神戸市が、山陽新幹線・新神戸駅前広場の再整備計画をまとめました。神戸の玄関口はどう変わるのか。詳しくみてみましょう。
新神戸駅前広場再整備
JR 新神戸駅の開業は1972年。山陽新幹線・新大阪~岡山間の開通と同時に設置されました。当初は「ひかり」が毎時2本停車するだけでしたが、現在は山陽新幹線の全列車が停車。1985年には地下鉄も開通し、神戸の玄関口としての役割を担っています。
ただ、布引の山裾、生田川上に駅が設けられたこともあり、駅前が賑わっているとはいえません。駅前広場は殺風景なうえ、徒歩でのアクセスがわかりにくく、バス乗り場が点在するなど機能的でない構造になっています。
そこで、神戸市では新神戸駅の駅前広場を再整備し、人と公共交通優先の空間に改造することを決定。2021年9月に「新神戸駅前広場再整備の進め方」をとりまとめました。
それを基にデザインコンセプトや再整備のイメージなど作成し、2022年1月28日に公表しました。
公共交通を2階に集約
公表された案によると、再整備により、現在は1、2階に点在しているバス乗り場を、改札口のある2階に移設して集約します。タクシー乗り場とあわせて2階を公共交通機関の乗降場所と定め、待合環境も向上させます。
シティーループ、高速バスも2階のバス乗り場に発着します。将来的な神戸空港方面へのBRT構想も想定して、路線バスの停留所は連節バスに対応する長さとします。ただ、現時点で連節バスの運行計画は具体化していません。
一般車の乗降場所は現在2階にありますが、1階に移設します。2階の駐車場も廃止し、1階のタクシープールの跡地に広い駐車場を設置します。
簡単にまとめると、1階を一般車、2階を公共交通として分離したうえで、タクシープールは縮小してバス乗り場を充実させるわけです。
2階には新幹線改札口から駅前広場南側の生田川公園にかけて、駅前広場を横断する形で歩行者デッキを設け、「シンボル空間」とします。歩行者デッキは野崎通をまたぐ位置まで作られ、各方面へ歩きやすくなります。
登山の準備スペースなどの周辺エリアへの起点となる空間も整備します。
新神戸ハーブガーデン
再整備のデザインコンセプトは「山と街をつなぐ新神戸ハーブガーデン」です。新神戸駅は布引ハーブ園と近接していることもあり、山と街をつなぐ駅前広場の象徴として、ハーブをコンセプトに用います。
改札口南側の「シンボル空間①」では、ハーブの花々が鏡面の屋根、壁に映り込む花のゲートを設置します。
利用者が、このゲートを起点として周辺の目的地にスムーズに移動できるよう案内機能を充実させます。
新設する歩行者デッキ上にある「シンボル空間②」は、休憩や散策をしやすい場所にします。ハーブをはじめさまざまな花や緑を植栽し、記念撮影のスポットとして「BE KOBE」モニュメントなどを設置します。
生田川公園も再整備
デッキを南に下ると、生田川公園につながります。この公園も、フラワーロードの起終点として、また、サクラの名所として魅力ある空間へ再整備します。
湧水を活用した親水広場をリニューアルし、連翼亭など今ある資源を活かした親水空間とします。イベント開催やキッチンカー設置が可能な広場も設けて、駅前広場の一角として活用します。
大阪万博までに
再整備は2022年度に設計をおこない、2023年度に工事着手、2024年度に供用開始予定です。2025年4月に開幕する大阪万博に間に合うタイミングでの供用開始を目指すわけです。
現状の新神戸駅はたしかに殺風景で、旅行者にとっては通過する場所にすぎません。駅は神戸を見下ろす位置にあるので、「景色がいいのにもったいないな」と思ったことのある方は多いのではないでしょうか。
その点で、駅前を再整備して歩行しやすい空間にするというアイデアには納得させられます。布引バス停からの歩行者動線も改善し、摩耶や六甲方面から新幹線にアクセスしやすくなるでしょう。
現時点では、新神戸駅舎の改修は含まれていませんが、駅前広場の再整備は、将来的な駅舎改修を見据えて設計されるそうです。いずれは、駅構内も含めた「新・新神戸駅」に生まれ変わることを期待したいところです。(鎌倉淳)