東急田園都市線は、なぜ3時間半も停まったか。10月20日停電の一部始終

バッテリーが上がってしまい

東急田園都市線が2022年10月20日に停電し、3時間半近くにわたり運休しました。原因は変電所の設備故障ですが、なぜ運転再開まで時間がかかったのでしょうか。

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変電所のブレーカー故障

東急田園都市線と大井町線が停電により突然運行を停止したのは、2022年10月20日17時56分頃。直通運転先の東京メトロ半蔵門線とあわせ、全線で運転見合わせとなりました。

メトロ半蔵門線は約30分後の18時29分に運行を再開したものの、東急線の運転見合わせは続き、運転再開をしたのは大井町線が20時15分、田園都市線が21時20分でした。田園都市線は、平日夜のラッシュ時に3時間24分にわたり運休したわけです。両線あわせて計210本が運休し、約14万1600人に影響しました。

停電の原因は、三軒茶屋変電所内の電気設備の故障です。変電所内のブレーカーの内部部品が故障したことで、送電が不能になりました。詳しい故障原因は調査中とのことです。

田園都市線停電
画像:東急電鉄
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駅間に停車して

東急の発表によりますと、当日の経過は以下の通りです。

まず、17時56分に停電が発生すると、田園都市線、大井町線全線で運転見合わせとなりました。

停電発生時、運転士はブレーキをかけ、列車は安全に停車しました。その際、駅間に停車し動けなくなった列車が2編成ありました。上り用賀~二子玉川間の各駅停車押上行き(乗客約100名)と、下り高津~溝の口間の各駅停車中央林間行き(乗客約600名)です。

この時点で、復旧までにかかる時間が予測できなかったため、東急では、これらの列車から乗客を降ろすことにしました。線路内の安全を確保した上で、係員の誘導のもと、乗客を降車させ、線路内を歩いて避難させたのです。上り列車の避難誘導が終わったのが19時10分。下り列車が19時39分です。

東急渋谷駅

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バッテリーが上がり

列車からの避難が完了する前の18時20分には、大井町線大井町駅~二子玉川駅間で折り返し運転を始めていました。18時25分には、田園都市線鷺沼駅~中央林間駅間でも折り返し運転を開始しています。

下り列車の避難誘導が終わる直前の19時38分には、隣接変電所からの切換により、田園都市線全線で送電が再開されました。20時15分には、大井町線が全線で運転を再開しています。

しかし、田園都市線の渋谷~鷺沼間の運転再開は遅れました。駅間停車した下り列車(中央林間行き)のバッテリーが上がり、パンタグラフを上げられなくなって、列車の稼動が一時的に不能になってしまったためです。車両技術員が緊急車両を使用して当該列車に向かい、自力走行不能になった列車のバッテリーの処置をしました。

バッテリー措置により、当該列車が再稼働したのが21時05分。その後、21時20分に、田園都市線全線が運転を再開しました。

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再発防止策を

電車のバッテリーは、通常、パンタグラフ上昇や主電源起動といった、列車の稼動のために使用されます。ただし、今回のように停電で電車内の設備に送電できない場合にも、バッテリーを使用して無線通信設備を稼働させ、運輸司令所と連絡をとります。また、車内の照明、案内放送設備の稼働にもバッテリーを使用します。

しかし、夕方ラッシュ時で下り列車の乗客が多く、避難誘導が長時間に及んだため、バッテリーが上がってしまいました。停電復旧後も、降ろしたパンタグラフを架線に自力でつけられず、動けなくなってしまった、ということです。

田園都市線は、2017年に渋谷~二子玉川間の地下トンネルで停電トラブルが相次ぎ、その反省から総点検をおこない再発防止策を講じてきました。今回の送電再開までの時間は約1時間程度でしたが、乗客避難に時間がかかり、車両のバッテリーが上がるという事態に陥りました。新たな再発防止策が求められそうです。(鎌倉淳)

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