JR主要3社の2020年度の利用状況が公表されました。新型コロナウイルス感染症の影響で、各社とも対前年度比で3~5割程度となっています。なかでも、定期外客が戻りません。
JR東日本
JR東日本の2020年度の利用状況は、対前年比で定期収入が73.1%、定期外収入が41.6%で、合計50.2%となりました。上半期が40.8%でしたが、下半期は61.7%で、春から夏の大不振を、秋から冬に多少取り返したことになります。
定期外収入のうち、近距離は59.4%で、中長距離(新幹線など)が29.8%です。中長距離は対前年度比3割という不振でした。
JR東海
JR東海の2020年度の利用状況は、東海道新幹線の東京口が対前年度比33%、大阪口が34%でした。内訳は「のぞみ」33%、「ひかり」28%、「こだま」36%です。
新型コロナ禍で、東海道新幹線は「ひかり」の利用状況がとくに悪かったことになります。その理由ははっきりしませんが、「ひかり」はジャパンレールパスが使えるので、インバウンド減の直撃を受けた可能性がありそうです。
JR東海の在来線特急は34%、名古屋近郊は65%です。JR東海は全体の利用状況の数字を出していませんが、東海道新幹線の収入の割合の高い会社なので、全体としても新幹線の数字をそのままみればよさそうです。すなわち、対前年比で3割程度の利用にとどまったとみられます。
東京口の新幹線の利用状況では、上半期が24%、下半期が43%となっています。下期が上期の倍近い数字になっていて、こちらも年度後半に取り返したことがわかります。
JR西日本
JR西日本の2020年度の運輸取扱収入は、対前年比で48.2%となりました。内訳は近距離57.6%、中長距離35.4%、定期が80.9%です。上期全体は38.7%、下期全体は59.6%ですので、おおざっぱに上期4割、下期6割です。
利用状況は、山陽新幹線が対前年比35%、北陸新幹線が36%、在来線特急が32%、近畿圏の在来線が62%です。おおざっぱに新幹線・特急が3割、近郊電車が6割です。
山陽新幹線の内訳は、「のぞみ・みずほ」35%、「ひかり・さくら」34%、「こだま」38%でした。「ひかり・さくら」の数字が「のぞみ」とほぼ同じなのが、東海道新幹線との相違点です。
まとめてみると
3社をまとめてみましょう。「収入」でデータを公表しているJR東日本とJR西日本を比べると、東が合計50.2%、西が合計48.2%で、いずれも前年度の約半分にとどまりました。JR東海は新幹線の数字をそのまま使うと、3割程度の収入とみられます。
主に新幹線を示す「中長距離」で比べると、東が29.8%(収入)、西が35.4%(収入)、東海が33%(利用状況)となり、こちらは各社とも3割程度です。
主に大都市近郊区間を示す「近距離」で比べると、東が定期73.1%、定期外59.4%(収入)、西が定期80.9%、定期外57.6%(収入)、東海が65%(利用状況)となっています。定期客が7~8割程度、定期外客が6割程度です。
全体でみると、近郊電車は6~7割程度の利用にとどまり、定期客よりも定期外客の戻りが鈍いことがわかります。日常的な「おでかけ」が減っているのでしょう。
上期と下期を比べると、東と西が上期4割、下期6割で、東海は上期2割、下期4割です。最初の緊急事態宣言で人の流動がほぼなくなった上期の激減を、下期に多少取り戻した形です。
JR東海の打撃が大きいが
新型コロナの影響は各社で差があるものの、対前年度比でみると、新幹線への依存が強いJR東海がより強く打撃を受けた格好です。ただ、東海道新幹線は原価率がきわめて低いので、対前年度比4割程度の利用があれば、JR東海は黒字化ができる様子。実際、45%の利用があった第3四半期は営業黒字になっています。
ちなみに、これまでに各社が示してき2020年度通期決算予想の営業赤字は、東が5350億、東海が2440億円、西が2900億円となっています。各社規模が違うので一概に比較できませんが、金額では、JR東海がもっとも小さいです。
2021年度はオリンピックも予定されていますし、新型コロナが収まれば、各社V字回復が可能でしょう。問題は、「収まれば」という前提条件が、かなり怪しい点ですが。(鎌倉淳)