中国山地のローカル線は生き残れるか。芸備線のあり方、地元と協議へ

備中神代~備後庄原間

JR西日本が芸備線の沿線自治体に対し、今後のあり方などについての協議を求めました。備中神代~備後庄原間が対象になるとみられますが、中国地方のローカル線は輸送密度の低い区間が多く、廃止も視野に入れた議論が広がりそうです。

広告

備中神代~備後庄原間が対象

芸備線は、備中神代~広島間を結ぶ159.1kmの路線です。JR西日本は、沿線の一部自治体に対し、今後のあり方についての協議を申し入れたと発表しました。協議の対象となるのは、庄原市と新見市を結ぶ区間です。両市域には備中神代~山ノ内間が含まれますが、実質的に備中神代~備後庄原間を対象にするとみられます。

この区間の輸送密度は、2019年度のデータで備中神代~東城間が81、東城~備後落合間が11、備後落合~備後庄原間が61と公表されました。つまり、芸備線のうち、輸送密度100以下の区間について、「あり方」の協議を申し入れたということです。

芸備線

「廃止ありき」ではない

協議内容は、運行のあり方や、住民ニーズの把握、利用促進策などで、鉄道以外の地域公共交通の状況などの整理もおこなうとのこと。JR西日本は、「廃止ありき」の議論ではないとしており、記者会見したJR西日本の蔵原潮広島支社長は、「(廃止について)現時点で決まったものはない」と答えています。

とはいえ、輸送密度の極端に低い区間の沿線に絞って協議を申し入れたことから、いずれバス転換などを含めた議論が視野に入ってくる可能性は高そうです。

広告

木次線も危うく

仮に、備中神代~備後庄原間が廃止されれば、途中の備後落合で接続する木次線の存続も危うくなるでしょう。木次線の2018年度の輸送密度は全体で200となっていますが、運行本数の少ない出雲横田以南に限れば、100前後になっているとみられます。

JR西日本は、木次線の観光列車「奥出雲おろち号」について、車両老朽化を理由に2023年度限りで廃止すると発表したばかりです。後継となる観光列車は未定で、沿線自治体は費用負担をした上で新たな観光列車の投入を求める姿勢ですが、JR西日本は、もっと幅広い「協議」を求める可能性もありそうです。

中国山地のローカル線では、福塩線の府中~塩町と、因美線の東津山~智頭間の2018年度の輸送密度も、それぞれ162と低い数字になっています。新型コロナウイルス感染症でJR西日本の経営状況は厳しくなっており、こうした路線が生き残れるのか、予断を許さなくなってきました。(鎌倉淳)

広告