などをしっかりおこないながら、多角的な視点を持って地域の実態に即した移動手段のあり方について検討を重ねていきたい」と述べ、前向きな姿勢を示しました。
ただ、市長は「旅客化へ向けた施設の改修や新たな保安装置の設置、旅客車両の導入など、大規模な整備と多額の費用を伴う」としたうえで、「投資の是非や採算性の確保」を課題として挙げました。
つまり、国からの補助を得るための費用便益比や採算性の試算などは、これからの作業ということです。
貨物輸送が減少し
6月市議会の佐藤和良議員の質問によれば、福島臨海鉄道では、2025年3月15日に東邦亜鉛の輸送が終了しており、直近では貨物コンテナが午後に1往復する程度の運行状況となっているそうです。
それだけ輸送量が少ないのであれば、福島臨海鉄道としても、旅客化は新たな収益源を求める理由になるでしょう。
新スタジアム計画が順調に進展し、現実に駐車場問題が解決しないのであれば、鉄道輸送は有力な選択肢となります。となると、旅客化構想には現実感があり、実現する可能性はありそうです。(鎌倉淳)























