JR北海道が2014年9月中間期の連結決算を発表しました。それによると、経常利益は6%増の147億円、純利益は27%増の134億円となりました。ともに連結決算の公表を始めた2000年以降で過去最高になりました。同社は2015年3月業績予想を上方修正、連結売上高を1765億円としました。純利益は65億円とし、従来予想を30億円引き上げています。
JR北海道といえば、脱線やエンジン発煙など事故が相次ぎ、旅客離れが深刻なはずなのに、なぜ最高益なのでしょうか。みなさんご想像の通り、民営化時に国から与えられた経営安定基金の運用益が利益を押し上げたそうです。円安・株高の進行を受け、株式や外債を積極的に売却した結果です。
本業は売上減で赤字拡大
本業の鉄道運輸収入は2.8%減の331億円。エンジン出火発煙事故による特急の運休などが響き、売上高は2.9%減の857億円となりました。さらに快速エアポートに使用する733系の車両更新や、不祥事を受けての修繕費などにともなう費用もかさんでいます。そのため、営業損益は前年から26億円悪化して、99億円の赤字となりました。
本業の数字が悪くとも、運用が好調なら黒字になる、ということで、JR三島会社の体質を表す決算となりました。運用益で黒字化するというのは民営化時のグランドデザイン通りなので、それが悪いとはいえません。しかし、不祥事連発で営業赤字なのに過去最高益を記録する、というシステムは不健全な気もします。
とはいえ、安定基金をなくしたら経営は成り立ちませんし、何とも考えさせられる決算です。
札沼線末端区間の輸送密度は87人
ところで、この決算では、上半期の輸送密度も発表されています。利用が少ない区間は、札沼線北海道医療大学~新十津川で1日あたり87人キロ、次いで石勝線新夕張~夕張120人キロ、留萌線深川~増毛144人キロ、日高線苫小牧~様似304人キロ、根室線滝川~新得319人キロ、宗谷線名寄~稚内392人キロ、根室線釧路~根室429人キロと続きます。
石勝線夕張支線のみは前年比増となっていますが、それ以外は前年より落ち込んでいます。宗谷線の落ち込みはとくに著しく、前年比90%となっています。宗谷線に関しては、特急の一部運休の影響が大きいとみられますが、いずれにしても輸送密度が500人キロ以下は鉄道経営が成り立つ数字とはいえません。JR北海道が経営再建を進める中で、これらの区間の存廃はいずれ問題にならざるをえないでしょう。
全路線の72%が廃止基準?
上記の地図で、オレンジ、赤、赤破線の部分は、輸送密度が4000人キロ未満の区間です。4000人キロとは、国鉄時代の特定地方交通線の廃止基準ですが、現在のJR北海道では多くの区間が該当することがわかります。函館本線の函館~長万部すら廃止対象に該当します。
特定地方交通線基準にあてはめると、現在のJR北海道で存続できるのは、旭川・帯広以西、小樽・長万部以東と札幌近郊、青函区間のみです。営業キロ割合で28%にすぎません。それ以外の72%が輸送密度4000人キロ未満で、国鉄時代なら廃止基準にあてはまります。JR北海道の経営条件がいかに厳しいかが見て取れます。
ちなみに、5月12日に廃止された江差線木古内~江差は、1日あたり618人キロ、前年比389%の大幅増で営業を終了しました。