JR西日本が2020年度の輸送密度を公表し、一部線区で公表区間を分割または変更しました。これにより、木次線の出雲横田~備後落合の輸送密度が「18」にとどまることが明らかになりました。
北陸線などで区間変更
JR西日本はこのほど、2020年度の線区別輸送密度(平均通過人員)を発表しました。そのなかで、一部線区で公表区間を分割または変更しています。
区間分割されたのは北陸線、関西線、阪和線、山陽線、加古川線、芸備線、木次線の各線。区間変更されたのは芸備線です。変更箇所は下表の通りです。
路線名 | 2019年度 | 2020年度 | ||
---|---|---|---|---|
区間 | 輸送密度 | 区間 | 輸送密度 | |
北陸線 | 米原~敦賀 | 17,135 | 米原~近江塩津 | 6,168 |
近江塩津~敦賀 | 9,255 | |||
関西線 | 加茂~JR難波 | 68,043 | 加茂~王寺 | 20,776 |
王寺~JR難波 | 86,298 | |||
阪和線 | 天王寺~日根野 鳳~東羽衣 |
158,639 | 天王寺~日根野 | 111,586 |
鳳~東羽衣 | 8,883 | |||
山陽線 | 神戸~姫路 兵庫~和田岬 |
200,095 | 神戸~姫路 | 158,383 |
兵庫~和田岬 | 8,749 | |||
山陽線 | 上郡~岡山 | 15,844 | 上郡~瀬戸 | 5,602 |
瀬戸~岡山 | 24,636 | |||
加古川線 | 厄神~谷川 | 1,938 | 厄神~西脇市 | 2,435 |
西脇市~谷川 | 215 | |||
芸備線 | 備後落合~三次 | 215 | 備後落合~備後庄原 | 63 |
備後庄原~三次 | 348 | |||
芸備線 | 三次~狩留家 | 713 | 三次~下深川 | 929 |
狩留家~広島 | 7,987 | 下深川~広島 | 8,444 | |
木次線 | 宍道~備後落合 | 190 | 宍道~出雲横田 | 198 |
出雲横田~備後落合 | 18 |
※「データで見るJR西日本2020、2021」より
近江塩津、王寺で分割
北陸線は米原~敦賀について近江塩津を境に分割。関西線は加茂~JR難波について王寺を境に分割しました。
阪和線は天王寺~日根野、鳳~東羽衣を一括して公表していましたが分割しました。山陽線も神戸~姫路、兵庫~和田岬を一括して公表していましたが分割しました。山陽線では、上郡~岡山を瀬戸で分割しています。
西脇市~谷川は「215」
加古川線は、厄神~谷川について西脇市を境に分割。西脇市~谷川が「215」で、厄神~西脇市「2,435」の10分の1以下であることが明らかになりました。
芸備線は、備後落合~三次について備後庄原を境に分割。備後落合~備後庄原が「63」ときわめて低い数字で、備後庄原~三次の「348」とはだいぶ開きがあることがわかりました。また、三次~狩留家、狩留家~広島という区分が、三次~下深川、下深川~広島に変更されました。
木次線は宍道~備後落合について出雲横田を境に分割。出雲横田~備後落合は「18」にとどまり、JR西日本の輸送密度としては、芸備線東城~備後落合に次ぐワースト2であることがわかりました。
輸送密度の低い区間
こうした「線区分割」の結果、輸送量の低い区間がより浮き彫りになりました。2020年度のJR西日本で輸送密度が500を下回る線区は19区間に及んでいます。2019年度と2020年度の数字を並べて、当該区間を見てみましょう。
路線名 | 区間 | 輸送密度 (2019年度) |
輸送密度 (2020年度) |
---|---|---|---|
芸備線 | 東城~備後落合 | 11 | 9 |
木次線 | 出雲横田~備後落合 | 190 (備後落合~宍道) |
18 |
大糸線 | 南小谷~糸魚川 | 102 | 50 |
芸備線 | 備後落合~備後庄原 | 215 (備後落合~三次) |
63 |
芸備線 | 備中神代~東城 | 81 | 80 |
姫新線 | 中国勝山~新見 | 306 | 132 |
因美線 | 東津山~智頭 | 179 | 132 |
福塩線 | 府中~塩町 | 162 | 150 |
木次線 | 宍道~出雲横田 | 190 (備後落合~宍道) |
198 |
加古川線 | 西脇市~谷川 | 1,938 (厄神~谷川) |
215 |
山陰線 | 益田~長門市 | 271 | 238 |
越美北線 | 越前花堂~九頭竜湖 | 399 | 260 |
山陰線 | 長門市~小串・仙崎 | 351 | 290 |
美祢線 | 津和野~益田 | 585 | 310 |
小野田線 | 小野田~居能など | 444 | 344 |
姫新線 | 上月~津山 | 413 | 346 |
芸備線 | 備後庄原~三次 | 215 | 348 |
山口線 | 宮野~津和野 | 716 | 353 |
美祢線 | 厚狭~長門市 | 478 | 366 |
※「データで見るJR西日本2020、2021」より
廃止瀬戸際の水準
JR西日本は新型コロナ感染症による経営難に直面しており、利用者が少ないローカル線について、「あり方の見直し」を進めていく方向性を明確にしています。
そのなかで、廃止の瀬戸際にあるのは、輸送密度100を割っている区間でしょう。芸備線備中神代~東城~備後落合~備後庄原、木次線出雲横田~備後落合、大糸線南小谷~糸魚川です。これら3路線は、鉄道として残す意味が問われる水準の利用者数というほかなく、今後、利用促進策が実らなければ、廃止を含めた議論から逃れられないでしょう。
また、輸送密度200以下の線区としては、姫新線中国勝山~新見、因美線東津山~智頭、福塩線府中~塩町、木次線宍道~出雲横田が挙げられます。これらの路線も厳しい状況です。また、今回の統計から抽出された加古川線西脇市~谷川も「215」と楽観できない数字になっています。
輸送量の明確化
幹線で区間分割された区間は、列車本数の適正化を検討している区間の可能性があります。阪和線と山陽線の枝線区間は、線区の輸送量の明確化の意味もありそうです。
いずれにせよ、区間ごとの輸送量をより細かく公表にすることで、減便を実施する際に、地元自治体の理解を得やすいようにしているのかもしれません。
そうした見方では、関西線の分割地点が奈良ではなく王寺であることや、北陸線が長浜でなく近江塩津であることは、興味深いです。(鎌倉淳)