山形新幹線の「庄内延伸」は実現するか? 酒田市は熱心に旗を振るも、羽越本線高速化の結論は揺るがず。

山形県酒田市は、JR山形新幹線の庄内延伸について理解を深める「鉄道高速化講演会」を2014年1月17日に同市で開催しました。これは、山形新幹線延伸を公約に掲げる本間正巳酒田市長が2012年10月に当選したのを受けて実施されるものです。市民らの「勉強会」との位置付けで、地元の機運を醸成するのが狙いだそうです。

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ふたつの鉄道高速化構想

山形県の庄内地方には、ふたつの鉄道高速化構想があります。「陸羽西線のミニ新幹線化」と「羽越本線の高速化」です。前者が山形新幹線の延伸で、現在新庄までの同新幹線を陸羽西線を経て庄内地方の中核都市・酒田まで延伸する構想です。しかし、この場合、庄内地方のもう一つの中核都市である鶴岡市を通りません。

もう一方の羽越本線の高速化は、羽越本線の線路改良をして高速化し、新潟駅ホームで上越新幹線と対面接続させる構想です。当初はミニ新幹線化やフリーゲージトレイン導入も検討されましたが、羽越本線のミニ新幹線化は障害が多く、フリーゲージトレインの技術確立の先行きも見通せないことなどから、在来線の線路改良などの方針に落ち着いた経緯があります。新潟駅ホームでの対面接続化は2018年にも実現する見通しです。

山形新幹線

羽越本線高速化がメリット大

羽越本線高速化ならば、鶴岡・酒田両市をカバーしますし、それ以外の日本海沿岸の都市にもメリットがあります。山形県は2006年に、「費用対効果で、山形新幹線庄内延伸より羽越本線高速化が優位」などとする検討結果も発表しています。そのため、この問題はすでに結論がでているわけですが、酒田市はそれでも「山形新幹線延伸」への想いを捨てきれないようです。

山形新幹線を酒田まで延伸したところで、福島~酒田間は延々と在来線を走るわけですから、それほど大きな時間短縮は望めません。対東京という点では羽越本線高速化のほうが合理的なのは事実でしょう。

「新幹線が存在すること」の大きさ

ただ、地方において、「新幹線」が存在することの意味が大きいのもまた事実です。たとえミニ新幹線であっても、「新幹線で東京直結」にはそれなりの価値があります。本間市長は1月7日の記者会見で、県内13市のうち、新幹線が通る8市と通らない5市の人口推移の比較を紹介しています。それによると、1990年から2010年までの20年間で、新幹線8市の平均は1.5%減にとどまりましたが、通らない5市の平均は9.3%と大幅に減少したそうです。本間市長は「地方に新幹線を整備することが重要。ミニ新幹線とまちづくりをセットで考えたい」「県やJRの意向に対応しなければならないが、さらに延伸を推進したい」とあらためて実現に意欲を示しました。

フリーゲージトレインが本当に実用化されれば、羽越本線高速化で東京直結が実現でき、話はそれで終わります。しかし、肝心の技術開発がなかなか進みません。地方におけるこうした議論やムダな投資を終わらせるためにも、フリーゲージトレインの技術確立にこそ予算と人員を割いて欲しいものです。

ということで、タイトルに「山形新幹線の『庄内延伸』は実現するか?」と書きましたが、現時点での実現可能性は相当低いと言わざるをえません。

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