京王電鉄とJR東日本が、新宿駅西南口エリアの再開発計画を発表しました。京王新宿駅の大改造を含む内容です。詳しく見てみましょう。
新宿駅西南地区
新宿駅周辺では、東京都と新宿区が「新宿グランドターミナル」として一体で整備する計画を進めていて、国家戦略特区にも指定されています。このうち、京王新宿駅を中心としたエリアが「都市再生特別地区(新宿駅西南地区)」です。
新宿駅西南地区は、京王新宿駅のある北街区と、甲州街道を挟んだ南街区に分かれます。京王電鉄とJR東日本が協力し、それぞれに新たな複合ビルを建設します。
両社が共同発表した『「都市再生特別地区(新宿駅西南地区)」都市計画の概要(素案)』から、京王新宿駅大改造と再開発の概要を読み解いていきましょう。
北街区
まずは北街区です。現在の京王百貨店とルミネ新宿ルミネ1は解体し、跡地に地上19階、地下3階の商業ビルを建設します。敷地面積は約1万平方メートル、延床面積は約14万1500平方メートルです。商業施設とホテルが入居する予定で、2040年代の完成予定です。
南街区
南街区では、サザンテラスに西側にあるいくつかのビルを解体し、跡地に地上37階、地下6階の高層ビルを建設します。敷地面積は約6300平方メートル、延床面積は約15万平方メートルです。商業施設とホテル、オフィスが入居する予定で、2028年度に開業します。
甲州街道をまたぐデッキ
手順としては、まずはサザンテラス付近に高層ビルを建設し、次に京王百貨店・ルミネ1跡地に新たな商業ビルを建てる形です。
二つのビルは、甲州街道をまたぐ「国道デッキ」でつながります。国道デッキは、ミロードとサザンテラスをつなぐ「ミロードデッキ」に並行する西側につくられます。デッキ開通は両ビルの完成後ですので、2040年代以降となります。
西南口地下駅広場
現ルミネ1付近の甲州街道地下では、「西南口地下駅広場」を整備します。約450平方メートルの広さで、周囲とあわせて約900平方メートルの地下駅広場とします。
都営新宿線・京王新線に新たな改札口を設けるほか、京王線のルミネ口も拡張し、新たな改札を設けます。
西南口地下駅広場の完成は2028年度です。ただし、京王線ルミネ口拡張は、北街区の再開発と一体になるとみられ、その場合、2040年代の完成になりそうです。
京王線西口新改札口
京王線新宿駅では、京王線ホームを北側に延伸し、先端部に新たな改札口を設けます。
現在は、出場専用の広場口がありますが、これを大きく発展させて西口駅前広場に直結する新改札口ができることになります。丸ノ内線、大江戸線新宿西口駅方面への乗り換えが便利になるでしょう。
こちらも完成は2040年代になりそうです。
都道をまたぐ歩行者デッキ
北街区の新ビル2階からは、西側への歩行者デッキを2つ設けます。いずれも都道414号線(京王百貨店西側の南北に延びる通り)をまたぎます。
このうち北側のデッキでは、小田急線に新設される同じ高さの改札口から、プラザ通り方面へ向かうことができるようになります。
もう一つの歩行者デッキは現在のルミネ口の2階レベルから、中央通り(ヨドバシの南側東西に延びる通り)へ連絡します。
これらのデッキは、南街区とつながる国道デッキにも接続しています。国道デッキから南街区新ビルを抜けてサザンテラスに出ることもできます。つまり、2階レベルで東西南北の移動範囲が大きく広がります。
南街区の新ビルは、西新宿1丁目交差点角に広場空間を設け、エスカレーターで2階レベルへ上がることができます。交差点からバスタ方面に向かう際にも、坂道を上がらずにエスカレーターを使うことができるようになるわけです。
なお、図で何度も出てくる「ターミナルシャフト」とは、エレベーターなどで縦移動ができる区域を意味します。
スカイコリドー
北街区では最上階レベルに「スカイコリドー」を設けます。これは、隣接する新宿西口地区(小田急、東京メトロが再開発)と連携し、眺望のよい広場空間を屋内・屋外で一体的に整備するものです。
観光案内や観光体験施設、にぎわい施設などを設けます。
2つのホテル
スカイコリドーに隣接して、広さ約8,300平方メートルのホテルも配置します。
このホテルは「ライフスタイルホテル」とされ、「宿泊機能に加え、新たな体験価値を求めるニーズに対応したサービスや空間」を提供します。さまざまな観光体験ができるホテルになるようです。これも開業は2040年代です。
ホテルは、南街区の高層ビルの上層階にも設けます。こちらは「国際水準のラグジュアリーホテル」で、面積は約15,000平方メートル。7フロア程度のようです。
レストランやバー、フィットネスなども併設するそうで、国際ブランドの超高級ホテルの入居が見込まれます。
ビルと同時にオープンするならば、ラグジュアリーホテルは2028年度に開業しそうです。
新宿テラス
北街区、南街区とも、広々とした眺望区間としてテラス(新宿テラス)を設けます。北街区では、2階、5階、9階です。いずれも大規模な吹き抜け空間となります。
南街区では、中層と高層(34階)にテラスを設けます。高層のテラスでは、四方を見渡せる開放的な広場を配置します。中層のテラス(9、10階)では、隣接して観光コンテンツ創出施設を整備します。
地下駐車場統合
地下駐車場も改造します。新宿駅西口駐車場と、新宿駅南口駐車場を接続し、統合します。新宿駅南口駐車場では、車両通路の高さを改修し、受け入れ車種を拡大します。南口駐車場内に荷さばき場を新設します。
西口駐車場の改修は、京王線ホーム延伸・西口広場改札口新設と一体的に行われるようです。そのため、こちらの完成も2040年代です。
全面開業は24年後
以上が、京王電鉄とJR東日本が発表した「都市再生特別地区(新宿駅西南地区)」都市計画素案の概要です。新たなビルに入居するテナントや、京王百貨店がどうなるのかなども気になりますが、いまのところ発表はありません。
南街区は6年後の開業なので現実感がありますが、北街区となると2040年代の完成となっていて、遠い未来という感想になってしまう方もいるでしょう。工期は2046年度までとされており、目一杯と考えれば全面開業は24年後。筆者を含め、この目で見られる自信が無い方も多いでしょう。
いずれにせよ、開業まで四半世紀もかかる壮大な事業です。京王新宿駅は、これから長い長い工事の季節に入ります。(鎌倉淳)